第7話 好みの女性は

「お、あの髪の長い子綺麗で好みだな俺」

「あ、あっちの長身で大人っぽい女性もタイプだわ」

「うっわ! あの幼児体型の女の子たまんねぇな!」

「てめぇ雑食すぎるだろ⁉︎」


 俺の口調は思わず強めになってしまう。


 天川たちが集合場所に到着するまでの間、俺と亜蘭は自分たちの前を歩いていく女性の中で、自分の好みの女性がいたらその女性を言い合うというゲームを開始した。


 しかし、案の定好みの女性が見つかるのは亜蘭ばかり。


 亜蘭はストライクゾーンが広いので、よっぽど自分の好みから外れていない限りはどの女性にも魅力を感じてしまうようだ。


「雑食ってお前、俺だってさすがに好みはあるし苦手なタイプだっているよ」

「それにしては俺たちの前を通った女性のうち8割くらいの女性にはタイプって言ってたけど?」

「それはしょうがないだろ本当にタイプの女性が前を通っていくんだから(キリッ)」


 いやキリッじゃねぇよ。

 そう心の中で亜蘭にそうツッコミながらも、ツッコんだら負けな気がしてツッコむのはやめておいた。


 キリッて顔で言う内容じゃないだろそれ。

 俺以外の人間に同じ発言したら軽蔑されるだろうからやめてくれよ。


「本当いつか刺されるぞおまえ」

「そうならないように気をつけてるから大丈夫だ」

「どこをどう気を付けてるのか詳しく聞かせてもらおうか」

「それよりお前はどうなんだよ。全くタイプの女の子見つけねぇじゃねぇか」


 まだ開始して5分も経過していないので、亜蘭程ストライクゾーンが広くなければ、まだタイプの女性が見つかっていなくてもおかしくはないだろう。


 俺のタイプは奥ゆかしさがあって清楚で思いやりのある女性だ。

 タイプの女性をまだ亜蘭に言えていないのは、ゲームを開始してからそんな女の子が現れていないだけである。


「シンプルにタイプの女性がいないんだよ」

「こんだけいれば1人くらいタイプの女性いるだろ。ほら、映画館の中でもいいしさ。タイプの女性いねぇのか?」

「そこまでして見つけないといけないのかよ……」


 亜蘭にそう言われた俺は嫌々映画館の中を見渡す。


 昨日公開の映画があるため、かなり多くの人が映画館に足を運んでいる。


 そのせいで、映画館内にいる女性全てが見えているわけではないが……。


「うーんそうだな……。あの人とか」


 面倒くさくなってきた俺は映画館内にいる全ての女性を確認し終える前に、ある程度自分のタイプっぽい女性を指差した。


「あのなんかキョロキョロしてる人か? 後ろ向いててよくわかんねぇけど」

「そうそう。あの人」

「後ろ姿だけでタイプの女性って分かるなんてお前最強だなってかちょっと投げやりに選んでるだろ」

「雰囲気で選んだだけだよ。あれだけ清楚な服装で髪もサラッとした女の子なら俺のタイプに決まって--」


 亜蘭にそんな話を会話をしているうちに、その女性がコチラを振り向き、女性の顔を見た俺は目を見開き言葉を失った。


 俺がタイプだと言った女性は、今日一緒に映画を見に行く天川真白だったのだ。

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