第6話 好み言い合いゲーム

 今日は天川たちと映画を見に行く日。


 俺は集合時間の30分前に集合場所である映画館に到着するように、スマホをいじりながら歩いていた。


 ただでさえ女子と遊びに行ったことなんてないのに、学校1の美少女と名高い天川を含んだメンバーで映画を見に行くことになるとは思っていなかったな……。


 朝早く起きたので時間には余裕を持って歩くことができているが、着ていく服にはめちゃくちゃ悩んだ。


 普段から女子と遊んでいる亜蘭のような奴らなら、こんな時に服装に悩むことはないのだろう。

 しかし、俺のような服装を気にしたことがないド陰キャからしてみれば大問題なのである。


 1時間以上かけて着ていく服を決めてから、身だしなみを整えて家を出てきた俺はもうすでに疲労している。


 今日1日乗り切ることができるだろうか……。


 そんなことを考えながら歩き続けて集合場所に到着すると、映画館の入り口には見覚えのある人物が立っていた。

 まさかとは思ったが、あのイケメン長身鼻高イケメンは間違いなく亜蘭だ。イケメンを2回言ったのは間違いではない。


 30分前に到着した俺よりも早く集合場所にやってきているとは、さすが女子を落とすことに全力を尽くす亜蘭である。


「早すぎるだろおまえ」

「お、颯一か。颯一もかなり早いじゃねぇか」 

「まあせめて女子2人よりは早く来ないとと思ったからな。何分前からいるんだ?」

「30分前だけど」


 そうか、30分前か……。

 いや30分前⁉︎


 それが本当だとしたら……。


「30分前⁉︎ ってことは集合時間の1時間前に到着してるってことか⁉︎」

「そうだけど」

「『そうだけど』っておまえな……。普通じゃないだろそれ」

「ここにくるまでに何が起こるかわからないだろ? 急に大雨が降ってきて足止め喰らうかもしれないし」


 亜蘭にホストとかやらせたらすぐNo.1ホストとかに上り詰めそうだな。


 なんか名前もいい感じに源氏名っぽいし。

 年間1億円プレイヤーも夢ではないだろう。


「そこまでされて落ちない女子はいないだろうな」

「それがいるんだよなー。同じクラスの天川っていうやつが」


 大勢の女子を射止めてきた亜蘭に、なぜ天川がなびかないから分からない。


 しかし、亜蘭に一定数なびかない女子がいるのも事実。


 少し考えればわかる話だが、どれだけ亜蘭が女子に好かれようと努力をしたところで、女たらしの男に好感を持てない女子はそれなりにいる。


 天川もその女子の一部なのかもしれない。


「亜蘭ならそのうち落とせるだろ」

「そうだといいけどな。……なぁ、天川たち来るまで暇だしさ、今映画館にいる女の人の中でどの人が好みかお互い言い合うゲームでもしないか?」


 亜蘭は唐突に俺が絶対にやらないようなゲームをしようと提案してきた。


 俺と亜蘭が今ここでお互いの好みの女性を見つけて言い合うことになんの意味があるのだろうか。


 あまりにも生産性の無いゲームなので、俺じゃなくても断る人は多いだろう。


「なんだよそれ。亜蘭じゃあるまいし俺はやらねぇよ」

「どうせ暇なんだしやろうぜ? 減るもんじゃねぇしさ」

「減るもんじゃ無いからやるって理論だと大概のことやらないといけなくなるだろ」

「ええーなぁいいだろ? 人助けだと思ってさ」

「なんでこれが人助けになるんだよ……。まあそこまでいうならいいけどさ……」

「よしきたっ」


 亜蘭のゴリ押しにより、俺は亜蘭と好みの女性を言い合うゲームをプレイすることになった。

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