第4話 勇気を出して
「な、なんで私が窪田君に声かけないと行けないの⁉︎ 私が男友達少ないの知ってるよね⁉︎」
男友達の少ない私が窪田君に声をかけるにはかなり勇気が必要だ。
それに、私は自分の母親が男性関係にだらしないことを理由に、自ら積極的に男の子と関りを持ちたいとは思っていない。
咲良に指摘された通り窪田君のことを目で追ってしまってはいたけど、声をかけようだなんて一度も考えたことは無かった。
「何言ってるの。だからこそだよ」
「だからこそ……?」
「今までシロシロが特定の男の子に興味を持ったことなんて一度もなかったでしょ? そんなシロシロが初めて興味を持った男の子だよ? そんなの絶対仲良くなるべきだよ!」
咲良の言うことは理解できる。
これはもしかしたら私が男の子に対して持っている苦手意識を取り払えるチャンスかもしれないのだから。
「そう言われてみればそうだけど……」
「でしょ? 窪っちが将来シロシロの彼氏になるかもしれないんだしさ」
「か、彼氏!?」
私は思わず教室中に響き渡るほど大きな声を出してしまう。
「そっ。彼氏」
「彼氏だなんて話が飛躍しすぎだよ。まだ喋ったことも無いのに……」
「彼氏通り越して旦那さんかも?」
「旦那さん!? ってもういい加減にしてよ~」
咲良の言葉に私は再び大きな声を出してしまった。
咲良と一緒にいるのは楽しいけど、体力を消耗してしまうので私がよく居眠りをしてしまうのは咲良のせいでもある。
「ごめんごめん。とにかくまずは声かけてみよっ」
「そ、それは流石に……」
「ほら、こないだアーラン(亜蘭)に声かけられた時も全く興味ありませんみたいな反応してたでしょ?」
「あ、あれはそういうわけでは……。ちょっと寝ぼけてたのもあって天然感がマシマシにはなってたけど……」
「アーランって女たらしだけどイケメンで優しくてかなりモテるじゃん? そんなアーランに声かけられてもあんな反応するシロシロが無意識に視線を向けちゃう男の子だよ? そんなのもうツッチーくらい貴重な存在になるかもしれないし」
「ツッチー?」
「ツチノコ」
ついに架空の生物にまであだ名をつけ始める始末。
面白半分で私に窪田君へ声をかけるよう提案しているような気がしてならない。
「架空の生き物くらい正式名称で呼びなよ……」
「善処しますっ。とりあえず今日の放課後、『また明日』って声をかけること。わかった?」
「『わかった?』って言われてもそんな簡単に決め切れることじゃ--」
「それじゃ、自分の席もどるねー」
「えっ、咲良!?」
まだ窪田君に声をかけるかどうかを決め切れていないというのに、咲良は半ば強制といった感じで自分の席へと戻っていってしまった。
……うん。
きっと咲良は私のために窪田君に声をかけるように言ってきたんだよね。
私自身男の子に対して持っている苦手意識は改善しなければならないと考えていたし、思い切って放課後窪田君に声をかけてみよう。
そう決意して、私は飲み残していたコーヒー牛乳をグイッと一気に飲み干した。
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