1人目の仲間、それは…
あの王国を出てから数十分が経った。俺は森の中をふらふら歩いていた。
それにしても、この辺りはやけに動物がいない。この世界に来て一番最初にいた草原には、鶏や牛が普通にいた。森なんだから動物の一匹くらいいてもおかしくないはず。
ただ、さっきからぷよん、ぷよんとスライムのような音が聞こえるのだ。
なんだ…?
その時だった。
近くの草むらからにゅむっとスライムが出てきた。
「うわぁぁぁっ?!ス、ススッススススライム!」
水色で一つ目のスライムがうにょうにょペタペタ動いている。すると、鋭い目つきをして俺に襲いかかってきた。
マズイ!とりあえず逃げないと!
走って走って走る。
スライムも懲りないが、50m走6.4秒の俺に追いつけるわけない。一定の距離を保って鬼ごっこしている。
…そうだ!さっきもらった短剣で!
すぐさま短剣を取り出しその場に立ち止まる。
スライムが俺に近づいてきた瞬間、
「うおりゃっ!」
スライムを切りつけた。
ぷるんするん
スライムが二匹になった。
「この世界…物理があるッ…?!」
普通異世界ってスライムきったら10ダメージとか入って消えるんじゃないのか?!なんか無駄に現実味がある気がするんだが…
鏡はないが分かる。俺は今、今世紀最大の鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていることを。
ど…どうすればいいんだ…?
その途端、俺の頭に天啓があった。
そういえばスライムはホウ素ナトリウムでできてるから酸性の液体ぶっかければ溶けるのではないか?
「だれかぁぁぁ酸性の液体を分けてくれぇぇぇぇぇぇぇえ!」
俺は走りながら必死で叫ぶ。しかし、だれもいない。
「クッソ…酸性雨でも降れば…!」
流石に俺の体力も無くなってきた。スライムとの距離がだんだん近くなっていく。
ああ、もうダメか。高学歴の経験だけでは異世界ではどうにもできなかったのか。俺が死んだら、神を恨んでやる。
そう思って目を瞑って立ち止まった瞬間、後ろでスライムが溶けるような音がした。
「湯沢…炭酸水の存在、忘れちゃダメでしょ。」
聞き覚えのある声。後ろを振り向く。そこには、サイダーの入ったペットボトルを持った、見覚えのある人物が立っていた。
「久しぶり、湯沢!」
俺はびっくりして目を見開きながらも、彼の名前をつぶやく。
「東崎……!」
東崎陣。神がこの世界に送るはずだった、俺のいとこ。
「俺がこの世界に飛ばされるはずだったのに、湯沢が飛ばされるなんて…大学卒業間近だったでしょ?なんかごめん」
陣は木におっかかりさっきスライムにぶっかけたサイダーの残りを飲み言った。
「いや、いいんだ。助けてくれてありがとうな。」
RPGは出会いのゲームでもある。もしこの世界がRPGのような世界なのだとしたら、当然パーティーメンバーは増えていく。しかし、まさか1人目に出会う仲間が東崎だとは思ってなかった。
「神様が湯沢伊吹に申し訳ないことをしたから、お前もあの世界に行ってくれ、って頼まれたんだよね。間違えて異世界に送ってしまったのと、能力つけるの忘れてたからって。」
「は????????」
なんということだ。あのクソ神め…あんなの神でもなんでもねぇよ。
神が俺に能力を与えてくれなかったというのなら、俺が持っているのは知識とひらめきだけ。
「そういえば東崎、お前はなんか能力もらったん?」
すると陣はドヤ顔で言った。
「もちろん!ただ、今は使えないらしいんだよね。なんか“トツゴンビンコウ”っていう大きい技らしいんだけど。」
おそらく必殺技とかその辺りのやつなんだろう。
「んで神様が言ってたんだけど、転生者は転生者は一定時間が経たないとその世界に適する体にならないんだって。」
なるほど。それならさっきスライムを切った時に真っ二つになったのも納得がいく話だ。
「ところで湯沢は1人だけ?」
「転生してからそんな経ってないからな。これから仲間を探すところ。」
「もちろん俺を仲間に入れてくれるよね?」
なんかウザい。そういえばこいつは昔からよくボケたり笑いを取るのが得意だ。だから実況者になった時も、トークは人一倍のクオリティだったのだが、ゲームの実力は全国、世界に及ばなかったらしい。
でも、仲間はいてなんぼだ。俺は人並みのコミュ力はあるので知らない人と急に接することになっても問題はないのだが、知り合いどころかいとこが仲間にいるのはとても心強い。
「もちろん。ついてこいよ、東崎!」
そうして東崎との2人旅が始まった。
天才の俺がなんか異世界に飛ばされたから仲間と知識で攻略してやるよ 和 @nago_2992
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