第28話 下請けクエスト?2ー①【語り手:ガザニア】

 10月10日。PM14:00。


「はっ!」

 ロックゴーレムの右腕を切り飛ばす事に成功した。

 私の剣は確実に強くなっている。

「はっ!」

 今度は足を切り飛ばした。ロックゴーレムはこれで無力化したな。

「『上級:地属性魔法:ロックフォール』!」

 ガーベラが別のロックゴーレムに同じぐらい大きな岩をぶつける。

 そのロックゴーレムは上半身を無くして倒れ込んだ。


 その横でタッグを組んだサフランとパプリカが、ロックゴーレムを蹂躙している。


「ロックゴーレムはもう相手にならなくなってきたね。アイアンゴーレムいく?」

「そうだな、やってみようか………」

「OK。『上級:地属性魔法:クリエイトゴーレム(アイアン)』!」

 人間の3倍ほどの大きさのアイアンゴーレムが現れた。

「サフランとパプリカはサポートに専念!前衛で私が引き付けるから、メインはガーベラ、頼んだぞ!」

「頼まれました!」


 予想通り、アイアンゴーレムに刃は通らないので、受け流しに専念する。

 というか普通に拳を受けたら、剣が壊れそうなのでそれしか選択肢がない。

 私も魔法を唱えるか………

「『上級:水属性魔法:アシッドクラウド(酸の雲)』!」

 ガーベラの魔法が炸裂する。

 この魔法ではゴーレムの材料の鉄まで溶かしてしまうのだが………問題ない。

 ガーベラが大量の鉄を生み出す事の出来る魔法を習得しているからだ。

 と、いうわけで私も魔法を放つ。

「『上級:光属性魔法:ルーンスピア』!」

 見た目には効果がないが、少し動きが鈍くなった、効いている。

 そのまま、私とサフランとパプリカで押さえて、魔法で倒した。


「ふう、今日の訓練はちょっとハードだったな」

「ダンジョンで訓練してるときほどじゃないけどね」

「さすがに自宅の訓練でダンジョンレベルにはならないだろう」

「作れるのはゴーレムだけだしね。ガザニアちゃんにはイサナさんがいるじゃん」

「それじゃ、お前の訓練にならないだろう」

「あたしはオリーナさんの授業を受けるよ?」

「ゴーレム相手の訓練も有益だろう?あとダンジョンに入っての訓練も」

「もちろん!ガザニアちゃんと訓練するのは楽しいよ。ダンジョンもね」

「なら、いいんだが」

 と言いつつ、ガーベラの言う事にも一理ある。

 ゴーレムの訓練も継続しつつ、次はイサナさんに頼もうと思った。


 訓練を終えて、ガーベラは魔導書に向かう。

 こういうところは、真面目な妹なんだが。

 今日は私も回復魔法の本を取り上げて読むことにする。

 オリーナさんから、今日は簡単な料理だから手伝わなくていいと言われたからだ。

 たまには夕方、魔導書の読解をするのも悪くない。

 いつも夜やっている事だ。


 夕食―――ミルクシチュー―――をいただいて、また読書に戻る。

 たまに実践のために中庭に出たりもする。

 ガーベラは最上級魔法の実戦なので、失敗して爆発を起こしたりもしているが。

 いつもの事だ。そんな感じで、この日は終わった。


 10月11日。AM08:00。


「「おはよう」」

 今日は二人とも寝起きがいい、爽やかな朝の挨拶だ。

 天気は………書城グリモワールの中はいつも夜で曇りがちなのでわからないな。

 とりあえず2人で顔を洗いに行き、身繕いもすませる。

「今日はクエストを受けに、冒険者ギルドへ行く日だな」

「そうだねガザニアちゃん」

 私たちはサフランとパプリカを点検し、オリーナさんのオニギリを貰って書城グリモワールのゲートの外へ出た。

 サフランとパプリカを引き連れ、オニギリを食べながら移動する。

 住民はもう慣れた光景らしく、注目もしてこない。


 冒険者ギルドへ到着し、エトリーナさんが空いていたので挨拶をし、クエスト票を見に向かう。いつもの流れだ。

 ちょっとクエスト票を見ただけで、ガーベラが声をあげた

「ガザニアちゃん、これなら納品できると思う」

「何だ………?神秘の霊魂?」

「書城グリモワールの幽霊たちの落とす紫のかけらが集まったのがゴーストティアっていう小さな宝石。それがさらに集まったのが神秘の霊魂。紫のかけらはたくさん貯まってるから、もうちょっとで神秘の霊魂が作れるよ」

「作ろうと思って貯めてたのか?」

「一応ね。でも作った事のないものだから作りたかっただけだから、今回作ってからあげちゃっても何の問題もないよ」

「どんな役割のあるものなんだ」

「魔道具の電池の1種だね。他に効率のいい電池はいっぱいあるから、あたしは要らない。研究者なんかが使うんじゃないかな?」

「そうか………じゃあ、エトリーナさんの所に持って行こう」


「あなたたち、また下請け仕事を選んだの………」

「えっ、そうなの?」

「これはあなた達の先輩シルバーランクのバガルの出した依頼よ。前回と同じ」

「そうなんだ?あたしは気にしないけど、ガザニアちゃんは?」

「………依頼の終了時にそいつを呼んで欲しい。物申したいことがある」

「わかった。いつ依頼終了に来れるか分かる?」

「ガーベラ?」

「明日の夕方かな」

「そういうことです」

「分かったわ、呼んでおくから」

「お願いします」


 エトリーナさんの所を辞して帰宅中。

「ガザニアちゃんはバガルって人に会って何を話したいの?」

「何って………自分でやらずに下請けに回す理由を聞きたいだけだ。シルバーランクということは、実力に不足があるわけではあるまい」

「んー、あたしも興味はあるかな。ガザニアちゃんが気になるなら聞いてみようか」

「ああ、私は気になる」

「なら、帰ってから足りない紫のかけらを集めるの頑張らないとね」

「あう………どれぐらい足りない?」

「多分、あたしたちの魔力が尽きるまで戦わないといけないぐらい。休憩時間も入れて明日の夕方って言った」

「そ、そうか………頑張ろう」


 書城グリモワールに帰って、私たちは明け方までゴーストを狩る羽目になった。


 明け方、そのまま寝てしまいたいところだったが、魔道具を作るガーベラより先に寝る訳にはいかない。一緒に起きていよう。私は役には立たないが………

 2時間ほどかかる儀式で、神秘の霊魂は完成した。


 まずゴーストティアは深い紫色の美しい宝石だった。ラピスラズリのようだ。

 それを集めて作った神秘の霊魂も綺麗だった。

 半透明の紫の水晶で、外から中に紫がグラデーションしている。

 大きさは赤ん坊の頭ほどで冷気を発散している。

 ゴーストから集めた欠片でこんなものができるんだな………


「これ、電池しか使い道ないのか?」

「んーと、ゴーストを呼ぶとか、呪いをかける媒体にするとかいう使い方もあるよ」

「ろくでもないな………ギルドは用途の確認ぐらいしてるだろうが………」

「変な人には渡らないんじゃない?」

「そうだな。とりあえずガーベラ、昼過ぎまでは寝よう」

「さんせー」


 目覚まし時計をかけて、私たちはベッドに横になった。

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