第23話 げきやくあるふぁ【語り手:ガーベラ】

7月3日。PM15:00。



あたしは反省していた。滅多にない事なんだよ?

それは何となく分かるから何を反省したのか言えって?

この間の、ガザニアちゃんとイサナさんとの戦闘で何もできなかったことを、だよ。

魔力があれば行けたんだろうって?いやいや、それも怪しいね。

なにせ属性魔法では、霊体に効く魔法ってほどんどないからね。

それでどうしたのかって?

武器に魔力を纏いつかせて戦う「戦技アーツ」が本に出て来たんだよ。

それを習得すれば、あたしの短剣でも非実体と戦う事ができる。

ついでに言えば、切れ味、貫通力も増す。

やってやれない事もなさそうだったから、この戦技を研究してみることにしたの。


「どうだ、ガーベラ、調子は?」

「うん、いい調子。アイアンゴレームもスパッと切れるし、ゴーストも核に入れば一撃だよ。霊体攻撃できると共に切れ味が増したみたいだね」

「良かったじゃないか、本当に書城グリモワールの蔵書はすごいな」

「なんでもあるもんね。みんなもっと利用してくれたらいいのに」

「掃除して花を飾った事で、来城者は冒険者を中心に増えて要るようだぞ?」

「そっか!それならいいや!」


 あたしたちは、2人で手合わせする。

 魔法も使った、真剣勝負だ。

 結果、ガザニアちゃんは懐に入りこまれると弱い。

 あたしは剣の連続攻撃に弱いという事が分かった。

 魔法?魔法はガザニアちゃんの魔法はあたしが『ディスペルマジック』で消せちゃうので、あたしが断然有利だったよ。

 という訳で、魔法を除けば互角かな?

 ガザニアちゃんは悔しがってたけど、そんなもんじゃないかな、とあたしは思う。

 肉弾戦と、魔法を同時に使えるあたしが反則なだけで。


「さあ、そろそろ晩御飯の時間だよ、ガザニアちゃん」

「あ、ああ!そうだったな。今日はオムレツとの事だった」

「ホント!オムレツ大好き!」

 あたしたちは、オリーナさんの料理に舌鼓を打って、部屋に帰った。


 部屋に帰ったら、二人とも難しい文献と首っ引きになる。

 あたしは今回は、魔道具の作り方の本だ。

 属性を強化する本で、今後役に立つとと思われる。

 ガザニアちゃんは武術の本だ。

 とは言っても最近、書城グリモワールの最上階にいるイサナさんと一緒に研究しているとかで、新しい技とかも身につけているとか。

「あたしにも師匠がいないかなー」

 そうすると、壁からオリーナさんがにゅっと出て

「私が教えましょうか?」

「え?オリーナさんってもしかして凄腕?」

「その通りよー。でないと書城グリモワールの管理人なんてできないわ」

「じゃあ、是非お願いします!」


7月4日。PM:12:00


 オリーナさんの魔法に、あたしは全く敵わなかった。

 『最上級魔法』まで覚えてるなんて反則だよぉ。

「私の指導なら、上級魔法なんてすぐよ。最上級を覚えましょうね」

「はいっ!頑張ります!」

 願ってもない教師だ。最上級まで手伝ってもらおうじゃない!

「それで、この上級呪文はこの呪文。覚えてねー」

 それでも、ふえーん、スパルタだよう。

「さあ、この呪文行ってみましょう」

「ごにょごにょ………『上級:火属性魔法:インフェルノ」!!」

 ごおおおっ、中庭をくまなく、高温の炎が舐め尽くしていく。成功だ!

「うん、教えたとおりにできたわね。頑張ったら今日のご飯はビーフシチューよ」

「本当っ!頑張るよ!」

 あたしってチョロいんだろうか?


 魔力と、魔力回復薬が無くなったところで、今日の訓練は終わり。

 タイミングよくガザニアちゃんも下りてきたので、食事だ。

 ガザニアちゃんは、オリーナさんを手伝っていた。

 あたし?あたしは食べるの専門です。

 一回あたしが手伝ったパンは「異界からの物体X」と名付けられた出来栄えだったからだ。あたしは料理「×技能」というやつらしい。ふんだ。

 とにかく食事を楽しんで、寝る前の読書タイムだ。

 あたしが最上級魔法で一番覚えたいのが『シールクリスタル』だ。

 広域のモンスターを、霊体実態問わずクリスタルに封印する技だ。

 憧れてるけど、覚えるのにどれぐらいかかるかなー?


 7月5日。AM08:30。


「寝坊だっ!」

 ガザニアちゃんの声に飛び上がる。あ、30分寝坊だ!

「魔道電池が切れた!?」

「いや、遅れてないから、私たちが気が付かなかったんだと思う」

「あー、最近訓練がハードだもんね」

「早く着替えよう。今日はギルドに行く日だ」


 あたしたちはバタバタと身繕いをし、何とか準備を整えた。

「遅かったのねー。今日は塩握りよ」

 オリーナさんが朝食を渡してくれる。いぇい、塩握り好きー。

 書城グリモワールのゲートをくぐると、二人ともお弁当タイムだ。

 オニギリは歩きながらでも食べれるのがいい。


 そしてギルドに到着した。エトリーナさんは………埋まってるか。

 とりあえず、クエスト掲示板を見に行く。

 今回はどれにするか迷った。私たちの能力は、確かにシルバーに近いみたい。

 何でかって言うと、歯ごたえのある獲物が見当たらないんだよねー。

 そんな事を思いつつ、1つのクエストが目に入った。

 「げきやくあるふぁ」を町の魔道具店まで納入してください。

 「げきやくあるふぁ」はそのままではただの毒物だが、魔道具職人にとっては色んな薬の材料となるものだ。素材はイシファンの古森の奥に自生している。

「ガザニアちゃん、これって、マシな部類じゃない?」

「作れるのか?」

「もち。基礎の魔道具合成だよ。普通のカッパーには難しいだろうけど!(ふふん)」

「そうなのか。シルバーに上がるのももうすぐなのかもしれないな」

「そうかもね、かなりクエストをこなして来たし!」

「そうだな、そうだったらいいな」

「じゃあ、エトリーナさんは埋まってるし、オリーの所に行こうか」


「これは商業区に店を出している、魔道具店の店の依頼ですね」

「何でクエストなの?材料は普通の平原にもあるはずだよね」

「今回は材料がほとんど生えてないそうで………このままでは各種回復薬製造がおぼつかないという事で………100瓶納入して欲しいという事です」

「また100なのー?花束よりは楽だけど」

「でも受けるんだろう。ガーベラ?」

「はーい、これを受けるよ、よろしくね、オリーさん」

「はい!では受領印をポンっと」


「まず、材料をイシファンの古森に採取しに行かなくちゃいけないよ」

「それはサクサク終わらせよう。どんな材料だ」

「アラムの草とメケメケのキノコ、あとは他のでもいいけどスライムの核かな!」

「じゃあ、核は任せろ。草とキノコは任せた」

「はーい。100個お願いね!」

「………はいはい」


 かごにワッサリ材料を入れて、書城グリモワールのゲートをくぐる。重かったぁ。

 前回と同じく、魔道具を作る場所は、書城グリモワールの大広間の中だね。

 買って来ていた瓶に、ボウルに出来上がってきている「げきやくあるふぁ」を移し替える。うーん、劇薬には見えない青く透き通った液体だこと。

 でも、このまま他の薬剤と混ぜないと「げきやく」なんだよね。

 1本で人間1人死んじゃうよ。


 7月6日AM08:00。


 昨日のうちに「げきやくあるふぁ」は完成させておいた(疲れたぁ)

 身繕いを済ませて、お弁当を貰い、商業区に行く。

 魔道具店の主に会い、大量の「げきやくあるふぁ」を納品。

 かなりの大店なので、100個の納品も納得だったね。

 終了印を店主に貰うと、念のために冒険者ギルドへ。

 オリーさんに終了印を見せると


「おおっ、完遂ですね!これで次は昇級テストのクエストが行きますよ!」

「ほーんとっ!?やったあ!ガザニアちゃん!」

「うん………嬉しいな!」


 私たちはワクワクしながら書城グリモワールへの帰路につくのだった。

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