第21話 図書室に花を①【語り手:ガーベラ】
6月22日。PM15:00。
あたしはサフランとパプリカ相手に戦闘訓練をしていた。
と言っても、魔法を使うと壊しかねないから、今日は盗賊のスキルの練習だ。
ガザニアちゃんはどこって?それはね―――
♦♦♦
その時(6月20日)あたしたちは4階で戦っていた。
オリーナさんが、あたしたちが4階に行けると確認したので、4階のお掃除を頼まれたからだ。こりゃまたほこりが凄いねえ。
棚のほこりを払って、廊下に落ちてきたところでホウキとチリ取りで回収。
「この階、利用者さんいるのかなー?」
「さあな、だが私たちは有効活用するだろう?」
「うん、魔道具作成の書物が次々見つかってる。有効活用するよ!」
「私も武術の本などは興味深い。技に取り入れるものもあるだろう」
「他の人にも利用して欲しいけど………」
「攻略者はそれなりにいるみたいだし、綺麗にしておけば目も引くだろう」
「そうだね、じゃあもっとキレイにしようっと!」
そこで、あたしたちは幽霊の大群と出会った。
多くても全体に効果のある「ターンアンデット」なら一発、と思ったんだけど。
しぶといゴーストが10体ほど効果を受けずに残ってしまった。
それ自体は、ガザニアちゃんの魔力剣とあたしの魔法で何とかなったんだけど。
「ううん………この4階から先を攻略していけば、ゴーストは増えるだろうし、階を上がればレベルも上がるだろうな。書城グリモワールは10階まであるんだ」
「そうだけど、今のやり方以上にやり方があるの?」
「神に祈って、もっと強力な神聖魔法を授けてもらうんだ」
「神殿におこもりして祈る奴?」
「そうだ。明日と明後日は、祈りのために出かけるから留守番を頼むぞ」
「はーい」
♦♦♦
というわけで、昨日と今日は1人で訓練する羽目になってるんだよね。
あたしは、サフランとパプリカとの訓練を切り上げて、別の壊してもいいアイアンゴーレムを2体作り、本来のスタイルの戦闘訓練を開始する。
あたしの魔法の発動体は杖でなく指輪だから、物理で戦いつつ魔法が使えるのだ。
もちろん、ゆくゆくは発動体なしでも魔法が使える凄腕になりたいね。
作ったアイアンゴーレムは材料の関係で人間大、なのでやや弱め。
おかげで、あたし1人で撃破する事が出来た。
それでも、自分の腕が上がっているのは確かで………うん、満足。
これが終わったら夕食だ。夕食にはガザニアちゃんも帰って来るはず。
そう思ったら、書城グリモワールのゲートが開き、甲冑姿のガザニアちゃんが姿を現した。上機嫌みたい。新しい術を授かったのかな?
「ガザニアちゃーん!首尾はどうだった!?」
「神の奇跡を首尾言うな!………まあ、新しい奇跡はいただけたのだが」
「どんなの、どんなの?」
「『ホーリーライト』と『ホーリーピュアサークル』だ」
『ホーリーライト』は『神聖火炎』の広範囲版。
場にいる全てのアンデットにダメージを与える。
『ホーリーピュアサークル』は『ターンアンデット』の強化版。
場にいる全てのアンデットにより強力なお払いの効果がある。
「すごーい、いいのが貰えたね!今日はステーキらしいからお祝いしよう!」
「ステーキ………オリーナさん、ありがとうございます!」
「うふふー、いいのよ、特別な時は特別な事をしないとね!」
「ねえねえガザニアちゃん、ガザニアちゃんがいない間にあたしも新しい上級魔法を完成させたんだよ!」
「ほう、どんなのだ?」
「『クリエイトマテリアル・ラージ』複雑なものや大きいものを『作成』できるようになったの。鉄も出し放題だから、大きなアイアンゴーレムとの修行もできるね!」
「興味深いな、もう一つは?」
「『ブリザード』だよ難点だった広範囲魔法が手に入ったの!」
「そうか、じゃあこのステーキは、私とガーベラ両方のご褒美だな!」
「いっぱい食べてねー。お肉買いすぎちゃったわぁ~」
「「よろこんで!!」」
6月23日。AM08:00………いや、08:30。
「はっ!お腹いっぱいで眠って、寝坊をしてしまった!?」
「えっ!?うわぁホントだ。今日はギルドに行く日なのに!」
とりあえず大急ぎで身繕いをすませる。
「今日は遅かったのねー。はい、オニギリ」
「ありがとう、行ってきまーす」「かたじけない、行ってきます!」
オニギリを食べつつ速足でギルドに向かう。我ながら器用だ。
ギルドに着いた。
エトリーナさんが埋まっているのを横目にクエスト掲示板を見に行く。
「これはなんだろう?書城グリモワールから出されたクエストの様なんだが」
「ふんふん、「永久に咲く花束を図書室に」だね」
「永久に咲く花束?」
「魔道具の一種だね、あたし作れるよ!」
「依頼はオリーナさんか。ガーベラが作れるって知らなかったんだろうな」
「よし!空いてる人は………と、お兄さん!受領印を頂戴!」
「いい加減覚えて欲しいなあ。僕はオリーだよ」
「オリーさんだね、覚えたよ!受領印ちょうだい?」
「はいはい、依頼の物は作れるんだね?」
「まっかせてー!」
「永久に咲く花束は100個必要だよ」
「うわ………花狩って来るだけでも大変そう………」
「うんだから、期間は1ヶ月ね」
「はーい」
♦♦♦
書城グリモワールに戻って、オリーナさんに依頼の確認をする。
「あらー。書城グリモワールにあった魔法書で勉強してくれてたの?最初からあなた達に指名依頼を出すべきだったわね。でもお願いね」
「花は何でもいいんですか?処理するとちょっと色あせるけど………」
「色あせても綺麗な様に白を基調にした花がいいわ。ホアホアの花とかどうかしら」
「?あたしは知らないよー」
「イシファンの古森で群生してる、ポピーとケイトウを掛け合わせたような花よ」
「ああ、それなら見た事がある。………今回は私は荷物持ちだな」
「荷車でも持って行かなきゃいけない感じだね」
「刈り取るのに鎌も必要だな」
「あ、それは書城グリモワールにあるものを貸与するわ」
「そんなのあったんだ」
「代々の管理人がいろんなものを置いてくのよー。私になって変わってないけどね。あ、でも、100個の花瓶はジェニー商会に注文してるので取って来てくれる」
「あいあいさー」
「どっちにしても、荷車は商業エリアに狩りに行かないとな。行くぞ、ガーベラ」
「はぁーい」
「晩御飯の準備して待ってるわねv」
「「ありがとう、オリーナさん」」
軽めの荷車を借りて、イシファンの古森にアタックだ!
でも、イシファンの森の中の敵は、もう敵とも呼べないので省く。
イシファンの古森のなかでは、主に荷車に気を使ったよ!
私たちに傷をつけられないと知るや、荷車に攻撃の手がむいたんだよね。
それなりに戦ってから、ホアホアの花の群生地に着いた。
「ちなみに花束にするには10本必要ね」
「合計1000本か!?これは何度か行ったり来たり、だな」
「数はちゃんと数えててねー。あたしは適したのを選別するから」
「心得た………水もかけておこう」
1000本を採取して、今度は花瓶を受け取りに行く。
ジェニー商会は、色のついたガラスの花瓶を用意して待っていた。
フォルムがきれいで、ただの瓶とは一線を画している。
ホアホアの花が白だから、色のついているぐらいでちょうどいいと思う。
その帰りに、あたしは魔道具作成の媒体を買った。
とは言っても、「麻紐」と、「生命力の粉」だけでいいんだけど、数が数だからねー。ちょっとした量になったよ
さー。書城グリモワールに戻って作成といきますか!
あ、ガザニアちゃんは助手ね。
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