第72話 おまけ_帰って来た雨会婆島
とりあえず、人間側からの妨害はなかった。人工衛星から監視されていそうだけど、妨害もなく、
僕は、
「僕は、人類の敵に認定はされていないんだな……。変異種のスライムとは認識されていないと考えようか」
まあ、考え過ぎか。
理解できない存在だろうけど、人類は僕に攻撃はして来なかった。その結果が重要だ。
「「「きゅっ!」」」
スライムたちが、騒いでいる。
「んっ? ニーズヘッグが? 僕を呼んでいるの?」
少しだけ、スライムとも意思疎通出来るようになって来た。なんとなく、言語での会話が成り立って来た。
どうやら、呼ばれているようだ。怒っているのかな?
森の中を進む。
考えていると、ニーズヘッグが現れた。
向こうから来てくれたか。
「ただいま戻りました」
「なにをしていた? 何故、わざわざ捕まるようなまねを……」
時間にして5時間程度、遅れただけじゃない?
「ちょっと、知り合いがいましてね。それと、情報を貰って来ました」
「……戻らなければ、こちらから撃って出るつもりだったのだぞ!」
ニーズヘッグは、僕を助けてくれるのか?
まあ、まだ頭の上に乗せている少女は、自我が目覚めていない。
「僕の不注意でした。今後は、第五……今日向かった場所と、ベヒーモスがいた東京湾は、なるべく避けてください。二度目は……、危ないかもしれません」
「回答になっていないが?」
遅かれ早かれだ。
「人間側としては、僕に興味はないみたいです。利益も不利益もない……、そう判断されました」
「……血肉を分けた者は、いないのか?」
「一番、僕に興味のない人たちですね」
「……そなたが、分からんよ」
ニーズヘッグは、血縁っていう概念を持っているんだな。
◇
檻から、捕獲したスライムを出す。
「さあ、今日からここがお前の住処だよ」
「きゅ?」
スライムは、フラフラしながら森を散策し始めた。
途中で、昆虫たちが寄って来たけど、食べることはしない。
「適正が、ないんだな……。怖い
調べないといけない。
「少し貰うよ」
スライムの一部分を指で掬う。
それを、舐めてみる……。
「……こいつ、ヤバいタイプだな。捕まえて正解だった」
人の住む世界で、また『覚醒者』が生れるところだった。それも、危険なタイプが。
スライムを膝に乗せて、僕も一休みすることにした。
水筒から水をかけてあげる。僕も水を一口飲んだ。
「僕も大分、生水に慣れたよな」
殺菌されていない水……。それしか手に入らなかった。
でも、新しい体は、すぐに対応してくれた。腹を下すことはなかったんだ。
まあ、離島とはいえ、日本の水なんだ。江戸時代以前は、飲んでいたはずだ。
「きゅ~~」
新入りのスライムが、気持ちよさそうに体積を増やす。
正直、処分が正しい。
だけど、ニーズヘッグは、良しとしなかった。
「スライムの突然発生……。理由が分からないけど、ニーズヘッグは、感知できる。今は変異種だけを捕まえに行っているけど、それも完璧じゃない。沖縄から北海道までは、カバーしきれていないのが現状だ」
ニーズヘッグの思惑が、分からない。
「変異種だけでも保護したいって、言われてもね」
それと、少女のクローンだ。上手くいかない。
研究所に残されていた設備……、まあ顕微鏡とかだけど。それと、スライムを使って2体作ったけど、目覚めることはなかった。
禁忌に触れている気もするし、気が引けるのが本音だ。
「なんか、いろいろと進まないよな……。五大モンスターの討伐もだ。力をつける必要があるけど、この方法で良いのかどうか……」
新入りのスライムは、ウロウロするだけだ。種類によっては、樹に取り込まれるのだけど、そんなタイプではなかったらしい。
スライムを抱える。
僕は、立ち上がって川に向かった。
川で新入りのスライムを放す。
「「「きゅっ?」」」
他のスライムが、集まって来てしまった。
「この、スライムに好かれる体質も、改善出来ないもんかな……」
足元が、スライムで埋まっているよ。
「いい傾向じゃない? 変異スライムも、大分増えて来てるんだしさ。島のモンスターもソーマに従っている。なんか問題あるの?」
上を向く。
この島の、同居人の一人が、木の枝に乗っていた。
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