第54話 ベヒーモス2

 その後、牧先生が連絡を取っている。

 授業中に、教師がスマホで話しているんだけど?


「……ちょっと行こうか。課外授業ね」


「はい?」


 なにかが、決まったようだ。



 黛さんを除いた、3人プラス僕と牧先生の5人で移動だ。


「何処に行くんですか?」


「第五スライム研究所だよ」


 そちらを向く。楓さんが答えてくれたんだ。

 それにしても、研究所か……。僕は、入ったことがなかったりする。まあ、普通は立ち入り禁止だよね。


 ゲートの前で、牧先生が手続きを行っている。

 二重の門なんだ……。

 敷地内の駐車場で車を停めて、徒歩で移動だ。建物に入るみたいだな。


「敷地内は、人がほとんどいないんですね……。研究所ってこんな感じなんですかね?」


 すっごい、静かだ。


「警備はいるよ。それ以外は……、スライム防衛隊の上層部かな」


「研究者は、いないのですか?」


「研究者……ねぇ~。八雲みたいなのは、少ないんだよ。まあ、設備は一式揃っているけど、スライム研究は民間の方が、主流かな~?」


 そうなんだ?

 そうなると、スライムの敷地外発生は、研究所に関係がない?

 なんか、疑問が増えて行くな。

 そんなことを考えていると、建物に入った。


「久々だね~」

「一年ぶりかな」

「それだけ、平和だったってことだろう?」


 3人は、来たことがあるんだ……。

 緊急時に呼ばれるのかな?


 窓から部屋をみて見る。中庭みたいだな。

 スライムが、多数生息していた……。


「スライムを……、飼っているのですか?」


「敷地外で見つかったスライムの飼育小屋だね。たまにさ、銀色スライムみたいに、人類にとても有益な変異スライムも見つかるから、確認のために確保しているだけだね」


「色では、分からないのですか?」


「普通の色で、モンスターの核を持つ個体もいるんだよ」


 それもそうか。色だけで変異種が分かるのであれば、民間でも話題になっているよな。

 考えから抜けていた。


「きゅ~」


 メタルが擬態を解いた。窓の前で、同族を見ているのかな?

 眼なんて器官はないんだけど……。交信とか出来たら、面白いけど出来そうにない。


「才羽。行くよ? 用事が終わったら、見学させてあげるから」


 僕は、メタルを掌に乗せて移動した。





「牧君、良く来てくれた」


 出迎えてくれたのは、山本さんだった。

 皆が、敬礼するので、僕も真似てみる。


「はは。才羽君は、慣れていないんだね。背筋を伸ばした方がいい。こうだ」


 4人の視線が痛い。

 どうやら、山本さんは偉い人だったみたいだ。


「失礼します。才羽と面識があるのですか?」


「ああ、駐屯地でね。色々と説明させて貰った」


 なんだろう? 4人の視線が痛い。それと、牧先生は汗をかいている?



「研究所の責任者?」


 驚いてしまった。

 スライム防衛隊三佐とか言われても、僕には分からない。高い階級の人なのかな?

 とりあえず、第五研究所で一番偉いらしい。

 こないだは、そんな人から説明を受けていたのか。


「それで、牧君。電話での件だが……」


「実際に見るのが、早いでしょう。サンプルのご用意をお願いします」


 その後、スライムが一匹運ばれて来た。

 半透明で、モンスターの核が見える。

 そうか……、これが変異種なんだな。

 色じゃないんだ。


「才羽君。頼めるかな」


 ……断る理由はないけど、無害なスライムの殺害か。ちょっと気が引ける。

 それに、一匹1兆円以上なんだよね……。

 メタルを、楓さんに預けて、僕は左手の魔力で変異スライムに触れた。


「〈崩壊〉の……魔力」


 魔力で、スライムを包み込む……。その後、スライムが消滅した。

 モンスターの核も残さずに。


「モンスターの核までなくなってしまいましたね。一応、予定通りかな」


 全員を見ると、とても考えている。

 そんな難しい顔をしなくてもいいと思うんだけど。



 僕……、なんかやっちゃいました?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る