第53話 ベヒーモス1

 朝起きて、ニュースを確認する。


「ベヒーモスが、動き出した? 一日に1キロメートルの移動を確認?」


 珍しいこともあるんだな。

 リビングに移動する。


「おはようございます」


「おはようございます、相馬さん。……ニュースは見られましたか?」


「ベヒーモスですよね」


 怜奈さんは、心配しているようだ。

 今はまだ、呼び出しがないことを伝えた。





 学校に着いた。自転車を置いて、教室へ向かう。


「おはようございます」


「「「「おはよう」」」」


 席に着くと言われた。


「ベヒーモスの話は聞いた?」


「ニュースで見ました。連絡が来ています?」


「才羽にも、来ないのか。私たちにも来てないんだよ。ちょっと異常かな~」


 そうなんだ?

 普通であれば、連絡があるのかな? 五大モンスターなんて、序列に入っている人が担当だと思うんだけど。


「第一から第四研究所の『覚醒者』が、対応するんじゃないんですか?」


「対応できなかったから、五大怪物モンスターが残っているんじゃない?」


 それもそうか……。

 話を聞くと、何度か討伐に向かっているらしい。


 ベヒーモスは、体の中に、数千のモンスターの核が確認されている。

 吹き飛ばすと、その核を中心として肉体の再生が始まり、動けるようになると。そして、くっついて一つの個体に戻って行くんだそうだ。

 そうやって、ダメージを受ける度に肥大化して行ったのだとか。


「民間企業も巻き込んで、火炎放射器を大量に投入してさ、モンスターの核を焼き払ったわけよ」


「それでも倒せなかったのですか?」


「全部の核を破壊もしくは、回収したはず……、だったんだけどね。4人でしらみつぶしに捜索もしたんだ……」


「他研究所の『覚醒者』の人たちは?」


「もちろん、参加したよ」


 それでも、ダメだったんだ?

 更に話を聞くと、一ヵ月後に異変が起きたのだとか。

 一瞬で、湧き出て来て、確認から一時間後には、今の大きさになったらしい。


「手を出す前よりも、倍くらいに大きくなっちゃってさ……。政府が、中止を決定したの」


 民間には、伏せられている情報だな。


「4人が、ずっと東京湾にいるわけにもいかないですしね……」


「そそ……。焔一人でも残しておけば、あるいは、抑えられるかもね」


「それじゃあ、一生動けねぇじゃん。まゆっちが、民間企業と手を組んだ方が確実だろう」


「……隙間なく、火炎放射器を設置しておいた方が、燃費いい」


 話を聞く限り、ダメだと思う。

 ベヒーモスの核を破壊したみたいだけど、『どうして再生するのか』を突き止めないと。

 それに、一つの個体に戻らなかったら、相当に手を焼いていたと思う。〈再生〉と〈統合〉の阻害を見極めないといけないというのが、僕の見解だ。


「お~す、ホームルームを始めるぞ~」


 ここで牧先生が来た。



「スライム防衛隊や政府は、ベヒーモスをどうするのですか?」


「んっ? 放置だってさ。一年前の失敗から、『覚醒者』には頼らないんだってさ」


 牧先生は、呆れている。

 4人は、渋い顔位だ。

 黛さんは、携帯が鳴った。仕事があるようだ。教室から出て行く。


「才羽は、ベヒーモスに興味があるのかい?」


「いえ……。対応策を聞きたいだけです」


「今までと同じかな。餌となるプラスチックを東京湾に大量に捨てて、動かさないようにするだけだよ」


 話を聞くと、東京湾は『泥炭地』に変わってしまっているらしい。

 ベヒーモスが動いたのは、餌がなくなったからなのか?


 その後、特秘回線を見せて貰う。


「ベヒーモスのチャンネルは、ここかな?」


 テレビが映る。

 大きいな……。東京ドームくらいの質量が、呼吸をしているよ。

 移動していた時は、空港や港をことごとく破壊したんだ。

 あれが、スライムを摂取したモンスターの成れの果てか。


「才羽なら、どう倒す?」


 突然、言われてもな……。『〈再生〉と〈統合〉の阻害』と言いたいけど、ここは適当に返すか。


「〈崩壊〉でも〈固定〉でも……、僕ならどちらでも行けますね。あの質量を包み込めるだけの魔力があれば……ですけど。動きを止めたら、焔さんと茜さんが削って行く……。爆破したり、分離させない方法を取りたいと思います。時間がかかるでしょうけど、出来なくはないかな。まあ、前提条件が破綻していますけどね」


 ――シーン


 あれ?

 全員、真剣な顔をしている?


「きゅっ?」





 ベヒーモス≒キングスライム(ぼそ)

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