第52話 メタルが帰って来ました
「メタルちゃんは、どうしたのですか?」
夕食時に、怜奈さんに言われた。
メタルは、何時も擬態しているけど、怜奈さんには見分けがつくんだ?
擬態の意味がないかな。今度からは、ポケットにでも入って貰うか?
でも、一般の人は、見分けがつかないと思う。意味ないか。
「え~と。今、日本が危機的な状況に陥っていまして。メタルは、そのご機嫌取りのために貸し出しました」
怜奈さんは、理解出来ないでいる。うん、日本語が変だよね。
「日本の……危機?」
他に表現のしようがない。
「まあ、数日で帰って来ると思います。僕以外には、意思が通じないと思うので」
そうなって欲しいな~。
いくらズボラな人でも、水を定期的に与えるのを忘れなければ、メタルは死亡しない。それに、他のスライムと違い、メタルには知能があると思う。最悪、自分で水分を求めに行けるだろう。
他の研究所に売られていたら、取り返しに行けばいいだけだ。
食べられたら……、どうしよう?
「帰って来ると……、思います?」
「なんで疑問形なんですか?」
頑張ってくれ、メタル。
黛さんの機嫌を取って、日本を救ってね……。
◇
次の日の朝、教室に着いた。
「おはようございます」
「「「「おはよう」」」」
挨拶が帰って来ると、気持ちいいな。
日常が、戻って来たのかな? 異常な日常だけど。
「きゅ~!!」
――ポン、ポン、ポン……
メタルが、跳ねて僕の元へ来た。
良かった、生きていてくれたか。
「それが、才羽の飼っているスライム? 危なくないの?」
「今のところ、問題はないですね。スライム防衛隊に取り上げられることもなかったし」
メタルに危険は、ないと思う。僕と一緒にいればという、限定条件は付くけどね。
それより、他の『覚醒者』の〈強化〉だと思う。
使い方次第では、二軍扱いの人たちでも活躍出来たんだ。
メタルが、甘えて来る。頬ずりは、始めてかもしれない。
「黛さん……。昨日はなにかありました?」
「んっ。私には懐かなかった」
昨晩は、なにがあったんだろうか?
とりあえず、メタルが戻って来て安心した。
「お~す、授業を始めるぞ~」
◇
牧先生の授業を聞いていると、モンスター発生の連絡を受ける。
牧先生が、テレビをつけた。
ちなみに、黛さんは、教室にいない。今日も忙しいみたいだ。
「超小型の素早いヤツだね……」
「あれも、才羽がいないと厳しかったね」
黛さんがメタルを使って、僕を飛ばした時のモンスターだな。
出張の出張で戻って来た時の話だ。
「来ますかね?」
「スライム防衛隊も、進歩しているんだよ」
言い方からすると、新兵器でもあるのかな?
――ドン
テレビから大きな音がした。
軍用車両……装甲車? 車の屋根にロケット砲が、取り付けられている。だけど、射手は見かけない?
そんなのから、何かが撃ち出された。
「網だね……」
その網が、モンスターを捉えた。その後、スライム防衛隊の一斉掃射が始まる。
終わったようだ。
「あんな兵器が、あったんですね」
「新兵器だよ。車両に、画像処理装置を取り付けたんだってさ。AIによる未来予測で、動きを先読みするんだとさ。捕まえるだけなら、有効みたいだね。特殊な合成繊維なら、数秒くらいモンスターを足止めできるし」
なるほど、全自動で追尾するのであれば、有効かもしれない。
発射台を複数作れれば、囲める。そうすれば、スライム防衛隊だけで対応できるな。
「牧先生は、詳しいんですね」
「核のない通常のモンスターで、この五組のメンバーを呼ばれたからね。対策くらいは、聞いているんだよ。それに、病棟に行けば、大抵の情報は手に入るし」
牧先生も怖いな。広い情報網を持っていそうだ。
ここで、黛さんが帰って来た。
「牧……。私の一日の討伐数が、減っている。これでは、一位に追い付けない。政治家どもの依頼を減らして、他の研究所のモンスターも回して」
「少し休みなよ。それに、100倍の差なんだしさ。
「む~……」
聞いたことはあるな。
数年前に起きたきりだ。
街の放棄も考えられたけど、人間側が土地を取り返したんだ。結構大事だったと思う。
そうか……。一位の人は、『あれ』を掃討できるのか。
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