第52話 メタルが帰って来ました

「メタルちゃんは、どうしたのですか?」


 夕食時に、怜奈さんに言われた。

 メタルは、何時も擬態しているけど、怜奈さんには見分けがつくんだ?

 擬態の意味がないかな。今度からは、ポケットにでも入って貰うか?

 でも、一般の人は、見分けがつかないと思う。意味ないか。


「え~と。今、日本が危機的な状況に陥っていまして。メタルは、そのご機嫌取りのために貸し出しました」


 怜奈さんは、理解出来ないでいる。うん、日本語が変だよね。


「日本の……危機?」


 他に表現のしようがない。


「まあ、数日で帰って来ると思います。僕以外には、意思が通じないと思うので」


 そうなって欲しいな~。

 いくらズボラな人でも、水を定期的に与えるのを忘れなければ、メタルは死亡しない。それに、他のスライムと違い、メタルには知能があると思う。最悪、自分で水分を求めに行けるだろう。

 他の研究所に売られていたら、取り返しに行けばいいだけだ。

 食べられたら……、どうしよう?


「帰って来ると……、思います?」


「なんで疑問形なんですか?」


 頑張ってくれ、メタル。

 黛さんの機嫌を取って、日本を救ってね……。





 次の日の朝、教室に着いた。


「おはようございます」


「「「「おはよう」」」」


 挨拶が帰って来ると、気持ちいいな。

 日常が、戻って来たのかな? 異常な日常だけど。


「きゅ~!!」


 ――ポン、ポン、ポン……


 メタルが、跳ねて僕の元へ来た。

 良かった、生きていてくれたか。


「それが、才羽の飼っているスライム? 危なくないの?」


「今のところ、問題はないですね。スライム防衛隊に取り上げられることもなかったし」


 メタルに危険は、ないと思う。僕と一緒にいればという、限定条件は付くけどね。

 それより、他の『覚醒者』の〈強化〉だと思う。

 使い方次第では、二軍扱いの人たちでも活躍出来たんだ。


 メタルが、甘えて来る。頬ずりは、始めてかもしれない。


「黛さん……。昨日はなにかありました?」


「んっ。私には懐かなかった」


 昨晩は、なにがあったんだろうか?

 とりあえず、メタルが戻って来て安心した。


「お~す、授業を始めるぞ~」





 牧先生の授業を聞いていると、モンスター発生の連絡を受ける。

 牧先生が、テレビをつけた。

 ちなみに、黛さんは、教室にいない。今日も忙しいみたいだ。


「超小型の素早いヤツだね……」


「あれも、才羽がいないと厳しかったね」


 黛さんがメタルを使って、僕を飛ばした時のモンスターだな。

 出張の出張で戻って来た時の話だ。


「来ますかね?」


「スライム防衛隊も、進歩しているんだよ」


 言い方からすると、新兵器でもあるのかな?


 ――ドン


 テレビから大きな音がした。

 軍用車両……装甲車? 車の屋根にロケット砲が、取り付けられている。だけど、射手は見かけない?

 そんなのから、何かが撃ち出された。


「網だね……」


 その網が、モンスターを捉えた。その後、スライム防衛隊の一斉掃射が始まる。

 終わったようだ。


「あんな兵器が、あったんですね」


「新兵器だよ。車両に、画像処理装置を取り付けたんだってさ。AIによる未来予測で、動きを先読みするんだとさ。捕まえるだけなら、有効みたいだね。特殊な合成繊維なら、数秒くらいモンスターを足止めできるし」


 なるほど、全自動で追尾するのであれば、有効かもしれない。

 発射台を複数作れれば、囲める。そうすれば、スライム防衛隊だけで対応できるな。


「牧先生は、詳しいんですね」


「核のない通常のモンスターで、この五組のメンバーを呼ばれたからね。対策くらいは、聞いているんだよ。それに、病棟に行けば、大抵の情報は手に入るし」


 牧先生も怖いな。広い情報網を持っていそうだ。


 ここで、黛さんが帰って来た。


「牧……。私の一日の討伐数が、減っている。これでは、一位に追い付けない。政治家どもの依頼を減らして、他の研究所のモンスターも回して」


「少し休みなよ。それに、100倍の差なんだしさ。怪物の大群スタンピードを掃討した、一位には機会がいないと追い付けないって」


「む~……」


 聞いたことはあるな。怪物の大群スタンピードか……。

 数年前に起きたきりだ。

 街の放棄も考えられたけど、人間側が土地を取り返したんだ。結構大事だったと思う。


 そうか……。一位の人は、『あれ』を掃討できるのか。

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