第51話 メタルの実験の続き
幸いにも、今日のモンスターの発生は少なかった。
他の『覚醒者』も控えていて、対応出来たのだとか。
問題は、日本のお偉いさんたちだな。
Web会議に切り替えたのだとか。
それと、電車と飛行機での移動にしたらしい。〈転移・転送〉は便利だよね。
権力を振りかざして、乱用したんだろうな。
「『覚醒者』を、なんに使っていたんだか……」
〈転移・転送〉を悪用されたら、日本が終わるぞ?
貴金属や紙幣なんか、盗み放題なんだ。
今回は、籠城だったけど、資金を持って世界中を逃げ回られたら、捕まえられないよね。
黛さんは、3日で復帰した。
当分の間は、牧先生が、スケジュール管理をするらしい。
今までは、誰が管理してたの? あの無茶なスケジュールを組んでいたのは、誰ですか?
◇
「ふう~。やっと解放されたね~」
今日は、第四研究所にお邪魔している。
僕に黛さんの機嫌取りは、出来そうになかったからだ。
牧先生を含めた4人に任せよう。
八雲さんは、研究がストップしていたらしい。
バックアップ要員になるのかな?
第一、第二、第三の『覚醒者』次第かもしれないけど。
でも、他人の
周囲によるんだろうけど、
八雲さんは、なにか知っているかな?
「黛さんは……、なにも望まないのですかね?」
それとなく聞いてみる。
「僕らのレベルになるとね、欲しいモノはないね。恋人とか家庭を持ったら終わりかな。まあ、異性好きもいるけどね。現代で、漫画みたく、勇者生活はないかな。ハーレムを望むのは、お勧めしない。風俗の代金は、小銭に感じるしね。アイドルを所望した奴がいたけど……、実現しなかったね。それどころか、罰則を科されていた」
王寺さんの例がありますものね。
序列に入れたら、兆円単位の資産を持っていそうだな。
隠れた、世界長者番付に入っていそうだ。税金の免除なんて、一番始めだろうし。
「黛さんの、男性遍歴は、分りますか?」
「少し擦れた性格だからね……ないと思う。しいて上げるなら、才羽君?」
どうしようもないな。
日本の危機は、去っていない。
日本中の菓子職人に期待だな。
「メタル君なんだけど、君の血を吸うのだよね? 他の人は、興味なしなのかな?」
研究の続きに戻った。
「どうですかね……。僕は持病を持っていて、それに対応するように変異して貰ったと思っているので」
メタルを八雲さんに渡したけど、血を吸うことはなかった。興味を示さない。
スライムの吸血行動は、知られていないらしい。
食料が、プラスチックだしね。
「ふむ……。才羽君に、薬を投与しているのかもね。吸血ではなく、体細胞を投与が正しいのかもしれない」
「いくら、スライムでもそんなことが出来るんですか?」
「『スライムは、寿命を延ばさない』……って言葉は、どうやって調べたと思う?」
話を聞くと、白血病患者がスライムを食べたことがあるらしい。
血液の癌だな。
若返って、骨髄の時間を巻き戻す――そんな考えだったらしい。
「結果として、骨髄の時間は巻き戻らなかった。時間と共に病気は、悪化して行ったんだ。肉体は若返ったけどね。だけど、不可思議な症状が観測された」
なんだろう……。想像出来ない。
「体内に、スライムが住み着いていたんだ」
「え……?」
「モンスターの核だね。死後に発見された。その人は、『覚醒者』としての才能があったらしい。その中でも更に特別な人材だったのかもしれない――そんな結論だったよ」
「
「うむ。末期症状だったからね。あるいは、発現していたかもしれない」
僕の体内にも、モンスターの核がある。脳と心臓にだ。
八雲さんは、ないんだな。
ここは、とぼけるか。
「僕の体内にも、モンスターの核があって、他の『覚醒者』とは違うと? でも、メタルが僕の血を吸う理由には繋がらないかと」
「そうだよね……。ただの直感だ。僕の知る『特別な覚醒者』の一例だったって話なんだ」
直感――ですか。当たっているから怖い。
「癌以外の末期患者には、スライムを与えていないのですか?」
「実例はあるよ。でもさ、余命1年の人が半年で亡くなっている。余命が延びる事例はなかったんだ。遺産手続きに使われるのが、多かったみたいだね」
だから、『寿命は延びない』のか。僕は、余命宣告は受けていない。もしかしたら、親が知っているのかもしれないけど。
死神は、僕の背後から離れてはいないんだな。
◇
メタルの観察実験を続けた。
真水、経口補水液、海水、ミネラルウォーター……。メタルは区別なく体に取り込んだ。
プラスチックも複数種類用意する。
ポリエチレン、ポリプロピレン、……口が回りません。以下略。
「他のスライムと変わりないね」
結論として、メタルは色だけが異なるみたいだ。
ちなみに、知能を高めるスライムは見つかっているんだとか。厳重に管理していて、認められた『覚醒者』に配っているのだとか。そのスライムは、養殖も可能なんだな。僕は、当初そのスライムを食べたと思われていたらしい。
「才羽。帰るよ」
ここで、黛さんが来た。
「ありがとうございます。黛さん」
「……本当に感謝している?」
「もちろんですよ。第五から第四になんて、往復で何時間かかるか」
汗が止まりません。
「しばらくは、実験を中止した方がいいかな」
僕が、第四に移籍できればいいんだけど、それは叶わない。
「メタル。帰るよ」
「きゅっ」
ポンポンと跳ねて、メタルが僕の肩に乗った。
黛さんが、メタルを見ている……。
「スライムと意思疎通している……」
教室に戻って、言われた。
これから数日間、黛さんがメタルを飼いたい……と。
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