第49話 討伐依頼が来ました2

「ちょっと、面倒くさいですね。このモンスターには、近づけない」


 中型のモンスターは、変異種じゃなかった。

 だけど……、臭かった。

 こう……、生物が生理的に嫌がる匂い?

 ただそれだけを、撒き散らしていた。植物を連想させるな。フルーツの王様だ。


 銃器を撃ち込むと、悪臭が飛散する。

 これ……、黛さんか焔さんが担当だと思うな。

 いや、クラスメイトの4人なら全員対応出来そうだ。

 僕だけが、苦手だな。僕の能力スキルは、直接触れる必要がある。


 スリングショットで、メタルを撃ち込んでみたけど変化なし。変異種じゃないんだな。

 最終的に、僕は息を止めて突撃した。右手で触れて即座に〈固定〉する。

 風が吹いて、匂いが軽減された。


 ガスマスクを装備したスライム防衛隊員が、ハンドサインで会話をしている。

 僕には、なしなの?


「毒性は、ないんですかね?」


「ないよ? 確認されている」


 それで、僕だけガスマスクなしなんだ……。すっごい辛いんですけど?

 火炎放射器の到着を待って、〈固定〉を解除する。


 ――ゴオー……


 燃える、燃える。水分を含んでいるけど、近代兵器は優秀だ。

 モンスターが、炭になったのを確認した。

 その後に、一応待機だ。車で休ませて貰う。

 スライム防衛隊員は、周辺を確認している。普通のスライムが、まだ隠れている場合があるらしい。


「もういいだろう。撤収する」


 隊長っぽい人の命令で、終わりとなった。

 今日は、呼ばれなくても良かった気がするな。

 車の中で、少し聞いてみるか。


「今日は、変異種じゃないんですね?」


「あ~。黛さんがダウンしているからね。街全体が、厳戒態勢なんだよ。全ての研究所がかな? 本来前線に出ない『覚醒者』も、緊急事態ということで、呼び出しを受けるほどだ」


 その後、車の中で討伐数を教えて貰った。

 僕は……20匹目だった。

 それで、黛さんが……。


「1万弱!?」


「もうすぐ大台だよね。上位6人には、頭が上がらないよ」


「第一研究所の人は、100万ですか……」


 これ、年期の問題じゃないな。黛さんは、活動して3年くらいのはずだ。日に10匹くらい狩ってるの?

 こうなると、最低でも、移動手段が必要だ。

 競い合う気はなかったけど、数字で見せられると、差が凄いことが分かった。

 ちなみに、楓さんが1000匹くらいで、焔さんと茜さんは、500匹だった。

 1日1匹なら、僕は、この3人と同じくらいのペースになりそうだ。





 平屋に帰って来た。

 怜奈さんが、待っていてくれた。先に食べていてくれても良かったんだけどな。


「遅くなりました」


「手を洗ってくださいね。それと、うがいも」


 手洗いを終えて、席に着く。


「頂きます」


 夕飯は、魚のムニエルだった。


「美味しいですね……。これは、鮭?」


「そうですよ? なんで疑問形なのですか?」


 何時もは、鮭フレークしか食べたことがなかったからですよ。

 この一ヵ月は、お肉中心のメニューだったけど、魚も美味しいな。

 全部食べられた。


「ごちそうさまでした」


「お粗末様でした」


 その後に、魚のムニエルの作り方を教えて貰う。そうすると、料理本が出て来た。

 材料が残っていたので、一切れを調理してみた。

 自分で調理して、食べてみる。


「……塩胡椒さえ間違えなければ、食べらるモノになりそうですね」


「火加減を間違えないでくださいよ? 強火だと、表面が焦げるだけですから」


 これで、次の調理実習は大丈夫かな?

 惨事は、免れそうだ。



 お礼に、今日は僕が食器を洗った。怜奈さんは、シャワーを浴びている。


「平日に無駄に時間を使わせるのは、問題だったかな?」


 怜奈さんは、慣れて来たのか、最近は疲労の色が見えなくなっている。

 それでも、無理をさせているかもしれない。


「明日から、また怪我人が増えそうだしな……」

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