第48話 駐屯地2

「モンスターの核の使い道……か」


 ちょっと、困惑しているな。


「もしかして、秘密ですか?」


「いや、そうでもないよ。防衛隊員なら誰でも知っているしね」


 そう言って、七瀬さんが移動を始めた。僕は、ついて行く。



「新しい……エネルギー源?」


 なんか、でっかい発電機に案内された?


「まだ、試作段階だけどね。とりあえず、街の発電は、モンスターの核で賄っているよ。まあ、発生数次第なんだけどね」


 その装置が、見れる場所に連れて来て貰った。


「燃やしているんですか?」


「違うね……。まず、ボイラーとエンジン、モーターの違いは分かるかな?」


「蒸気機関、内燃機関、電気……機関?」


「そそっ。蒸気機関は、蒸気機関車とかあったけど、今だと原子力発電だね。油を使った太陽光による熱発電は、砂漠地帯で行われている。内燃機関は便利で、自動車が普及した。二酸化炭素が問題となっているけどね。それと、電気だと『電動機』になる。風力発電とか水力発電――だね」


「電動機の……、エネルギー源?」


 だけど、形がモーターじゃない。

 燃やしてもいないし。


「ボイラーでもエンジンでも、モーターでもない。太陽光による光電効果でもない。酸を使った電池でもない。次世代の発電方法なんだよ。一応、国家機密ね」


 緩くない? 国家機密を見学出来るの?


「まあ、なんだ。かなりのエネルギーを持った物体だったので、少しずつ取り出す方法を見つけて、やっと発電まで漕ぎつけた感じかな。数というか量によっては、環境問題もクリア出来て、次世代のクリーンエネルギーになりえたんだけど……」


 モンスターの核だよ?

 数が揃う訳ないじゃん?

 それなのに、発電所を作っちゃったの?

 税金の無駄じゃない?


 その後、モンスターの核を使った車とか、兵器とかを見せて貰った。

 こちらは、実用性があるかもしれない。

 掌に乗る量で、車が500キロメートル走れるのであれば、理解もできる。二酸化炭素も、ほぼ出さないのだとか。

 兵器は……、正直しょぼい。火薬の代わりにしているみたいだ。発想が良くないな。でも、使い方次第だと思う。


「特殊な物質を核に触れさせると、運動量を得られるんだ。爆発とか発熱ではないんだけどね」


 流石に発電方法までは、教えてくれなかった。

 国家機密だしね。

 でも、次世代のクリーンエネルギーになりえるのだとか。

 炭素を使わない物質の塊……。それだけ教えて貰った。


「構造式が分かるのであれば、量産も出来るんじゃないんですか?」


「作れるんだけど、単価が高くてね。スライムの排泄物がモンスターの核だったら、世界が変わっていただろうね」


 それは、強欲だな。

 今でも、スライムによって世界が変わっていますよ。

 それと、日本は次世代のクリーンエネルギー研究に、モンスターの核を指定しているらしい。


「本当に二酸化炭素の――地球温暖化の解決策になりえるかもしれませんね」


「懐疑的な意見も多いんだよ。結果が分かるのは、50年とか100年後だしね」


 僕には、実用性があるかないかが、分からなかった。

 でも、面白い実験だとは思えた。


 それと、モンスターの核は、エネルギーを蓄えた物質だったのか。

 話を聞いただけだけど、エネルギー密度も高そうだ。

 掌の大きさで、ガソリン40リットルくらいのエネルギーを持っていそうだな。


「実用化された未来……、見て見たいな」



 その日は、緊急用のスマホが鳴ることはなかった。

 僕は、帰宅を許された。

 クラスメイトの3人と大学生たちは、各駐屯地で待機らしい。





 自宅に帰って来た。

 待っていると、怜奈さんも帰って来た。

 平穏になって来たな。


「お帰りなさい」


「ただいま戻りました。夕食の準備を始めますね」


 ――トントン


 心地いい、包丁の音が聞こえる。

 ここでスマホが鳴った。緊急用の方だ……。

 頭を掻く。


「きゅっ?」


「呼び出しですか? ちょっと待ってくださいね」


 怜奈さんが、おにぎりを作ってくれた。水筒にお味噌汁だ。


「戻って来たら夕食も食べますので、残しておいてください」


「怪我には、気を付けてくださいね」


 すぐに、スライム防衛隊の車両が来た。

 車に乗り込んで、おにぎりに齧りつく。お味噌汁で流し込んだ。


「これだけでも、十分美味しいな」


「いい匂いだね。羨ましいよ」


 スライム防衛隊員は、怜奈さんを知っているようだった。

 僕がメタルで目立ってしまったので、怜奈さんとの関係も知られていそうだ。


 嫉妬も受けているけど、今の生活を手放す気にはなれない。

 充実している。


「見えました。中型みたいです」


 僕は、車の窓から外の風景を見た。





 補足

 次世代の発電方法ですが、予言されているので出してみました。

 現在とは異なる方法で、モーターを回して発電すると書かれていました。

 2020年代に見つかり、2035年に安定するのだったかな?

 本当かどうかは、10年後くらいに分かると思います。




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