第47話 駐屯地1

「黛さんが、倒れたんですか?」


「そっ。熱出してダウンだって」


 朝、学校に着いたら、牧先生が休みと聞いた。

 その理由が、黛さんか。


「一日、自習ですかね?」


「本当なら、そうなるかな。でも、私たちは、分散配置になるんだよ」

「面倒だよな~。いなくなると、まゆっちの存在感を感じる」

「ちっ……」


 話を纏めると、牧先生が黛さんの看病をしているらしい。

 黛さんの代理として、八雲さんなんだそうだ。


『一応、バックアップ体制は整っているのか……』


 その後、スライム防衛隊員が来た。

 街の四ヵ所を指示されて、移動して行く。

 僕は……、こないだ行ったスライム防衛隊の病棟付近に連れていかれた。



「駐屯地になるんですかね?」


「そうなる。防衛隊の本隊は、空港に隣接しているが、哨戒任務もあるのでね。分隊は、各地で待機なんだよ」


 スライム防衛隊員が答えてくれた。

 駐屯地では、20人くらいが働いていた。

 だけど、怪我人も見える。腕を包帯でつっているし。


「病床が、満室なんだよ。自宅療養させたいのもあるのだけど、何処も人手不足でね。出来る範囲で業務に当たって貰っている」


 皆、仕事に誇りを持っているのかな……。



「とりあえず、待機だけど、することがないな」


 街の防犯カメラの映像を、眺めるだけだ。

 気がついたことは、スライム防衛隊の車両が、街中を周回していることかな。

 街の人も防衛隊員とフレンドリーに話している。

 それと、気になること……。

 昨日の精肉業者だった。トラックが、護衛付きで空港まで移動しているよ……。


「あれで、数億円の食肉になんだもんね」


 知らなかった街の裏側が、見れるようになって来た。ああやって、運ぶんだ。


「一応、十億円単位での輸送になるよ。問題は、どの国に運ぶかだね」


 独り言を聞かれてしまった。後ろを振り向く。

 車椅子の人がいた。


「才羽です。多分、数日お世話になると思います」


「あはは。ローテーションを組まれると思うよ?」


 ローテーション?

 話を聞くと、他の分隊の駐屯地には、中学生や大学生がクラス単位で待機しているらしい。

 高校生は、僕たちのクラスのみなんだとか。

 そう言えば、言われたな。『運良く、このクラスに辿り着けている』……。

 僕が他の高校に入学していたら、どうなっていたのか……な。


「挨拶が遅れたね。七瀬だ。分隊長を任されている。ここの駐屯地の責任者でもある」


 驚いてしまった。

 責任者……?


「もしかして、『覚醒者』……、ですか?」


 七瀬さんが、笑顔を見せた。



「糸……ですか?」


「そう、アメリカの有名なヒーローみたく、射出したり巻き取ったりは出来ないんだけどね。でも、それなりの強度はある」


 能力スキルで作った、糸を見せて貰う。

 一本だと弱いけど、束ねると鋼鉄のワイヤーよりも強くなるらしい。

 完成品を見せて貰う。


「人間の筋線維みたいですね」


「君には、知識があるんだね。こんな風に束ねるのが、一番切れにくいんだよ」


 藁で縄を編むとか、諺にあるけど、スライムを使った未知の技術と科学技術の融合だな。

 まあ、出来上がったモノは、唯一無二かもしれないけど。


「同じクラスに、焔さんがいるだろう? 彼女の炎には弱いんだ。他の3人には、対応策がないので、捕まえてしまえば、拘束できる。まあ、相性だよね」


 普通の炎では燃えないけど、魔力を使った炎だと燃えてしまうのか。

 それと、消滅系のモンスターにも無力だと教えて貰った。

 回復系と反射系には、時間稼ぎに使えるらしい。


「後方支援……、ですよね? 糸を生産し続けるだけで、貢献出来そうですね」


「糸の操作も出来るんだよ。搦めて縛り上げれば、攻撃も出来たんだ。ピンと張れば、物質の切断も可能だ」


 考え方次第かもしれないな。

 罠を張る昆虫なんて、数えきれない。アイディアは尽きないだろう。


「それで、変わった変異種と対峙して、背骨をやられてしまった」


 んっ? 変わった変異種?

 話を聞くと、記録にない変異種が発生したのだとか。そして、第一研究所の『覚醒者』が倒してくれたのだとか。


「成長すれば、五大モンスターに比肩出来るほどの個体に成りえたかもしれなかったらしい。運が悪かったよ」


 牧先生は、回復役だけど、現代の医学レベルまでなのかもしれない。

 神経の断裂とかは、回復出来ないのか。



 その後、変異種の討伐事例を見せて貰った。映像が残っているんだな。

 その中には、黛さんと牧先生が、ほぼ裸で戦っている映像も残っていた。下着のみになっている。

 秘密裏に保管しているのだとか。

 そして、閲覧権限があるらしい……。

 まあ、僕はチクらない。


「こないだ、とても素早いモンスターがいました。あれは、変異種ではないのですか?」


「まだ、通常の個体の範囲だね。核がない」


 聞いてみてもいいのかな?


「回収した核って……、どんな使い道があるんですか?」

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