第45話 対処方法?

 第四研究所に移動した。僕だけだ。

 黛さんがいると、本当に便利だ。移動の制限がない。

 彼女がいなくなった日が、日本がスライムに占拠される時なのかもしれないな。

 でも、序列五位と言っていたから、そうでもないのかな?


「メタル君の実験を続けたいのだけど、いいかな?」


 八雲さんを見る。


「勿論です。そのために僕が来たんだし」


「きゅっ」


 メタルは、素直だな。

 その後、分離してくれた。



「ちょっと、力を使うよ」


 八雲さんがそう言って、魔力を活性化させた。

 そして、メタルの分離体に触れた。


 なにが始まるのか……。期待して見ていると、八雲さんが消えた?

 肩を叩かれる。

 いつの間にか、背後に移動した?


「〈転移〉ではないですよね……。〈時間停止〉……、ですか?」


「その認識であっているよ」


 バトルモノの定番だな。最強の能力の一つだ。

 だけど、モンスターに有効かと言われると、そうでもない。銃弾を弾いたり、触れた物質を消し飛ばしたりする個体と出会った。

 この世界では、最強ではないんだな。


 そう思ったんだけど……。

 次に八雲さんの右手が、光始めた!?


能力スキルを、複数持っているのですか?」


「ちょっと違うかな。他人の能力スキルをコピーできると言ったところだ。複数同時にね。メタル君の能力スキルは……、〈崩壊〉だけ使えそうだね。〈強化〉と〈無効化〉は、才羽君のみ……、みたいだね。実に興味深い」


 メタルの能力スキル複製コピー出来るのか。スキルの一部だけ教えて貰ったけど、強さの次元が違う。

 複数の能力スキルを組み合わせられるのであれば、僕に対応なんて出来そうにない。僕の能力スキルは、シンプル過ぎる。

 これでも、序列四位なのか……。


 その日は、モンスターの討伐について話を聞かせて貰った。


「変異種は、回復系、消滅系、反射系が主なんですか……」


「そうなるね。回復系は、大火力で押し潰す。消滅系は、転ばせる。反射系は、囲う方法が有効だね。才羽君は、全部〈無効化〉で対応できたのかもしれないけど、覚えておいた方がいいよ」


 牧先生の授業より、よっぽど有意義だな。

 特に、消滅系だ。僕は、真正面から受け止めていたけど、対応策があったんだな。

 それと、第五の三人の中では、楓さんの土魔法が有効だと分かった。

 飛ばない変異種なら、楓さん一人でも対応できるみたいだ。


「たまにだけど、変わった変異種もいるんだ。そんな個体を観察するのが、俺の役目でもあるんだよ。まあ、データの収集だね」


 詳しい訳だ。


「第一から第三の『覚醒者』だとさ、もう面倒臭がりで、即時処分な訳でね。最近は、新種も見つかっていないんだ」


「即時処分ですか……」


 うぬぼれがあったかもしれない。

 僕と上位四人との差は、天と地ほど離れているのかもしれないな……。



 その後、スキルの再検証だ。

 八雲さんが、メタルの能力スキルを確認するのだけど、〈強化〉が発現しない。他の『覚醒者』に協力して貰っても、無理そうだった。


「ふむ……。〈強化〉については、才羽君固有の能力スキルなんだね。複製コピー出来そうにないね。この分だと、〈無効化〉も無理そうだ」


 そうなんだ?

 詳細を聞くと、他の能力スキルでもある事象なのだとか。

 完全な複製コピーは無理なんだな。

 でも、八雲さんの本領は、複数の組み合わせにあると思う。

 それに、『必勝パターン』を持っていそうだな。


 スキルの検証は、ここで終わりだった。

 八雲さんは、人間と意思を通わせるメタルにしか、興味がないみたいだ。

 ここで、スマホが鳴った。緊急用の方だ。


「呼び出しです。今日は帰りますね」


「ああ、俺の研究室に黛さんが来ていそうだね。急いだ方がいいよ」


 走って、研究室へ向かう。


「あっ、やっと来た」


 時間にして1分くらいじゃないですか?

 その後、第五に戻った。





 そのまま、現場に着いた。モンスターが目の前にいる。


「消滅系は、転ばせる……と」


 地面を〈崩壊〉させて足場を悪くさせるだけで良かった。

 モンスターは、地面に埋まって行く。

 スライム防衛隊は、驚きの表情をしているよ。


 触れられなくても、足裏は普通に物理が通用するはずだ。そうでなければ、地面に立てない。思いつけば、当たり前だったな。


「何処まで、沈んで行きますかね?」


 モンスターは、途中で止まった。消滅させられる質量には、限界があるみたいだ。

 こうなれば、スライム防衛隊の装備でも倒せるんだろう。

 一斉射撃で、終わりだった。


「才羽。八雲の所でなにを習った?」


 黛さんを見る。


「三種の変異種の討伐方法を……」


 その後、他の三人が対峙している場所に向かった。

 三人が、足止めしているのか。2体同時発生とはね……。


「反射系ですかね……」


「「「才羽!」」」


 この4人が、苦手とする相手なのかもしれない。

 魔法のバリアに阻まれて、攻撃が届いていない。

 まあ、やることは一緒だ。

 僕は、地面を崩した。


 モンスターが転ぶ。そうすると、自重の反動で飛ぶように浮き上がった。

 3人が、理解してくれたようだ。

 広場の外に出ないように押し返してくれた。


「楓さん、土で囲んでください」


「OK~」


 これだけで、モンスターを拘束出来た。

 牧先生を含めた、5人が集まって来る。


「物理反射なんですが、モンスターに向かって動く物体を弾くんだそうです。モンスター自身が動いたと認識した場合は、反応しないと聞きました」


 そうしないと、真っ黒で見えなくならないとおかしいのだそうだ。光の反射を、僕たちは視ていると教えて貰った。


「八雲は、この後どうやって倒した?」


「土魔法次第ですが、高温で焼いてもいいし、真空に引いてもいいんだそうです。モンスターは、あの土の檻を壊せないんだとか。もし壊すのであれば、その箇所が物理攻撃の通じる場所になりますし」


 気がつくかどうかだよね。

 個体差はあるけど、モンスターによっては、攻撃力がないのだとか。


 その後、真空状態に晒されたモンスターは、血を噴き出して討伐された。

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