第43話 メタルの分裂実験

「水圧を高くして、暗闇にしても増えないね……」


 普通のスライムであれば、一日で変化があり、三日で分裂するんだそうだ。

 やっぱり、メタルは、普通じゃないんだな。


「メタルは体の一部を分離させられるんですけど、分離体は、三日で死滅してしまうんですよね」


「ふむ……。次は、その分離を分裂に持って行けないか、検証しようか。とりあえず、実験は中止にするね」


 八雲さんは、頭の回転が速いな。

 これが、変異スライムを摂取した人の本来の姿なのかもしれない。


 八雲さんの指示で、メタルが解放された。

 メタルは、水槽から出ると、僕のところに来てくれた。


「きゅう~~~~」


 メタルは、不満があるようだな。

 今日は、餌を多く与えようか。



 その後、メタルの一部を分離して貰った。

 それを、八雲さんに渡す。


「ふむ……。聞いたことがない状態だね」


 そうなんだ? スライムは、分離しない?

 体の一部を切り離すことはしないんだ……。覚えておこう。

 メタルの特性の話を進めようか。


「それを触っている状態で、魔力を活性化させると、吸収されます。気を付けてください」


 八雲さんが、調べ始めた。

 その様子を観察する。


『研究者って感じだよな。様々な装置を使いこなしている』


「今日は、ここまでかな……。DNA解析は、数日待って欲しい」


 とりあえず、聞いてみるか。


「八雲さんは、メタルを使わないのですか?」


「貴重なサンプルだし、使わないよ?」


 再度、メタルが分離してくれた。


「何個でもとは言いませんが、数は出せますよ?」


 八雲さんが、笑った。





 黛さんが、迎えに来てくれて、第五の教室に戻って来た。

 まだ、下校時間じゃないから、これから授業だ。


「才羽ぁ~。コミュ力高すぎじゃないか~?」


 突然言われた。

 そうかな? 僕は、友達なんていなかったのに。


「スライム関係の話であれば、続けられますね。『覚醒者』同士なら、仲良くなれそうです」


「ふ~ん。うちらとは、そんなに仲良くないよね?」


 う……。正直、第五の4人は、苦手かもしれない。

 席に着くと、ベヒーモスの話が始まった。


『牧先生は、ベヒーモスに拘りがあるのかな? 八雲さんは、ニーズヘッグだったけど……』


「そんでさ、ここに核があると思うのよ。そこで、内部から爆発させてさ」


 4人は、白けながら聞いている。

 僕は、興味ないけど知識として欲しい。とりあえず、聞く。


「無理だね……。不確定要素が多過ぎる。前提条件としてさ、ベヒーモスは、破壊された質量の、倍の質量を〈再生〉するってのが抜けているよ~」


「そう言わずにさ~」


「才羽とまゆっちで、試して来ればいいじゃん? 核が見えるかどうかだけでも、収穫になるっしょ?」


「それも一案だね~」


 それ……、僕だけベヒーモスの体内に入るってこと?

 計画しているけど、計画性がない発想だな。





 学校が終わった。

 とりあえず帰るか。


「……途中にスライム防衛隊の病棟が、あるんだよな」


 今は、ジャケットも持っている。

 学生証を見せてもいいだろう。


「怜奈さんがいたら、どんな仕事をしているのか、知りたいんだよな」


 僕は、スライム防衛隊の病棟に向かった。



「やっぱり、こうなっていたか……」


 遠目から怜奈さんを見つけた。

 スライム防衛隊員が、看護学校の生徒に言い寄っているよ。

 あれでは、仕事の邪魔だろうに。

 そんなに元気なら、退院して自宅療養しろと言いたい。


 怜奈さんは、荷運びを中心に行っているみたいだ。

 重労働だよね。


「才羽? なにしてんだ?」


 後ろを振り向く。

 車に乗った、牧先生だった。


「病棟が気になったので、見に来ただけですよ」


「こんな遠くから、見てたのか?」


 怜奈さんの方から、気がつかれたくないからね。


「それでは、帰ります」


「ふ~ん。小鳥遊さんが気になったと~」


 バレてら。

 まあいい。


「看護学校の生徒を応援として使っているみたいですけど、あれでは、邪魔していませんか?」


「まあ、そう言うな。スライム防衛隊員の最大の楽しみでもあるんだ。あの病棟は、独身者だけだしね」


 ため息しか出ないよ。

 その後、怜奈さんを他の病棟の応援にして欲しいと言うと、笑われた。

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