第43話 メタルの分裂実験
「水圧を高くして、暗闇にしても増えないね……」
普通のスライムであれば、一日で変化があり、三日で分裂するんだそうだ。
やっぱり、メタルは、普通じゃないんだな。
「メタルは体の一部を分離させられるんですけど、分離体は、三日で死滅してしまうんですよね」
「ふむ……。次は、その分離を分裂に持って行けないか、検証しようか。とりあえず、実験は中止にするね」
八雲さんは、頭の回転が速いな。
これが、変異スライムを摂取した人の本来の姿なのかもしれない。
八雲さんの指示で、メタルが解放された。
メタルは、水槽から出ると、僕のところに来てくれた。
「きゅう~~~~」
メタルは、不満があるようだな。
今日は、餌を多く与えようか。
その後、メタルの一部を分離して貰った。
それを、八雲さんに渡す。
「ふむ……。聞いたことがない状態だね」
そうなんだ? スライムは、分離しない?
体の一部を切り離すことはしないんだ……。覚えておこう。
メタルの特性の話を進めようか。
「それを触っている状態で、魔力を活性化させると、吸収されます。気を付けてください」
八雲さんが、調べ始めた。
その様子を観察する。
『研究者って感じだよな。様々な装置を使いこなしている』
「今日は、ここまでかな……。DNA解析は、数日待って欲しい」
とりあえず、聞いてみるか。
「八雲さんは、メタルを使わないのですか?」
「貴重なサンプルだし、使わないよ?」
再度、メタルが分離してくれた。
「何個でもとは言いませんが、数は出せますよ?」
八雲さんが、笑った。
◇
黛さんが、迎えに来てくれて、第五の教室に戻って来た。
まだ、下校時間じゃないから、これから授業だ。
「才羽ぁ~。コミュ力高すぎじゃないか~?」
突然言われた。
そうかな? 僕は、友達なんていなかったのに。
「スライム関係の話であれば、続けられますね。『覚醒者』同士なら、仲良くなれそうです」
「ふ~ん。うちらとは、そんなに仲良くないよね?」
う……。正直、第五の4人は、苦手かもしれない。
席に着くと、ベヒーモスの話が始まった。
『牧先生は、ベヒーモスに拘りがあるのかな? 八雲さんは、ニーズヘッグだったけど……』
「そんでさ、ここに核があると思うのよ。そこで、内部から爆発させてさ」
4人は、白けながら聞いている。
僕は、興味ないけど知識として欲しい。とりあえず、聞く。
「無理だね……。不確定要素が多過ぎる。前提条件としてさ、ベヒーモスは、破壊された質量の、倍の質量を〈再生〉するってのが抜けているよ~」
「そう言わずにさ~」
「才羽とまゆっちで、試して来ればいいじゃん? 核が見えるかどうかだけでも、収穫になるっしょ?」
「それも一案だね~」
それ……、僕だけベヒーモスの体内に入るってこと?
計画しているけど、計画性がない発想だな。
◇
学校が終わった。
とりあえず帰るか。
「……途中にスライム防衛隊の病棟が、あるんだよな」
今は、ジャケットも持っている。
学生証を見せてもいいだろう。
「怜奈さんがいたら、どんな仕事をしているのか、知りたいんだよな」
僕は、スライム防衛隊の病棟に向かった。
「やっぱり、こうなっていたか……」
遠目から怜奈さんを見つけた。
スライム防衛隊員が、看護学校の生徒に言い寄っているよ。
あれでは、仕事の邪魔だろうに。
そんなに元気なら、退院して自宅療養しろと言いたい。
怜奈さんは、荷運びを中心に行っているみたいだ。
重労働だよね。
「才羽? なにしてんだ?」
後ろを振り向く。
車に乗った、牧先生だった。
「病棟が気になったので、見に来ただけですよ」
「こんな遠くから、見てたのか?」
怜奈さんの方から、気がつかれたくないからね。
「それでは、帰ります」
「ふ~ん。小鳥遊さんが気になったと~」
バレてら。
まあいい。
「看護学校の生徒を応援として使っているみたいですけど、あれでは、邪魔していませんか?」
「まあ、そう言うな。スライム防衛隊員の最大の楽しみでもあるんだ。あの病棟は、独身者だけだしね」
ため息しか出ないよ。
その後、怜奈さんを他の病棟の応援にして欲しいと言うと、笑われた。
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