第39話 休日1

 一ヵ月ぶりに、通院だ。

 医者に体を見て貰う。


「うん……。状態は良さそうだね」


 メタルが、僕の血を吸うようになってから、疲労が軽減された。

 最近は、モンスター討伐も減ったのが大きいな。

 なんでも、『覚醒者』が見つかったのだとか。

 小学校低学年で、魔力で遊んでいたらしい。

 そして、将来有望との話だ。


「特に、薬の処方とかないけど、また一ヵ月後に来てください」


「分かりました」


 診察だけで終わった。

 怜奈さんは、少し不満なようだ。



 帰り道で聞いてみる。


「怜奈さん……。疲れていませんか?」


「まあ……、多少は」


 土日くらいは、休んで欲しいな。

 ファミレスで昼食を食べて、晩御飯はパック寿司をスーパーで買うことにした。


「今日くらいは、怜奈さんが休んでください」


「気遣いは、無用ですよ? 慣れるまでの辛抱ですし。他にもバイトしている人だっているのですから」


 まあ、そうなるのかな?

 でも、疲労が見て取れる。看護学校と家事以外にも、なにかしているんだろうか……。





 牧先生に相談してみる。


「怜奈さんが、疲れている理由を知りたいと?」


「はい。看護学校って重労働でも行っているのですか?」


 スマホで通話しているけど、後ろが騒がしいな。牧先生は、何処にいるんだ?

 そう思ったら、空間が歪んだ。


「こんにちは、黛さん」


「才羽、とっとと来い」


 空間に踏み込む。



「何処ですか、ここ?」


「スライム防衛隊の後方基地……。病棟」


 何処の野戦病棟ですか? ――そう言いたくなるくらいの惨状だった。

 廊下に、患者が寝かされているし。


「なにが、起きていますか?」


「最近と言うか、この一ヵ月さ、第五はモンスターが頻発してたじゃん? 才羽は、第六にいたので余り関わらなかったけど」


 確かに、第六の発生数が普通であれば、第五は頻発していたと言えるな。

 『覚醒者』を見つけて、発生が収まったらしいけど。


 僕は、変異種だけだったけど、普通のモンスターも頻発してたんだな。

 それで、スライム防衛隊は、この有様か……。


「近代兵器を使っているとはいえ、あんな恐竜みたいなのを相手にするとね。大型が頻発すると、怪我人多数なんだよ」


 話を聞くと、ミサイルを使うと街が壊れるので、バリスタを使っているのだとか。火薬を使った床弩しょうどだな。


「街を壊さないように、戦うのも限界じゃないですか?」


「武器の開発中なんだとさ」


 ここで、声をかけられた。


「牧先生、そろそろ治療の再開をお願いします」


 牧先生は、呼ばれて行ってしまった。

 僕は、黛さんと残される。


「なにが言いたいか、分かる?」


「手伝っている看護師さんが、若いですよね……。見習い?」


「そそ。座学を簡単にまとめて、手伝って貰ってる。注射とかは、任せられないけどさ。雑用は、山ほどある」


 ……ここに怜奈さんも駆り出されているんだな。


「黛さんは、休んでいますか? 牧先生も……」


「休日は……、ない。毎日、スマホが鳴る」


 そうなるのか……。

 街の裏側だと、こんな状況にもなっていたんだな。


「才羽には、助けられた。第五まで管轄にされると、流石に倒れそうだった」


「少しでも手伝えたのなら、嬉しいです」



 その後、牧先生の治療を見学させて貰う。

 手を当てるだけで、出血が止まったりしている。

 詳細は分からないけど、怪我を〈回復〉させているみたいだ。


「きゅっ!」


 メタルが、僕の意思を汲み取って、体の一部を分離してくれた。

 スライム防衛隊員は、メタルを見ても慌てないんだな。


「才羽。まず、消毒。ここは、病院」


 ああ、そうでした。アルコールで、メタルを拭く。そして、牧先生に触れて貰った。

 牧先生が、分離したメタルに触れると、吸収されるように消える。


「ふむ……。なるほどね。才羽、助かるよ」


 牧先生は、感覚で理解してくれたか。

 まあ、僕の第六での活動は、見られていたと思おう。

 その後、治療のスピードが上がったのを感じた。

 それはいいんだけど……。


「牧先生は……、人気なんですね」


 軽症の防衛隊員が、輪になっている。すっごい、邪魔だよね。軽傷……なのかな?


「私たちに手を出すと、犯罪。牧は……、昔から人気ある。それとここには、綺麗な看護師も多いし。この病棟は、スライム防衛隊員には、大人気」


 もしかして、ここは社交場になっている?

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