第38話 五大モンスター
一ヵ月くらい第六研究所の
だけど……、勘違いしている可能性がある。
もう少し検証を重ねたかったけど、時間切れだった。
「やあ、皆待たせたね」
王寺さんが戻って来たんだ。
皆の冷ややかな視線が、とても怖い。
そうすると、黛さんが来た。
「才羽、出張終わり」
「え~! こっちの人になってよ」
「王寺とトレード!」
「まゆっち! 後生だよ!」
「離れられない!」
「渡せないよ~!」
全員が、僕に抱き着いて来た。
黛さんの、冷たい視線が僕を襲う……。
「ちっ…………。才羽、帰るよ」
声のトーンが低くて、すっごい怖いです。
「……はい」
全員を振り解いて、黛さんの空間に踏み込んだ。
「なにかあったのかな?」
王寺さんの、むなしい疑問が最後の言葉になったな。
◇
「もう、才羽を第六に送るのは、止めた方がいいね。本当に取られそう」
「魅了でもしてたの? 随分と好かれていたけど?」
皆見てたの? 教室間の映像が、繋がっている?
「能力の底上げが出来るのであれば、好かれもしますよ。数匹ですけど、第六のメンバーだけでモンスターを倒せましたしね」
連携が決まれば、彼女たちだけでも倒せた。
力を得られたらと、考えてはいたんだろうな。
それと、メタルの分身は、3日ほどで朽ちてしまった。ドーピング剤になるかなと思ったけど、生きられないみたいだ。
こうなると、メタルを分裂させて数を増やした方がいいかもしれない。
「そんで、才羽自身はなにしていたの?」
ちょっと、検証結果を見せておくか。
「きゅっ!」
メタルが、体の一部を分離させてくれた。それを掌に乗せて見せる。
「『覚醒者』がこれに触れると、能力の底上げになります。黛さんは、経験していますよね?」
「うん。それは、知っている」
「それと、これをモンスターに触れさせると、魔力を〈無効化〉できます。実際は、魔力の流れを〈混乱〉させるみたいですけど、まあ、似た意味ですね」
直接触れなくても良くなった。
投げて、モンスターに当てるだけでも、モンスターの魔力を止められるのは大きい。前に、石に魔力を纏わせて投げたけど、10分間は続かないと思う。
今僕は、スリングショットを常備している。ゴムの力で撃ち出す武器だ。
「才羽は、いい人材だね。第六も刺激を受けてやる気になっている。嬉しいよ」
牧先生が纏めてくれた。
だけど、4人は不満なようだ。
◇
「才羽が来たからさ、五大
「……」
いきなりだな。席に着いたら、牧先生が突然言い出した。
「「「「「行かない」」」」」
ですよね~。
現在の日本には、数年間討伐できていないモンスターがいる。
日本を困らせているモンスターだ。
埋立地に居座っていたり、上空を飛び回っていたりしている。有害物質で、近寄れない地域まである。
結局のところ、日本はそのモンスターを迂回することで安全を確保している。
「第五メンバーで、一番相性がいいと思うのが、東京湾のベヒーモスだと思うんだよね」
日本にいるモンスターなのに、西洋の怪物の名前をつけるのもどうかと思うんだけど。
巨大なら、ダイダラボッチとか、つければいいのに。xxxスライムは、著作権に引っかかりそうだけど。
それにしても、あれか……。ごみの埋め立て地に居座ったモンスター。巨大化を続けているんだけど、排泄物の回収も大量なので、日本の重要な収入源にもなっている。
問題点としては、東京湾が使えなくなったことだ。
羽田空港も閉鎖に追い込まれている。
そして、他国がスライムの研究を手放す理由になった、モンスターの一体だ。
「討伐すると、エネルギー問題が起きませんか?」
僕がそう言うと、全員の視線が集まった。
「エネルギー源となる排泄物は、十年分くらいは山積みにされているんだよ? それに二酸化炭素を出すからさ、世界的には推奨されていないんだ。それと、東京湾の沿岸部分の形を変えるほど、排泄物があるんだよ」
そうなんだ?
先人たちは、どんだけ廃棄プラスチックの扱いに困っていたんだろう。
スライムが発見される前の世界……。想像がつかないな。
「黛がさ、5人をベヒーモスの体内に〈転移〉させてさ、4人で内部から核を探してさ……」
怖い発想だな~。それで勝算あるの?
黛さんを見ると、寝ていた……。
「頼むよ~。私の評価に繋がるんだからさ~。五人集まれば、文殊の知恵ってさ~。才羽も加えれば、もう無敵じゃん!」
「それが本音ですか!」
「鬼畜教師! 生徒を何だと思ってるんだ!」
「サイテー……」
「……帰って、寝る」
「おいおい、言葉が汚いぞ~。才羽が引いているぞ~」
黛さんは、起きていたか。
無言だったのは、一回でも試したことがあるんだろうな。
「僕は……、行きたくありませんね。反対です。五大
「情報統制は、完璧なんだよ? もしかして、倒せる自信がある?」
情報もないのに、自信などあるわけない。
「……自信はありません。僕は、街の防衛を優先したいだけです」
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