第35話 メタルの変化

 自室に戻る。


「きゅきゅきゅ!」


「なんだ?」


 水槽を見ると、メタルが這い出だそうとしていた。水槽が、倒れそうなんだけど?

 慌てて、水槽を抑える。


「メタルが動き出したのか? 突然?」


 そう思ったら、僕の腕に絡みついて来た。

 水槽から手を離す。金魚は無事だ。


「きゅぅ~るる~♪」


 僕に何かを伝えたいみたいだけど、分からない。

 次の瞬間に噛まれた?

 血を吸われている?


 だけど……、吸血はすぐに終わった。

 そして、腕の一部が、メタルと一体化していた。


「不味くね?」


 これ最悪、左手切断とかだぞ?

 そう思ったんだけど、メタルから魔力が送られて来た……。


「分かる……。ポイズンの核を補強してくれているみたいだ」


 その後、体のだるさが緩和された。

 そして、メタルが僕から離れた。

 壁を登って水槽に戻ろうとしている。そのメタルを捕まえて、膝の上に乗せた。


「きゅぅ~?」


「メタルは、僕の病状を緩和してくれたのか?」


 メタルを捕まえて、抱きしめる。


「水分はさ、僕の体から摂っていいから、一緒に行動しないか?」


「きゅぅ~」


 意思疎通が出来るみたいだ。僕の言葉を理解してくれている。僕は、メタルの言葉が分からないけどね。

 YESっぽいよな。その後、胴体に巻き付いた。ベルトみたいに擬態してくれる。

 メタルは、もしかすると僕の持病を緩和してくれるかもしれない。

 餌付けだけで、ここまで協力的になるのかな?


「国の研究が、何処まで進んでいるかだよな」


 このメタルの存在は、話さないほうがいいよね。





 朝、地江利ジェリー高校に行くと、黛さん空間の歪みゲートみたいなのが、教室にあった。


「才羽、今日も第六研究所近くの学校」


「はい」



 空間の歪みを通ると、昨日の教室に出た。


「おはようございます」


「「「「「おはよう」」」」」


 なんか、眩しいな。瑞々しさを感じる。

 元のクラスメイトには、言えないけどね。


「この高校の名前は、なんて言うんですか?」


「うん? 地江利ジェリー高校だよ?」


「正式名称は、第六地江利ジェリー高校なんだよ。才羽君がいたところが、第五ね」


 そうなんだ……。


「それよりもさ、気になるんだけど……」


 僕のベルトに視線が集まる。


「……バレますかね?」


「う~ん。『覚醒者』だとね。スライムの気配には、敏感になるんだよ」


 僕も夜の公園で、スライムを見つけたことがある。そうなるか。

 メタルの擬態を解いて、掌の上で丸くさせる。


「ふ~ん。命令できるんだ?」


 驚かないんだな。

 知られている現象なんだろうか?


「簡単な意思疎通はできますね。賢い犬くらいの知能はありそうです」


「きゅぅ~」


「へぇ~。珍しい個体ですね」



 話していると、千本木先生が来た。


「おはよう。……それ、どうしたの?」


 秘密にするはずが、一日でバレてしまったか。

 詳細を話す。


「ふむ……。才羽君は、体調が優れない日があると。その――メタルが傍にいると、薬になるかもしれない?」


「まだ、検証段階なのですが、数日くらいは許可して貰えないでしょうか? 水分を定期的に与えれば、死亡しません。僕の傍にいれば、動物に食べられる心配もないでしょうし」


「ふむ……。まあいいと思うよ。色付きのスライムは、普通の人が摂取してもなにも変化がないからね。適正がないと、無価値なんだ。正確には、モンスターの核があるかどうかなんだけど」


 そうなんだ?


「昔さ、スライム防衛隊の食事に、銀色のスライムを混ぜたことがあってね。ちょっと騒ぎになったんだよ」


 それ……、怖いな。

 暴動が起きなかったの?


「結果、どうなりました?」


「『覚醒者』は、現れなかったね~。ちなみに牧先生の発案ね」


 う……。学校での食事には気をつけよう。

 毎日、お弁当だからいいけど。

 学食は……、危ないかもしれない。


 ここで、隣の百地さんが、メタルに触れた。

 つんつんと突く。


 ――プルプル


「可愛いね。意思疎通出来るスライムの使役か~」


 ここで、気がつく。


「あれ? 指が光っていませんか?」

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