第35話 メタルの変化
自室に戻る。
「きゅきゅきゅ!」
「なんだ?」
水槽を見ると、メタルが這い出だそうとしていた。水槽が、倒れそうなんだけど?
慌てて、水槽を抑える。
「メタルが動き出したのか? 突然?」
そう思ったら、僕の腕に絡みついて来た。
水槽から手を離す。金魚は無事だ。
「きゅぅ~るる~♪」
僕に何かを伝えたいみたいだけど、分からない。
次の瞬間に噛まれた?
血を吸われている?
だけど……、吸血はすぐに終わった。
そして、腕の一部が、メタルと一体化していた。
「不味くね?」
これ最悪、左手切断とかだぞ?
そう思ったんだけど、メタルから魔力が送られて来た……。
「分かる……。ポイズンの核を補強してくれているみたいだ」
その後、体のだるさが緩和された。
そして、メタルが僕から離れた。
壁を登って水槽に戻ろうとしている。そのメタルを捕まえて、膝の上に乗せた。
「きゅぅ~?」
「メタルは、僕の病状を緩和してくれたのか?」
メタルを捕まえて、抱きしめる。
「水分はさ、僕の体から摂っていいから、一緒に行動しないか?」
「きゅぅ~」
意思疎通が出来るみたいだ。僕の言葉を理解してくれている。僕は、メタルの言葉が分からないけどね。
YESっぽいよな。その後、胴体に巻き付いた。ベルトみたいに擬態してくれる。
メタルは、もしかすると僕の持病を緩和してくれるかもしれない。
餌付けだけで、ここまで協力的になるのかな?
「国の研究が、何処まで進んでいるかだよな」
このメタルの存在は、話さないほうがいいよね。
◇
朝、
「才羽、今日も第六研究所近くの学校」
「はい」
空間の歪みを通ると、昨日の教室に出た。
「おはようございます」
「「「「「おはよう」」」」」
なんか、眩しいな。瑞々しさを感じる。
元のクラスメイトには、言えないけどね。
「この高校の名前は、なんて言うんですか?」
「うん?
「正式名称は、第六
そうなんだ……。
「それよりもさ、気になるんだけど……」
僕のベルトに視線が集まる。
「……バレますかね?」
「う~ん。『覚醒者』だとね。スライムの気配には、敏感になるんだよ」
僕も夜の公園で、スライムを見つけたことがある。そうなるか。
メタルの擬態を解いて、掌の上で丸くさせる。
「ふ~ん。命令できるんだ?」
驚かないんだな。
知られている現象なんだろうか?
「簡単な意思疎通はできますね。賢い犬くらいの知能はありそうです」
「きゅぅ~」
「へぇ~。珍しい個体ですね」
話していると、千本木先生が来た。
「おはよう。……それ、どうしたの?」
秘密にするはずが、一日でバレてしまったか。
詳細を話す。
「ふむ……。才羽君は、体調が優れない日があると。その――メタルが傍にいると、薬になるかもしれない?」
「まだ、検証段階なのですが、数日くらいは許可して貰えないでしょうか? 水分を定期的に与えれば、死亡しません。僕の傍にいれば、動物に食べられる心配もないでしょうし」
「ふむ……。まあいいと思うよ。色付きのスライムは、普通の人が摂取してもなにも変化がないからね。適正がないと、無価値なんだ。正確には、モンスターの核があるかどうかなんだけど」
そうなんだ?
「昔さ、スライム防衛隊の食事に、銀色のスライムを混ぜたことがあってね。ちょっと騒ぎになったんだよ」
それ……、怖いな。
暴動が起きなかったの?
「結果、どうなりました?」
「『覚醒者』は、現れなかったね~。ちなみに牧先生の発案ね」
う……。学校での食事には気をつけよう。
毎日、お弁当だからいいけど。
学食は……、危ないかもしれない。
ここで、隣の百地さんが、メタルに触れた。
つんつんと突く。
――プルプル
「可愛いね。意思疎通出来るスライムの使役か~」
ここで、気がつく。
「あれ? 指が光っていませんか?」
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