第33話 他の研究所が危機みたいです3
「えーと、独りでモンスターに挑んでいた人は、どうなりました?」
一応、聞いてみる。
「王寺か~。牧先生次第なんじゃない?」
「全身打撲だったよ。骨折とか、体の損傷は回復したんだけど、
「嫌です! 二度とゴメンです」
楓さんが、プイッと横を向いた。
「いいじゃん。ちょっとその巨乳を揉ませてやれば」
「セクハラ」
「最低」
「自分のがあるでしょ」
「……どうせ貧乳だよ」
『覚醒者』も、一枚岩じゃないんだな。
「そうするとさ~。第六研究所の『戦える覚醒者』がいなくなっちゃうんだよ~」
「自分の評価のために、生徒を売るんですか?」
「〈洗脳〉は、昔失敗してさ~。人格変わっちゃうんだよね」
なんだろう? この交渉は? 真面目な話なんだろうけど、その対価が問題だよな。
つうか、王寺さんは、楓さんの胸で立ち上がれるのか?
「う~ん。そうなると、第六研究所のスライム関連事業が継続出来なくなるんだよな~」
それ……、億単位の損失じゃない?
「……一人、出向く。出張。昔、私がしてた」
そうなるか……。僕は、無理かな? 親にバレてしまう。そう思ったんだけど。
「楓か才羽だね~。黛が、毎日送り迎えする感じかな~」
僕も候補に入るの?
次の瞬間に、空間が歪んだ。
「才羽……、逝って来て」
強制ですか?
◇
とりあえず、僕に拒否権はなかった。
空間を通ると、また教室に出た?
そして……。
「良く来てくれました~。え~と、才羽君だね」
そこには、5人の生徒と教師がいた。
聞いていたの?
「とりあえず、座って。席は、今日は王寺の席ね」
教師に、指定された席に座る。
「え~と、皆さん『覚醒者』? 変異スライムを摂取しているんですよね?」
「そうなるんだけど、楓とかと比べないでね。空飛んだりとかは、できないから。討伐には加われないレベルの才能しかないんだ」
隣の女子生徒から教えて貰った。
詳細を聞くと、魔法のレベルアップは、相当な時間をかけないと無理なんだとか。初期にどれだけの奇跡を起こせるかで、待遇が変わるらしい。この教室は、王寺さん以外は、二軍だと言っている。
それと、国は魔力の測定方法が出来次第、ランク付けする予定だとも聞いた。
まあ、物質以外の測定なんてそう簡単に出来ないよね……。
「僕は経験が浅いので、独りでのモンスター討伐は無理ですよ?」
「それでさ、さっきの戦闘だよ。炎と風の威力を底上げしただろう? 私たちも、試してみたいんだ」
この教師は、まともだな……。
名前は、千本木先生だそうだ。この教室の教師も女性なんだな。
「地下に訓練場があるんですか……」
「人目に晒せないからね」
一緒に来てくれた、クラスメイト。高校一年から三年まで、同じ教室なんだとか。世間は、どう思っているのかな?
「え~と、
「「「「「よろしく」」」」」
全員女子だ。
その後、
「光る」
「水を生み出す」
「温度を変えられる」
「身体能力強化」
「摩擦力のコントロール」
僕の魔力と組み合わせると、効果が上がるのを確認した。
〈崩壊〉の方だな。銀色の魔力は、他人の力を底上げするみたいだ。これは、新発見だ。
モンスターに対しては、〈無効化〉になって、人間の魔力だと底上げ――〈強化〉になるのかな?
後は、応用を考えればいい。
まあ、LED電球くらいの光が、直視できないくらいの光量になるとかだったけど。
彼女たちは、このままではモンスター討伐には出せないな……。だけど、考え方次第かもしれない。
5人を組み合わせれば……。
◇
時間になると、黛さんが迎えに来た。
もう少し検証したかったけど、明日にしよう。
こうして、一日目が終わった。
家に着くと、怜奈さんが待っていた。今日は、僕の方が遅くなったか。
「お帰りなさい」
「ただいま戻りました」
汚れた服を渡すと、受け取ってくれた。制服のクリーニングは、学校が請け負ってくれている。
「何かあったのですか?」
「ちょっと、汚してしまいまして……」
怜奈さんは、何も言わずに受け取ってくれた。
その後、夕食を食べる。
「美味しいです」
――ポタ
ここで、何かが落ちた。
テーブルを見る。血だ。
鼻を抑える。
「鼻血が出たか……」
無理がたたったのか、疲れたのか……。他の要因か……。
「相馬さん?」
怜奈さんが、ハンカチで拭いてくれる。
その後、横になった。
膝枕を要求したいけど、座布団の枕だったな。
「……明日、病院に行きましょう。最近は、定期健診も受けていませんし」
そう言えば、明日は土曜日だった。
牧先生に、今日中に連絡を入れておけば、緊急の呼び出しもないだろう。
「分かりました。お願いします」
その日は、ソファーで寝かされた。
怜奈さんは、テーブルで仮眠をとってくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます