第30話 怜奈さんを説得しようと思います3

 その後、一時間待ったけどモンスターの発生の気配はなかった。

 何かの装置で確認していたので、大丈夫だと思う。

 僕たちは、学校に向かった。


「もう昼前だけど、授業を始めるぞ~」


 頭痛い。僕の高校生活は、この繰り返しですか?

 一年間我慢して、転校してもいいかもしれない。

 隔離されるみたいだけど、僕の能力スキルは実生活で使い道ないし。



 その後、今日のモンスター駆除のレポートを書いて終わりになった。

 帰路は、バスにした。


「帰りだと、座れるんだな」


 朝とは人の数が違う。

 混むこともなかったので、席を譲る必要もなかった。

 それでも、他校の生徒に見られるのは変わらない。他人の視線は、苦手だな。

 僕は、窓の景色を眺めた。





 家について、テラスで待っていると怜奈さんが帰って来た。


「おかえりなさい」


「ただいま戻りました。急いで、夕食の準備をしますね」


 そのまま、夕食を作り始める、怜奈さん。

 夕食は、唐揚げだった。

 今朝のうちに準備していたんだな。


「……美味しいですね。唐揚げってこんなが味するんだ」


 僕は、脂分を極力避けていた。

 久々なのか、初めてなのか……。そんな味だ。


「本当に元気になったんですね……。でも、スライムの力……、なんですよね」


 怜奈さんが、嬉しそうで、悲しそうな表情をする。



「ごちそうさまでした」


「お粗末さまでした。それと、昨日は洗い物ありがとうございました」


 怜奈さんが、頭を下げる。


「いえ、勝手に触れてすいませんでした」


 僕も頭を下げる。


「それで……、今日来た人たちは……」


 僕は、詳細を話した。

 彼女たちは、数年前から行動していて、雨会婆アメーバ島にも行ったこと。

 今日も、モンスターの討伐を行ったこと。

 そして……、僕が協力しないと倒せないモンスターがいること。

 厳密には、倒せるんだろうけど、時間とコストが段違いなんだろうな。


 怜奈さんは、静かに聞いてくれた。


「分かりました。続けるのですね?」


「はい、少なくとも3年間は……」


「私のため――ですか?」


「自分のためでもあります」


 自己満足なのは、理解している。

 怜奈さんが、立ち上がった。

 移動して、後ろから僕の頭を抱きしめてくれる。


「私のこと、好きと言ってくれた言葉に変わりはありませんか?」


「ありません」


「私も、相馬さんのことを利用しますよ?」


「……嬉しいです」





 自分の部屋に戻って来た。

 正直に話したので、怜奈さんの態度も変わったんだと思う。

 それと、クラスメイトの4人だな。

 危険な仕事だけど、仲間もいる。牧先生は、説得の方法を理解しているんだな。


 スマホのニュースを見る。


「今日も、スライム競売か……。一ヵ月に一度、十人だけって。政府も出し惜しみし過ぎだよな。養殖はできてんだから、裏でどれだけ取引きされているのやら」


 実際のところ、日本の功労者に配られているらしい。

 まあ、それは理解できる。

 それと……。


「こないだ、僕が倒したモンスターだよな? 肉がキロ百万円?」


 モンスターの肉は、人気があるんだな。

 窓から外を見る。

 光っている場所がある。また、モンスターが発生したのか。

 緊急用のスマホを見るけど鳴らないな。


「あのモンスターは、スライム防衛隊だけで大丈夫みたいだな」


 今日は、再度の呼び出しはないみたいだ。

 他にすること……。

 金魚に餌をあげる。まだまだ元気だ。

 金魚の寿命は分からないけど、数年は生きて欲しいな。

 メタルにも、ペットボトルをあげる。


「メタルは、餌の時だけ動くんだよな」


 4人に家探しされたけど、メタルは見つからなかった。それくらい、擬態が上手い。

 石に見えるんだと思う。もしくは、水槽のディスプレイかな?

 彼女たちは、メタルを知っているはずだけど、擬態だけで見つからなかったんだ。こいつも、変異種の可能性がある。メタルの数は、多い可能性もあるな。4人は知っていたんだし。


「こいつも知られると、問題だよな。ギフテッドが量産されてしまう」


 でも、適性のない人には、無意味なのかもしれない。

 スライム防衛隊は、優秀なんだろうけど、肉体労働なんだろうし。日本の学力が、極端に上がったとは聞いていないことから、メタルは人を選ぶんだと思う。

 こうなると、メタルも謎だらけだな。



 僕は、風呂に入ってから布団に横になった。

 今日は……、疲れたな。


 クラスメイトを家にあげる。

 驚いてしまって、お茶を出したけど、あの場合は、僕の飲んでいる経口補水液でもいいのかもしれない。


「それと、何処まで本気だったのか……」


 命がけの仕事なんだ。

 そこに、異性が入って来たら、期待もしているんだろうな。

 同じ『覚醒者』仲間。


「……充実感は、あるかな」

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