第30話 怜奈さんを説得しようと思います3
その後、一時間待ったけどモンスターの発生の気配はなかった。
何かの装置で確認していたので、大丈夫だと思う。
僕たちは、学校に向かった。
「もう昼前だけど、授業を始めるぞ~」
頭痛い。僕の高校生活は、この繰り返しですか?
一年間我慢して、転校してもいいかもしれない。
隔離されるみたいだけど、僕の
その後、今日のモンスター駆除のレポートを書いて終わりになった。
帰路は、バスにした。
「帰りだと、座れるんだな」
朝とは人の数が違う。
混むこともなかったので、席を譲る必要もなかった。
それでも、他校の生徒に見られるのは変わらない。他人の視線は、苦手だな。
僕は、窓の景色を眺めた。
◇
家について、テラスで待っていると怜奈さんが帰って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま戻りました。急いで、夕食の準備をしますね」
そのまま、夕食を作り始める、怜奈さん。
夕食は、唐揚げだった。
今朝のうちに準備していたんだな。
「……美味しいですね。唐揚げってこんなが味するんだ」
僕は、脂分を極力避けていた。
久々なのか、初めてなのか……。そんな味だ。
「本当に元気になったんですね……。でも、スライムの力……、なんですよね」
怜奈さんが、嬉しそうで、悲しそうな表情をする。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした。それと、昨日は洗い物ありがとうございました」
怜奈さんが、頭を下げる。
「いえ、勝手に触れてすいませんでした」
僕も頭を下げる。
「それで……、今日来た人たちは……」
僕は、詳細を話した。
彼女たちは、数年前から行動していて、
今日も、モンスターの討伐を行ったこと。
そして……、僕が協力しないと倒せないモンスターがいること。
厳密には、倒せるんだろうけど、時間とコストが段違いなんだろうな。
怜奈さんは、静かに聞いてくれた。
「分かりました。続けるのですね?」
「はい、少なくとも3年間は……」
「私のため――ですか?」
「自分のためでもあります」
自己満足なのは、理解している。
怜奈さんが、立ち上がった。
移動して、後ろから僕の頭を抱きしめてくれる。
「私のこと、好きと言ってくれた言葉に変わりはありませんか?」
「ありません」
「私も、相馬さんのことを利用しますよ?」
「……嬉しいです」
◇
自分の部屋に戻って来た。
正直に話したので、怜奈さんの態度も変わったんだと思う。
それと、クラスメイトの4人だな。
危険な仕事だけど、仲間もいる。牧先生は、説得の方法を理解しているんだな。
スマホのニュースを見る。
「今日も、スライム競売か……。一ヵ月に一度、十人だけって。政府も出し惜しみし過ぎだよな。養殖はできてんだから、裏でどれだけ取引きされているのやら」
実際のところ、日本の功労者に配られているらしい。
まあ、それは理解できる。
それと……。
「こないだ、僕が倒したモンスターだよな? 肉がキロ百万円?」
モンスターの肉は、人気があるんだな。
窓から外を見る。
光っている場所がある。また、モンスターが発生したのか。
緊急用のスマホを見るけど鳴らないな。
「あのモンスターは、スライム防衛隊だけで大丈夫みたいだな」
今日は、再度の呼び出しはないみたいだ。
他にすること……。
金魚に餌をあげる。まだまだ元気だ。
金魚の寿命は分からないけど、数年は生きて欲しいな。
メタルにも、ペットボトルをあげる。
「メタルは、餌の時だけ動くんだよな」
4人に家探しされたけど、メタルは見つからなかった。それくらい、擬態が上手い。
石に見えるんだと思う。もしくは、水槽のディスプレイかな?
彼女たちは、メタルを知っているはずだけど、擬態だけで見つからなかったんだ。こいつも、変異種の可能性がある。メタルの数は、多い可能性もあるな。4人は知っていたんだし。
「こいつも知られると、問題だよな。ギフテッドが量産されてしまう」
でも、適性のない人には、無意味なのかもしれない。
スライム防衛隊は、優秀なんだろうけど、肉体労働なんだろうし。日本の学力が、極端に上がったとは聞いていないことから、メタルは人を選ぶんだと思う。
こうなると、メタルも謎だらけだな。
僕は、風呂に入ってから布団に横になった。
今日は……、疲れたな。
クラスメイトを家にあげる。
驚いてしまって、お茶を出したけど、あの場合は、僕の飲んでいる経口補水液でもいいのかもしれない。
「それと、何処まで本気だったのか……」
命がけの仕事なんだ。
そこに、異性が入って来たら、期待もしているんだろうな。
同じ『覚醒者』仲間。
「……充実感は、あるかな」
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