第26話 能力を確認することになりました2

 外履きに履き替える。今日は持って来ていた。

 外に出てみると、人の姿は見えなかった。本当に何処だろう……。


「そんじゃ、今日は楓ね。いっちょ揉んでやって」


 組み手の相手は、楓さんか。大きな胸が揺れる。これで、全員の能力スキルを確認出来ることになる。牧先生は……、後でもいいか。


「準備はいい?」


 準備と言われてもな……。一応足のストレッチをした。

 体中の関節を動かす。


「大丈夫です」


 僕がそう言うと、楓さんの魔力が膨れ上がった。

 そして……。


「まず、弾丸からね」


 周囲の石が浮かび上がった?

 それが……、消えた。

 僕は反射で、右手の魔力を体の正面に展開した。魔法陣みたいなのが、浮かび上がる。その魔法陣の範囲の空気を〈固定〉した。


 ――ガンガンガンガン……


 小石が、紫の魔力で止まるか、弾かれる。


「ふ~ん。勘のいい奴だな。ほとんどの奴は、楓の弾丸を受けると蜂の巣なのに」

「そんで、心を折るんだよね~。初見殺しだよね~」

「……まだ、全然本気じゃない」

「怪我しても治してやるぞ~。全力で行け~」


 危ない……。秒殺されるとこだった。石を目に見えない速度で射出するのか? 弾丸みたいだったんだけど? 射出のエネルギーってどうやって作っているんだ?

 それが、楓さんの能力スキル

 正面からだったので、反射で反応できただけだ。


「次行くよ~」


 大規模魔法だった。

 土砂を大量に巻き上げている。

 しかも操作しているし。

 土砂を大量に含んだ、竜巻みたいなのが襲って来る。あれは、不味い。巻き込まれたら、体中に穴が空いて、上空に飛ばされそうだ。


「あれをやられると、街が壊れるんだよな~」

「まだ、セーブしてる方じゃん?」

「……終わり」


 土使い? 土魔法? 少なくとも、風魔法じゃない。茜さんとは、明らかに違う。

 何トンの土砂を操っているのかも分からない。少なくとも、魔力操作では、僕の数段上って感じだ。

 僕は、紫色と銀色の魔力を展開した。

 そして、全力で逃げる!


 数トンの土砂が襲って来る。竜巻というか、イカとかタコの足みたいな形をしたのが一本だ。

 その土砂に僕の魔力を当てるけど、止められない。死角から来られると、両手では防ぎきれない。範囲が広すぎる。

 とりあえず、移動しながら躱して行く。


 ――ドン、ダン、ガン……


 躱しきれない、石礫が体に当たる。だけど、怪我にはなっていない。威力は、さほどでもない?


「このままだと、ジリ貧だな」


 新しい発想が必要だ。

 躱す、躱す、躱す……。

 手加減されているのが、分かる。スピードがない。複数方向からも来ないし。


 ここで、地面が滑ることが分かった。

 土砂が、堆積されている場所だと、僕の脚力では穴を掘ってしまい、足を取られる。

 これも、予定された戦術なんだろうな。

 対応策が思いつかなかった、僕の時間切れ負けだな。


 バランスを崩して、動きの悪くなった僕に、大量の土砂が襲いかかって来る……。


「ぐっ……」


 僕は……、全身に魔力を纏った。

 これならば、死角から来られても、防ぐことが出来る。

 その後……、僕は土砂に埋まった。


 静かになった。

 魔力を放出して、土砂から抜け出る。

 だけど、その瞬間を狙われた。

 石の狙撃が来る。


「まあ、予想していたけどね」


 ――ガン


 その弾丸は、纏った僕の魔力で弾かれる……。


「そこまで! 楓の勝利ね」


 牧先生のストップで組手が終わった。



「ふう~」


 いきなり、こんな組手は望んでいなかった。


「……初見での楓との組み手を、無傷で終えた奴っていたっけ?」

「……私」

「茜と焔は、散々だったからね~」

「凄いな~。制服に穴すら空いてないよ」


 数分間の組手だったけど、死線を潜り抜けたようだ。

 いや、マジで死にそうだったけどね。魔力がなかったら、穴だらけか平らになっていた。

 それと、次は体操服で組手しよう。汗が酷い。


「これなら、即戦力だね。昨日の茜の話も納得できるよ。何処で、魔力の制御方法を学んだんだか」


 魔力の制御って、学べるんだ?

 それを授業にして欲しいな。


「学んでませんって。独学になるのかな?」


「ふ~ん? 才能なのかな? 伸びしろに期待だね」


「魔力制御だけは、一人前……。能力スキルは分からない。防御ばっかりだったし。それと、男子だから体力がある。羨ましい」


 合格を頂いたけど、朝っぱらから、疲れたよ。

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