第25話 能力を確認することになりました1

 後始末は、スライム防衛隊に任せて、僕は帰宅することになった。

 茜さんと牧先生は、まだやることがあるんだそうだ。

 僕もその内、教えて貰おう。

 スライム防衛隊の車両で、家まで送って貰った。


「ありがとうございました」


「お礼を言うのは、こちらですよ。今後もよろしくお願いします」


 防衛隊の人と挨拶をする。

 車を見送った後、家に入った。家は、静かだ。怜奈さんは、寝ているのかな。

 僕は意を決して、怜奈さんの部屋の前まで移動した。


『だけど……、何て言うんだ?』


 僕は、暫く考えて、ドアをノックした。


 ――コンコン


「怜奈さん……。帰って来ました。怪我はしていません。これから、こんな日が度々あるかもしれませんが、必ず帰って来ます」


「…………」


 返事はなかった。

 もう夜も遅い。僕は、シャワーを浴びてすぐに寝ることにした。





 朝になって、いつも通りリビングへ。

 怜奈さんは、朝食を作ってくれていた。


「おはようございます」


「……おはようございます」


 気まずい朝食だな。怜奈さんが怒っているのが分かる。

 無言で食べる。

 食器をかたずけて貰い、登校の準備だ。


「行って来ます」


「相馬さん……。行ってらっしゃい」


「はい……。それと、庭にスライムが現れるかもしれません。放置でお願いします。見つけた場合は、連絡を入れてください。最低でも触れないでください」


 再度の注意だ。

 怜奈さんが不思議そうな顔をする。


「……分かりました」


 そのまま、マウンテンバイクを漕ぐ。


「スライムが、怜奈さんに魅かれている可能性を、まだ否定できないんだよな……」



 商店街に出て、大通りを進む。今日もロードバイクに抜かれた。平地だと本当に速いな。同じ乗り物だとは思えない。

 相手にはしない。無意味だ。トップスピードを競う意味もないし。

 なにより、危ない。


『そう言えば、同じ学校の生徒なんだな……』


 僕は、二日目で相手の顔を見たんだな。「ロードバイクに乗った人」としか認識していなかった。

 でも上り坂で追い付いて抜いてしまう。


『スプリンターとクライマーだったかな……。僕は、クライマーみたいだ』


 僕はスピードより、ストレングスの値が、高い気がする。

 まあ、スライムを摂取した時点で、もう身体能力のテストは受けられない。どんな記録になるかも分からないし。

 それと、人間の限界を超えているとは感じない。

 少なくとも、100メートルを8秒で走れるとかはない。それだけは分かる。それよりも、超能力――技能スキルだ。

 危険な任務に就くことになったんだ、技能スキルの可能性を広げていきたいと思う。


「……握力計でも買うか」


 今の自分が、どの程度の筋力なのかを知る必要がある。余りにも急激に体が育ちすぎた。ランニングや腕立て伏せ、スクワットなんかでは、もう自分の立ち位置が分からなくなっている。モンスターの討伐に体力が必要かは、まだ分からないけど。


「高校入学前までは、毎日、20キロメートルのウォーキングと、200回の腕立て伏せと腹筋・背筋、30分間のスクワットを行っていた。医者の提示して来た10倍だけど、普通の高校生ならば、当たり前なのかもしれないし……。また、再開してみるか?」


 比較対象がいなく、怜奈さんは途中からついて来れなくなった。

 それと、クラスメイトの4人が出来るとも思えない。

 現在の比較対象は、あのロードバイクしかいなかった。


 考えていると、学校に着いた。

 僕は、自転車を置いて、教室に向かった。



 教室に入る。


「おはようございます」


「「「「おはよう」」」」


 んっ? 今日は、全員の挨拶が返って来た? 多少変わったか?

 その後、牧先生が来る。


「お~す。ホームルーム始めるぞ~」


 一礼をして、授業開始だ。授業……だよな?



「魔力を使った組手?」


「そそ。昨日の才羽のデータから、フォーメーションを考えないとね。相性の悪い相手に当たった場合に、フロントを変更する必要があるからね。それ次第で、生存率が大幅に変わるんだよ」


 牧先生から簡単な説明を受ける。

 でも、フロント? 前衛って意味かな? アタッカー? 攻撃部隊?

 僕は、前に出るの?


「アタッカーとして認められたってことだよ」


 今度は、茜さんからだった。

 どうやら、僕は攻撃力を期待されているみたいだ。


『それと、話から茜さんと焔さんが前衛フロントで、攻撃役なんだな。黛さんは、後衛バックなんだろう。牧先生も。後は、楓さんかな……』


「そんじゃ確認だ。全員移動ね。黛おねがい」


「んっ」


 教室のドアを開けた。


「今日は、草原か……」


 何処ですかここ? すっごい涼しいので日本じゃないな。

 地平線が見えるし。

 見つかったら、不法滞在に問われない?

 つうか、外国にでも行けるんだ……。


「便利……ですね」

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