第25話 能力を確認することになりました1
後始末は、スライム防衛隊に任せて、僕は帰宅することになった。
茜さんと牧先生は、まだやることがあるんだそうだ。
僕もその内、教えて貰おう。
スライム防衛隊の車両で、家まで送って貰った。
「ありがとうございました」
「お礼を言うのは、こちらですよ。今後もよろしくお願いします」
防衛隊の人と挨拶をする。
車を見送った後、家に入った。家は、静かだ。怜奈さんは、寝ているのかな。
僕は意を決して、怜奈さんの部屋の前まで移動した。
『だけど……、何て言うんだ?』
僕は、暫く考えて、ドアをノックした。
――コンコン
「怜奈さん……。帰って来ました。怪我はしていません。これから、こんな日が度々あるかもしれませんが、必ず帰って来ます」
「…………」
返事はなかった。
もう夜も遅い。僕は、シャワーを浴びてすぐに寝ることにした。
◇
朝になって、いつも通りリビングへ。
怜奈さんは、朝食を作ってくれていた。
「おはようございます」
「……おはようございます」
気まずい朝食だな。怜奈さんが怒っているのが分かる。
無言で食べる。
食器をかたずけて貰い、登校の準備だ。
「行って来ます」
「相馬さん……。行ってらっしゃい」
「はい……。それと、庭にスライムが現れるかもしれません。放置でお願いします。見つけた場合は、連絡を入れてください。最低でも触れないでください」
再度の注意だ。
怜奈さんが不思議そうな顔をする。
「……分かりました」
そのまま、マウンテンバイクを漕ぐ。
「スライムが、怜奈さんに魅かれている可能性を、まだ否定できないんだよな……」
商店街に出て、大通りを進む。今日もロードバイクに抜かれた。平地だと本当に速いな。同じ乗り物だとは思えない。
相手にはしない。無意味だ。トップスピードを競う意味もないし。
なにより、危ない。
『そう言えば、同じ学校の生徒なんだな……』
僕は、二日目で相手の顔を見たんだな。「ロードバイクに乗った人」としか認識していなかった。
でも上り坂で追い付いて抜いてしまう。
『スプリンターとクライマーだったかな……。僕は、クライマーみたいだ』
僕はスピードより、ストレングスの値が、高い気がする。
まあ、スライムを摂取した時点で、もう身体能力のテストは受けられない。どんな記録になるかも分からないし。
それと、人間の限界を超えているとは感じない。
少なくとも、100メートルを8秒で走れるとかはない。それだけは分かる。それよりも、超能力――
危険な任務に就くことになったんだ、
「……握力計でも買うか」
今の自分が、どの程度の筋力なのかを知る必要がある。余りにも急激に体が育ちすぎた。ランニングや腕立て伏せ、スクワットなんかでは、もう自分の立ち位置が分からなくなっている。モンスターの討伐に体力が必要かは、まだ分からないけど。
「高校入学前までは、毎日、20キロメートルのウォーキングと、200回の腕立て伏せと腹筋・背筋、30分間のスクワットを行っていた。医者の提示して来た10倍だけど、普通の高校生ならば、当たり前なのかもしれないし……。また、再開してみるか?」
比較対象がいなく、怜奈さんは途中からついて来れなくなった。
それと、クラスメイトの4人が出来るとも思えない。
現在の比較対象は、あのロードバイクしかいなかった。
考えていると、学校に着いた。
僕は、自転車を置いて、教室に向かった。
教室に入る。
「おはようございます」
「「「「おはよう」」」」
んっ? 今日は、全員の挨拶が返って来た? 多少変わったか?
その後、牧先生が来る。
「お~す。ホームルーム始めるぞ~」
一礼をして、授業開始だ。授業……だよな?
「魔力を使った組手?」
「そそ。昨日の才羽のデータから、フォーメーションを考えないとね。相性の悪い相手に当たった場合に、フロントを変更する必要があるからね。それ次第で、生存率が大幅に変わるんだよ」
牧先生から簡単な説明を受ける。
でも、フロント? 前衛って意味かな? アタッカー? 攻撃部隊?
僕は、前に出るの?
「アタッカーとして認められたってことだよ」
今度は、茜さんからだった。
どうやら、僕は攻撃力を期待されているみたいだ。
『それと、話から茜さんと焔さんが
「そんじゃ確認だ。全員移動ね。黛おねがい」
「んっ」
教室のドアを開けた。
「今日は、草原か……」
何処ですかここ? すっごい涼しいので日本じゃないな。
地平線が見えるし。
見つかったら、不法滞在に問われない?
つうか、外国にでも行けるんだ……。
「便利……ですね」
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