第24話 怜奈さんを説得しようと思います1

「そんなの、認められると思っているのですか!?」


 今……、隣にいる怜奈さんが、とても怒っている。

 目の前には、牧先生がいる。

 魔法少女部隊(仮? 旧?)への入隊(?)の説明に来て貰ったのだけど、怜奈さんは了承しなかった。

 まあ、当たり前だよね。


「変異スライムを食べた、才羽君の義務になります。ご協力いただけない場合は、隔離処置となります。能力スキルは、とても公表できるモノではないので。幸いにも才羽君は、病症で親元から離れていた身。どうとでも取り繕えます」


「っ……」


 隔離処置か……。

 能力スキルの封印ではないんだな。

 分析でもするのかな? まだ未解明なのが伺えるし。スライム防衛隊の後方支援なら、御の字だな。


「僕は最低でも三年間は、協力するつもりでいます」


 怜奈さんが、驚いた顔をする。


「相馬さん……。危険ですよ? 危険なんですよ? 最悪、死んじゃうんですよ? スライム防衛隊員の怪我を見たことがないからそんなことが言えるんです」


 スライム防衛隊の死亡者数は、知っている。全国で毎年100人は出ている。

 それでも、一般市民の死者は、毎年0人だ。

 ここで、話題を変える。


「牧先生……。ずっと報酬の話をしていませんよね」


 牧先生は、渋い顔だ。


「そうだったね。才羽君の家庭事情は調べさせて貰ったわ。普通は金銭なんだけど……、何が欲しいか決めているのかな?」


 そんなのは、決まっている。


「怜奈さんとの変わらない日常を……」


 牧先生が笑った。



 ここで、スマホが鳴った。緊急用の方だ。牧先生が持つスマホも同時に鳴る。


「話はここまでで。才羽君! 行くよ!」


「はい」


「ちょっと待ってください!」


 怜奈さんの両肩を抑えて、座らせる。


「怜奈さん。僕は健康な体をズルをして手に入れました。それを返さないといけないと思います。それに……スライムは、寿命を延ばしません」


 僕の言葉に、怜奈さんは、力なく項垂れてしまった。

 僕は自分の部屋に戻り、防衛隊のジャケットとヘルメットを持って、迎えに来た車に乗った。





 迎えの車に乗ると、牧先生から言われた。


「良かったのかい?」


「怜奈さんのことですか? 説得します。それと……、両親には知らせないでください」


「……そう、分かったわ」


「それと、記憶を抹消する技能スキルってありますか?」


「あるにはあるけど……。少なくとも、家政婦のバイトは辞めて貰うわね」


 ダメか……。どんなスキル持ちがいるのか把握するのが、最優先かもしれない。

 でも、もしかしなくても国家機密になんだよな?

 モンスターの討伐のみに、『覚醒者』を割く理由なんてないんだし。

 怖いタイプ――〈魅了〉とか発現させた『覚醒者』がいたら、国を乗っ取られそうだな。



 考えていると、すぐに現場に着いた。結構、近くだったんだな。

 あれは、茜さん?


「先越されたようだね。才羽は、茜に合流して。連携は無理でも、倒し方を覚えてね」


「牧先生は?」


「私は、回復役よ。死ななければ、元に戻してあげるわ。前線に立ってもいいんだけど、私のスキルは替えがきかないの」


 回復役がいた? 僕の予想は、外れていたか。

 そうなると、牧先生が一番重要な役回りなんだな。


 僕は、車から降りて、走り出した。


「あ……。才羽! 来てくれたんだ」


「茜さん……。どんなモンスターですか?」


「瞬時に回復するモンスターみたい。どんなに吹き飛ばしても、核を中心にして元に戻るの。火力不足でさ、モンスターの核の位置を探っている最中かな」


 目の前を見る。昨日と同じになるんだな。

 なんか、滅茶苦茶に切り刻まれて回復中みたいだ。動けないでいる。

 でも、茜さんは刃物を持っていない。スキルが関係していそうだ。


「茜さんは……、風使い? 風魔法?」


「そう考えていいかな。他にもできるんだけどね」


 浮いているから、想像出来た。飛べる人だったんだ。

 それと、スカートとスパッツは、嬉しいようなガッカリなような……。そんなスタイルだ。

 僕は、モンスターに近づいた。


「とりあえず、右手からかな」


 モンスターの頭を触り、紫の魔力を送ると、モンスターの再生が止まった。〈固定〉で回復を止める。ついでに、手足の動きも止まる。

 小型のモンスターで良かったかな。


「えっ……。何をしたの?」


 茜さんが、近づいて来た。飛んでいて、スパッツが凄くよく見える位置なので、そちらは振り向かない。暴風の中で飛んでいるようなもんだ。丁度、スパッツが顔と同じ高さなのも問題だな。

 余計な思考は、置いておこう。

 モンスターは、このままでもいいけど、何時まで持つかも分からない。


 次に僕は、左手の銀色の魔力を送った。狙うのは、首だ。

 躊躇う必要もない。今日は全力だ。

 銀色の魔力が、モンスターを覆う。首が〈崩壊〉して、胴体が落ちた。


「……最大出力だと、塵になるんだな」


 僕の紫色と銀色の魔力……。

 対照的な能力だけど、使い方かもしれない。


 最後に、モンスターの頭部の〈固定〉を解除した。

 頭から再生しようとしているけど、茜さんのスキルが襲う……。細切れになって、核が見えた。核を茜さんが掴むと、モンスターは動かなくなった。これで、終わりだと思う。


「ふ~ん、問答無用か。最初期から物理法則無効は、羨ましいね。才羽は攻撃力では、トップクラスかもね」


「僕は、触れられれば、結構役に立つかもしれないですね。拘束さえして貰えれば、物理法則が異なっているモンスターでも、ダメージを与えられそうです」


「まゆっちと組ませると最強かもね。でも、過信は禁物だぞ」


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