第23話 授業

 朝になり、朝食を食べて登校だ。

 今日は、チャリ通学にした。

 車道を進んで行く。

 途中でロードバイクに抜かれる。バスにも……。


「挑発されているのかな?」


 でも、相手にする必要もない。

 そう思っていたんだけど、坂道でロードバイクに追いついた。

 そのまま抜いて行く。ロードバイクの人は、息切れが酷いな。全力疾走したのかな? 朝から体力のある人だ。


「バスにも追いついたか。この辺から毎回停留所で停まるんだし、当たり前か」


 バス通学と時間的に変わらないことが、確認できた。

 ちょっと疲れるけど、今の僕なら問題がない。通学方法は、もう少し考えるか。


 そんなこんなで、学校に着いた。



 自転車に鍵をかけて、駐輪場に置いた。

 名前も書いてある。これで、盗まれることもないだろう。


 そして、教室へ向かった。





「おはようございます」


「「おはよう」」「「……」」


 反応が、真っ二つだな。

 席に着く。


「ねえねえ。昨日は、まゆっちと一緒だったんでしょう? 初戦で大手柄って聞いたよ?」


「……昨夜は、三匹発生していますよね?」


「あはは。知ってんじゃん。そそ、私たち三人で残り二匹を倒しているのよ」


 朝のニュースで流れてたからね。緊急用のスマホでも確認出来た。

 でも、疑問に思ってしまう。


「僕たちって、学校に通う意味は、ありますか?」


 こうなると、モンスター討伐に集中した方がいいと思うんだけど。


「私たち四人には、あってないようなものかな~。まあ、青春を謳歌するんだって。まゆっちの発案って聞いたけど?」


「……あれは、失言だった。今は、後悔している。スケジュール詰め込み過ぎ」


 黛さんは、起きていたのか。

 それと青春か……。僕にも縁遠い言葉だったな。

 ここで、牧先生が来た。


「お~す。ホームルームを始めるぞ~」





『授業は、普通に行うんだな』


 全員聞いてはいる。

 だけど、授業の内容だ……。スライム関係しか行わないのか? 生態とか飼育方法の新理論を聞いているんだけど?

 次に、僕の書いた、入試の答案用紙が出て来た。


「お題は、『スライムの単一性の疑問』だね。単細胞生物でもないスライムが、DNAの変異を伴わない理由がない。ガン細胞にも分類されている。環境次第では、突然変異を起こす可能性があり、それは若返りのみとは限らない。人以外が摂取すると体を変形させるのにも、法則性を見出せば、対処が楽になる。……要点はこんなとこだね」


 自分の論文を読まれると、結構恥ずかしいな。


「……普通過ぎ。誰でも書ける」

「そうか~? ある意味正解じゃないか?」

「変異種見てんだし……」

「法則性が確立されれば、私たちの出番も少なくなる?」


 う~ん。見解が人それぞれだな。

 ここで、スマホが鳴った。僕の私物の方だ。怜奈さんからだった。


「家の近くに、モンスターが発生? 帰り道に気を付けろって」


 クラス全員を見渡す。


「うん? 緊急の呼び出しの方じゃないんでしょう? スライム防衛隊で対処できるのであれば、私たちに呼び出しはかからないんだよ? 私たちの相手は、主に変異種なんだ。大型が出た場合は……、スライム防衛隊次第だね」


 牧先生が、パソコンのマウスを動かす。

 監視カメラの画像が、テレビ画面に映し出された。


「普通に倒せているね……。野良犬がモンスター化したみたいだから、出動はないかな。スライムは、海から来たのかな? それと、話が逸れるけど、変異種のモンスターには核があるんだ。倒し方の一例として、その核を抜き取るのもあるんだよ。才羽は、強引に倒せそうだけどね」


 倒し方が異なるのか? 昨日は、スライム防衛隊が、頭を吹き飛ばしていたけど。


「モンスターの核……。それが、物理法則の異なるモンスターの特徴ですか?」


「そそ……。事前に知識があるだけで、生存率が大分違うよ。まゆっちが一番知っているね」


「……思い出したくもない」


 やっぱり、命がけなんだな。

 それと昨日聞いた通り、長く続けているみたいだ。


「戦い続けている人達の噂を聞きました……。魔法少女部隊? 皆さん、精鋭なんですね」


 ――ギロ×5


 全員の目が光った?

 殺意が凄いんだけど?

 教壇から、牧先生が下りて来た。そして、僕の肩を掴んだ。


「才羽ぁ~。次その単語を口にしたら、自宅謹慎な~! 落第はさせないけど、評価は落とすぞ~!」


 スライム防衛隊の人たちは、黛さんを見てつけた仇名と言ったけど、牧先生も入っているんだ?


「……はい。二度と口にしません」


「「「「「よろしい」」」」」





 授業は、16時までだった。

 マウンテンバイクで帰る。

 それと、怜奈さんの件だ。怜奈さんに、能力スキルを話したことを伝える。

 牧先生に相談すると、今晩来てくれるのだとか。


「反対されるのであれば、能力スキルを封印して生活かな」


 僕は今の生活が、気に入っている。

 高校生活もスライム防衛隊も、大切にして行きたいと思っている。


 怜奈さんの卒業……。それが一番なのは変わらない。

 それでも全てを、熟したい。高校生活は、なに一つ、取りこぼしたくないとも思っている。

 ずっと、なにも手に入れられない生活をして来たんだ。

 強欲な考え方かもしれないけど、今の僕にはそれだけの体があるんだ。



「出来る……はずだ」

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