第23話 授業
朝になり、朝食を食べて登校だ。
今日は、チャリ通学にした。
車道を進んで行く。
途中でロードバイクに抜かれる。バスにも……。
「挑発されているのかな?」
でも、相手にする必要もない。
そう思っていたんだけど、坂道でロードバイクに追いついた。
そのまま抜いて行く。ロードバイクの人は、息切れが酷いな。全力疾走したのかな? 朝から体力のある人だ。
「バスにも追いついたか。この辺から毎回停留所で停まるんだし、当たり前か」
バス通学と時間的に変わらないことが、確認できた。
ちょっと疲れるけど、今の僕なら問題がない。通学方法は、もう少し考えるか。
そんなこんなで、学校に着いた。
自転車に鍵をかけて、駐輪場に置いた。
名前も書いてある。これで、盗まれることもないだろう。
そして、教室へ向かった。
◇
「おはようございます」
「「おはよう」」「「……」」
反応が、真っ二つだな。
席に着く。
「ねえねえ。昨日は、まゆっちと一緒だったんでしょう? 初戦で大手柄って聞いたよ?」
「……昨夜は、三匹発生していますよね?」
「あはは。知ってんじゃん。そそ、私たち三人で残り二匹を倒しているのよ」
朝のニュースで流れてたからね。緊急用のスマホでも確認出来た。
でも、疑問に思ってしまう。
「僕たちって、学校に通う意味は、ありますか?」
こうなると、モンスター討伐に集中した方がいいと思うんだけど。
「私たち四人には、あってないようなものかな~。まあ、青春を謳歌するんだって。まゆっちの発案って聞いたけど?」
「……あれは、失言だった。今は、後悔している。スケジュール詰め込み過ぎ」
黛さんは、起きていたのか。
それと青春か……。僕にも縁遠い言葉だったな。
ここで、牧先生が来た。
「お~す。ホームルームを始めるぞ~」
◇
『授業は、普通に行うんだな』
全員聞いてはいる。
だけど、授業の内容だ……。スライム関係しか行わないのか? 生態とか飼育方法の新理論を聞いているんだけど?
次に、僕の書いた、入試の答案用紙が出て来た。
「お題は、『スライムの単一性の疑問』だね。単細胞生物でもないスライムが、DNAの変異を伴わない理由がない。ガン細胞にも分類されている。環境次第では、突然変異を起こす可能性があり、それは若返りのみとは限らない。人以外が摂取すると体を変形させるのにも、法則性を見出せば、対処が楽になる。……要点はこんなとこだね」
自分の論文を読まれると、結構恥ずかしいな。
「……普通過ぎ。誰でも書ける」
「そうか~? ある意味正解じゃないか?」
「変異種見てんだし……」
「法則性が確立されれば、私たちの出番も少なくなる?」
う~ん。見解が人それぞれだな。
ここで、スマホが鳴った。僕の私物の方だ。怜奈さんからだった。
「家の近くに、モンスターが発生? 帰り道に気を付けろって」
クラス全員を見渡す。
「うん? 緊急の呼び出しの方じゃないんでしょう? スライム防衛隊で対処できるのであれば、私たちに呼び出しはかからないんだよ? 私たちの相手は、主に変異種なんだ。大型が出た場合は……、スライム防衛隊次第だね」
牧先生が、パソコンのマウスを動かす。
監視カメラの画像が、テレビ画面に映し出された。
「普通に倒せているね……。野良犬がモンスター化したみたいだから、出動はないかな。スライムは、海から来たのかな? それと、話が逸れるけど、変異種のモンスターには核があるんだ。倒し方の一例として、その核を抜き取るのもあるんだよ。才羽は、強引に倒せそうだけどね」
倒し方が異なるのか? 昨日は、スライム防衛隊が、頭を吹き飛ばしていたけど。
「モンスターの核……。それが、物理法則の異なるモンスターの特徴ですか?」
「そそ……。事前に知識があるだけで、生存率が大分違うよ。まゆっちが一番知っているね」
「……思い出したくもない」
やっぱり、命がけなんだな。
それと昨日聞いた通り、長く続けているみたいだ。
「戦い続けている人達の噂を聞きました……。魔法少女部隊? 皆さん、精鋭なんですね」
――ギロ×5
全員の目が光った?
殺意が凄いんだけど?
教壇から、牧先生が下りて来た。そして、僕の肩を掴んだ。
「才羽ぁ~。次その単語を口にしたら、自宅謹慎な~! 落第はさせないけど、評価は落とすぞ~!」
スライム防衛隊の人たちは、黛さんを見てつけた仇名と言ったけど、牧先生も入っているんだ?
「……はい。二度と口にしません」
「「「「「よろしい」」」」」
◇
授業は、16時までだった。
マウンテンバイクで帰る。
それと、怜奈さんの件だ。怜奈さんに、
牧先生に相談すると、今晩来てくれるのだとか。
「反対されるのであれば、
僕は今の生活が、気に入っている。
高校生活もスライム防衛隊も、大切にして行きたいと思っている。
怜奈さんの卒業……。それが一番なのは変わらない。
それでも全てを、熟したい。高校生活は、なに一つ、取りこぼしたくないとも思っている。
ずっと、なにも手に入れられない生活をして来たんだ。
強欲な考え方かもしれないけど、今の僕にはそれだけの体があるんだ。
「出来る……はずだ」
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