第21話 入学初日は終わったんだけど、その日はまだ終わらなかった

 今日の授業は、午前中で終わり。初日なんて、こんなもんかな?

 その後、歩きで帰る。

 スマホで検索して、街の自転車屋を発見した。学校から、商業区のそのお店まで歩いて行く。


 お店に着いたので、自転車の種類を確認して行く。

 ママチャリを購入しようとしたんだけど、ここで店員が寄って来た。

 走行距離と道の説明を求められる。


「途中に砂利道があるのか……。惜しいね」


 その後、マウンテンバイクを勧められた。正直高い。高額だ。


「ママチャリでいいんですけど……」


「兄さんは、ガタイが良い。普通のママチャリだと、スピードが出ないと思うよ? 乗った後に不満が出ると思う。それと、ロードバイクも勧めない。メンテナンスしないと、壊れて行くからね」


 この人……、僕の筋力とかが分かるみたいだ。

 僕が自転車をフルパワーで漕ぐと、スピードが出ないし、壊す恐れがあるのか。否定はできないな。

 それで、頑丈なフレームを勧めると。

 理屈は合っているな。

 その後、マウンテンバイクに籠を取り付けて貰って、購入した。

 最近は、親へ負担をかけている気がする。来月、何か言って来たら自重しよう。


 自転車を漕いで、帰宅する。風が気持ちいいかもしれない。

 雨の日以外は、チャリ通学でいいかな。





 自宅に着くと、人が待っていた。

 なんだろう?


「この家の方ですか?」


「はい……」


「スライムを保護したと連絡がありました。確認させていただきたい」


 スライム防衛隊の人だったか。

 そうだ、忘れていた。多分、怜奈さんが昨日か今日に連絡を入れたんだろうな。

 2日間放置してしまった。

 家に入り、リビングに案内する。寸胴鍋が置かれていた。

 フタを開けると、スライムが、干からびていた。

 スライム防衛隊の人が、慌てて水をかける……。

 ちょっとずつ、スライムに潤いが戻って来た。生きていたか。


「危なかったです。後数時間で死なせていたでしょう」


 そうだったんだ……。浸かるぐらいでは、水量が足らないんだな。ポイズンには、悪いことをしてしまったな。メタルは気をつけよう。

 その後、スライムは連れて行かれてしまった。売ると兆単位の値段なのに、謝礼金もなしか。

 お金が入ったら、怜奈さんにプレゼントしたかったのに残念だ。

 せっかく健康な体を手に入れたんだし、バイトしてみたいのもあるな。





 夜になり、怜奈さんが帰って来た。


「おかえりなさい」


「ただいま戻りました。急いで、夕食の支度をしますね」


 予想以上に遅い時間に帰って来た……。私用? 寄り道でもしていたのかな?

 これ……、怜奈さんは今の生活をどれだけ続けられるんだろうか。

 まだ数日だけど、オーバーワークが見て取れる。授業だけじゃない、学校の付き合いとかもあるだろうし。


 怜奈さんは、夕食と入浴を終えると寝てしまった。まだ数日だけど、疲れていそうだ。

 明日は休みなんだし、静かにしよう。



 夜中に高校の教科書を読んで行く。


『分かる……。理解できるし、忘れる事もない。メタルの存在が世間に知られたら、大騒ぎになるんじゃないのか?』


 スライムは、若返りの効果だけじゃないのかもしれない。

 ポイズンは、病弱だった僕の体を健康に変えてくれた。

 そしてメタルだ。ギフテッドクラスの知能指数を手に入れられたのかもしれない。全国模試一位なんだし。

 そして、魔法……。


「知られていない理由があるんだよな……」


 情報統制されているのかもしれない。僕も知らなかったし。

 秘密にする理由があるのかな?


 そう思った時だった、スマホが鳴った。

 呼び出し用の方だ。


 →『モンスター発生! Wー08にて防衛中。迎えを寄越すので準備せよ』


 なんだこれ?

 そう思ったら、車が家の前に止まった。軍用車両だなあれ。タイヤが6本ついているし。

 インターホンが鳴る前に、玄関を開ける。


「スライム防衛隊の、堂安です」


「才羽相馬です。地江利ジェリー高校の一年五組です」


 防衛隊員たちが、頷いた。


「初陣かもしれないが、協力をお願いしたい」


 モンスターは、ソロで倒したことがあるんだけど、それは言わない。

 でも、協力――なんだ?


「あの……、家政婦さんがいまして……。静かにしていただけますか?」


「今は? 必要なら、ご説明します」


「疲れて寝ていると思います。静かにしていれば、起きないと思います」


 その後、車に乗せられる。急いでいるみたいだ。

 怜奈さんには、後からだな。


「これから、こんな状況が続くのですか?」


「そうなるね。才羽君は、家政婦さんがいるので、昼間か夜中という制限がつきそうだね。上に報告しておくよ」


 疑問に思ってしまう。


「あなた達は、変異種のスライムを摂取していない?」


「……変異スライムの発生は、適性のある者の前のみ現れるんだよ。正直、君たちが羨ましいよ」


 適正のある人のみなんだ? 僕は、メタルを飼っているけど、他の人が摂取しても知能の改善は期待できないんだ? それならば、理解もできるな。

 それにしても、いきなり超能力者だもんね。

 でも極秘扱いなんだし、自慢もできない。制限付きなんだよね。


「見えました。モンスターがいます」


 僕は、窓の外を見た。

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