第21話 入学初日は終わったんだけど、その日はまだ終わらなかった
今日の授業は、午前中で終わり。初日なんて、こんなもんかな?
その後、歩きで帰る。
スマホで検索して、街の自転車屋を発見した。学校から、商業区のそのお店まで歩いて行く。
お店に着いたので、自転車の種類を確認して行く。
ママチャリを購入しようとしたんだけど、ここで店員が寄って来た。
走行距離と道の説明を求められる。
「途中に砂利道があるのか……。惜しいね」
その後、マウンテンバイクを勧められた。正直高い。高額だ。
「ママチャリでいいんですけど……」
「兄さんは、ガタイが良い。普通のママチャリだと、スピードが出ないと思うよ? 乗った後に不満が出ると思う。それと、ロードバイクも勧めない。メンテナンスしないと、壊れて行くからね」
この人……、僕の筋力とかが分かるみたいだ。
僕が自転車をフルパワーで漕ぐと、スピードが出ないし、壊す恐れがあるのか。否定はできないな。
それで、頑丈なフレームを勧めると。
理屈は合っているな。
その後、マウンテンバイクに籠を取り付けて貰って、購入した。
最近は、親へ負担をかけている気がする。来月、何か言って来たら自重しよう。
自転車を漕いで、帰宅する。風が気持ちいいかもしれない。
雨の日以外は、チャリ通学でいいかな。
◇
自宅に着くと、人が待っていた。
なんだろう?
「この家の方ですか?」
「はい……」
「スライムを保護したと連絡がありました。確認させていただきたい」
スライム防衛隊の人だったか。
そうだ、忘れていた。多分、怜奈さんが昨日か今日に連絡を入れたんだろうな。
2日間放置してしまった。
家に入り、リビングに案内する。寸胴鍋が置かれていた。
フタを開けると、スライムが、干からびていた。
スライム防衛隊の人が、慌てて水をかける……。
ちょっとずつ、スライムに潤いが戻って来た。生きていたか。
「危なかったです。後数時間で死なせていたでしょう」
そうだったんだ……。浸かるぐらいでは、水量が足らないんだな。ポイズンには、悪いことをしてしまったな。メタルは気をつけよう。
その後、スライムは連れて行かれてしまった。売ると兆単位の値段なのに、謝礼金もなしか。
お金が入ったら、怜奈さんにプレゼントしたかったのに残念だ。
せっかく健康な体を手に入れたんだし、バイトしてみたいのもあるな。
◇
夜になり、怜奈さんが帰って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま戻りました。急いで、夕食の支度をしますね」
予想以上に遅い時間に帰って来た……。私用? 寄り道でもしていたのかな?
これ……、怜奈さんは今の生活をどれだけ続けられるんだろうか。
まだ数日だけど、オーバーワークが見て取れる。授業だけじゃない、学校の付き合いとかもあるだろうし。
怜奈さんは、夕食と入浴を終えると寝てしまった。まだ数日だけど、疲れていそうだ。
明日は休みなんだし、静かにしよう。
夜中に高校の教科書を読んで行く。
『分かる……。理解できるし、忘れる事もない。メタルの存在が世間に知られたら、大騒ぎになるんじゃないのか?』
スライムは、若返りの効果だけじゃないのかもしれない。
ポイズンは、病弱だった僕の体を健康に変えてくれた。
そしてメタルだ。ギフテッドクラスの知能指数を手に入れられたのかもしれない。全国模試一位なんだし。
そして、魔法……。
「知られていない理由があるんだよな……」
情報統制されているのかもしれない。僕も知らなかったし。
秘密にする理由があるのかな?
そう思った時だった、スマホが鳴った。
呼び出し用の方だ。
→『モンスター発生! Wー08にて防衛中。迎えを寄越すので準備せよ』
なんだこれ?
そう思ったら、車が家の前に止まった。軍用車両だなあれ。タイヤが6本ついているし。
インターホンが鳴る前に、玄関を開ける。
「スライム防衛隊の、堂安です」
「才羽相馬です。
防衛隊員たちが、頷いた。
「初陣かもしれないが、協力をお願いしたい」
モンスターは、ソロで倒したことがあるんだけど、それは言わない。
でも、協力――なんだ?
「あの……、家政婦さんがいまして……。静かにしていただけますか?」
「今は? 必要なら、ご説明します」
「疲れて寝ていると思います。静かにしていれば、起きないと思います」
その後、車に乗せられる。急いでいるみたいだ。
怜奈さんには、後からだな。
「これから、こんな状況が続くのですか?」
「そうなるね。才羽君は、家政婦さんがいるので、昼間か夜中という制限がつきそうだね。上に報告しておくよ」
疑問に思ってしまう。
「あなた達は、変異種のスライムを摂取していない?」
「……変異スライムの発生は、適性のある者の前のみ現れるんだよ。正直、君たちが羨ましいよ」
適正のある人のみなんだ? 僕は、メタルを飼っているけど、他の人が摂取しても知能の改善は期待できないんだ? それならば、理解もできるな。
それにしても、いきなり超能力者だもんね。
でも極秘扱いなんだし、自慢もできない。制限付きなんだよね。
「見えました。モンスターがいます」
僕は、窓の外を見た。
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