第20話 高校入学3

 外に出る。本当に雪だった。上履きで、ザクザクと音を立てて歩く。

 実は、雪を踏むのは初めてだった。僕は、雪の降る地域に住んだことはない。県境の山を越えれば、豪雪地帯だとも聞いたことがあるけどね。


「そんで、才羽だっけ? お前だけ二文字なのも気に入らねぇ」


 そんなんで、言いがかりつけないでください。生まれは、選べないんですよ。


「いいじゃん、三口で呼べるんだし。まゆっちが一番変になっちゃうじゃん」


「……殺されたい?」


 なんだろう、この殺伐としながら、和やかな雰囲気は……。

 ここで、焔さんが掌から、炎を生み出した。


「この火は、着火すると消えないぜ?」


 中二病!!

 すっごい痛いよ、焔さん! それ、女子の使う言葉じゃないよ。


 その炎が襲って来た。発火能力パイロネキシス


「ぐっ!」


 右手と左手に、魔力を纏わせる。

 両手で炎を防ぐ……。僕の魔力は、焔さんの炎を弾く性能を示してくれた。


「へえ……」

「「「……」」」

「そこまで! もういいだろう?」


 焔さんが、「ふん」っと鼻を鳴らす。あれだけで、合格だったようだ。


 教室に戻り、自分の席に着く。


「まあまあの自己紹介だったね。そんじゃ、後は自習で」


「は~い」

「は……い」

「ふん」

「……帰って寝る」


 えっ? えっ?

 どうなってんの? 僕の高校生活は?





「え~と、勉強はしないの?」


 先ほどから、気軽に声をかけてくれるのは、かえでさんだ。


「私たちは、金属スライムを食べたから、頭いいんだ。潜在能力の覚醒かな? 一般的な勉強は、大学卒業まで済んでるの。進学と単位は、国が保証してくれているんだ。まあ、生き残れればだけどね。その後は、一応自由にもなれる」


「金属……、メタル?」


 メタルを摂取すると、頭が良くなるんだ? 知られているみたいだな。変異種のスライムは、メタルが主流なのかもしれない。

 病気を食べるポイズンが、普通に多数生息していたら、普通のスライムと同じくらい重宝されるだろうに。もしかして、ポイズンは知られていない?


「あはは。痛い人だな~、才羽君! 著作権の問題で訴えられるぞ?」

「ゲームの知識に染まり過ぎ」


 話し相手は、女子なので、ちょっとズレている気がする。


「え~と。楓さんと茜さん? 詳細を教えて欲しんですけど……」


「これからさ、特訓を受けて、スライム防衛隊に入隊するの。世間には、秘密裏にね」


「秘密にする理由は?」


「超能力だと思ったんでしょ? 君のその力が、世界中に知られると、大混乱になるんだよ。極一部の人のみが、発現するからね」


「世界的には、知られていない?」


「うん? 知られていないんじゃない? スライムを飼育しているのは、日本だけなんだし。能力スキルを発現できる確率は、各研究所で、年間1~2件みたい。もっといるかもしれないけど、隠しているか、死んでいるかだね。才羽君は、運の良い方かな。拘束されないんだし。それと運良く、この教室に辿り着いているしね」


 不思議に思ってしまう。


「世界的なニュースになっても、いいような気がするんだけど……」


「超能力者の量産? 日本人が全員殺されちゃうって。AIがそんな未来を予測したんだってさ」


 そんなモノなのかな?


「それよりもさ、どんなスライムを食べたの?」

「何処で見つけたのかが、重要」


「え~と。庭で、紫色と銀色を……。あと、半透明を昨日捕まえたかな」


 二人が笑い出す。


「随分と好かれているんだね」

「三匹は、聞いたことがない」


 その後、話を聞く。

 スライムの突然発生は、適性のある人が、特定の場所に近づくと発生する現象なのだとか。

 そして、色により能力スキルが異なるらしい。赤とか黒もいるのだとか。


 それと……、二十二歳まで国に協力する義務が発生すると言われた。

 協力しない場合は、監視がつくらしい。


「二十二歳以降は……、スライム防衛隊に入隊なの?」


「そこまでの強制はないかな。能力スキルを封印して、生活するって聞いたけど、ほとんどの人は選ばないらしいね」


 超能力と呼べる能力スキルを封印か……。

 ほとんどいないんだろうな。それは、理解できる。普通の人より、優位に立てるのだから。



 その後、牧先生が戻って来て、新しいスマホを貰った。

 緊急呼び出し用なんだとか。


「才羽! 忘れてたよ。これから、これを肌身離さず持っていてくれ」


 牧先生は、それだけ言って教室から出て行った。

 なにこれ?


「捨てるとペナルティがあるからね? 壊したら……、新しいのが貰えるけど」


 僕は……、何時自由になれるんだろうか。

 それと怜奈さんには、言わないほうが良いらしい。


「隠し事をしながら、生活になるのかな……」


 家政婦と一緒に生活していると言うと、『同棲』と勘違いされてしまった。

 恋愛ネタには、食いつく年齢なんだろうな。





 人物紹介

 ・楓……人当たりの良い人。

 ・茜……ちょっと、口の悪い人。

 ・焔……男子っぽい口調の人。

 ・黛……寝ている人。

 ・牧……担任の人。25歳くらいを設定。


 設定として、他の学校にも特別クラスあり。年二回くらい、学校対抗戦開催とか面白いかも? 地域代表になったら、全国大会かな~。

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