第19話 高校入学2

 ここで、誰かが教室に入って来た。まあ、担任の教師だよね。


「お~す。授業始めるぞ~。席に着け~」


 全員座っていますとは、突っ込まない。


 若そうな女性だった。もしかして、この人が担任? 若すぎない?

 そして、寝ている人の席まで歩いて行った。


 ――コンコン


 書類で頭を叩いて、起こしてあげるみたいだ。


まゆずみ~。お~き~ろ~。無理やりにでも起こすぞ~」


 担任がそう言うと、黛と呼ばれた人が顔を上げた。


まき先生……。昨日は徹夜だったんだから……」


「ホームルームだけでもちゃんと聞け。授業は、寝ていていいんだから」


 頭をぼりぼり掻いているよ。やっと顔が見えた。

 正直、4人共に美少女だ。アイドル顔負けなほどに。牧先生は、美女と言って差し支えない。本当に、このクラスはなんなんだろう……。


 牧先生が、教壇に立った。自己紹介が始まる。


『担任は、女性か……。アグレッシブな人だな。バイタリティー溢れる自己紹介だった』


「一人だけ、新顔がいるから挨拶な。才羽相馬! 昨日はご苦労さん!」


「は、はい!」


 ――シ~ン


 一瞬静まったけど、次の瞬間に爆笑された。

 頭を冷静にする。……昨日?


「おいおい、隠せよ」

「いいんじゃない? 分かってないの丸出しみたいでさ」

「素直過ぎ」

「……」


「えっと、昨日?」


「モンスターを倒してくれただろう? ちょっと、他の四人が別件でさ、人手が足らなかったんだ。助かったよ」


 思案する。今ならまだ、誤魔化せる可能性がある。

 だけど、沈黙が正解だとも思う。


 ここで、牧先生がパソコンとテレビを繋げた。

 少し待つけど、何も映らない。


 ここで、楓と呼ばれた人が先生のパソコンを操作し出した。

 そして……、映像が映った。僕がテレビに映し出される。


「……防犯カメラ映像ですかね。バレてたんだ」


 俺が、地下シェルターから出た映像から、モンスターに投石した映像。そして、スライム防衛隊にシェルターの連絡を入れるまでの映像が、編集されていた。


「どうだ~。先生の編集作業も様になって来ただろう?」


 いや……、変な効果音とバックで流れている音楽のチョイスが、個性的なんですけど?

 『ちゅど~ん』っていう、文字は何なの? 擬音? オノマトペ? 小石がモンスターに当たった音は、そうじゃないでしょうに。

 でも口には、出せない。沈黙が正解だと思う。


「ふ~ん。魔法系とも思えるけど、攻撃系なのかな?」

「調べればいいだけ」

「組手すんのが一番だろう。本人分かっていないし」

「興味ない。……寝る」


 あれ? 画像編集には、突っ込みなし? 慣れている? この五人は、もしかして長い期間、関わっているのかな?

 それよりも、自分の分析をされているので、冷汗が止まらない。


「もしかしてですけど、皆さん超能力者? 魔法使い?」


 ここでまたしても、大爆笑を貰った。





「皆……、変異したスライムを摂取したんですか?」


「そそ、そんで能力スキルに目覚めたんだ。それで、スライム防衛隊に協力してんの。ファンタジーだよね」

「スライムの存在そのものが、ファンタジー」

「もう話し合いも終わりでいいだろう? 移動しようぜ」

「……帰っていい?」


 牧先生が纏めてくれる。


「要はさ、スライムを食べて変異した動物の個体を倒せる人が、限られているわけだ。そんな才能を持った子供を集めたのが、この教室ってわけ。まゆずみが、中学一年の時に発見されて、他は半年で三人集まったね」


「そそ。このまま行くと十人以上になるんじゃないかって騒がれたけど、結局四人だったの。豊作の年ではなかったって、ガッカリされたのを覚えているな~」

「人手が、足らなすぎ……」


「そんな重要な話……、ここで話していいんですか?」


「んっ? ドアを開けてみな」


 言われたので、移動してドアを開ける。

 開けたんだけど……。


「何処ですか? ここ……」


 一面の雪原なんですけど?


「ああ、この中に空間支配系がいてさ、今この教室だけ隔離してんの。逃げらんないよ。そんで、声も外に漏れない」


 どうやら、僕は見つかってしまったみたいだ。

 危ない人たちに……。


 詳細を聞く。僕は本当は一組だったらしい。それを、一晩で書き換えたのだとか。


「いや~。前日でなくてもいいじゃんって言いたかったわけよ。私も徹夜だったんだよ~」


 看護学校の入学式の時の戦闘は、バレていないみたいだ。それと、夜中の公園で犬のモンスターを倒したこともある。

 昨日だけが問題だったのかな? いや、安易には判断できない。


「僕に何をしろと?」


「変異した動物。モンスターの討伐……だね」


「スライム防衛隊がいるじゃないですか?」


「倒せない個体もいるわけよ。そんで、倒せる人材の育成中ってわけね」


 考える。言葉の矛盾点を探す。


「日本全国に……、何人いますか?」


「才羽君が、1008人目。相当数死亡したけどね……。今は半分生きているかな?」


 おいおい、命がいくつあっても足りないじゃん。そんな、秘密結社みたいなことしてんの?

 もしかして、国家主導で? 秘密裏に?


「もういいだろう? そいつの実力が見たい」


「そうだね~。そんじゃさ、ほむらがやる? あかねがいい?」


「私だろ」


「噓でしょ……」


 僕は、帰れるのかな……。

 怜奈さんの元に。

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