第14話 生体モニタリング装置

 家に帰って来た。

 怜奈さんも自室に戻って、着替えだ。


「それよりも……」


 僕は、生体モニタリング装置を見た。

 パソコンに繋いで、今日のデータを確認する。


「血圧も心拍数も正常値内なのか……」


 全力疾走したけど、心拍数はそれほど上がっていない。

 時間的に、入学式の前……。少し噂された時の方が、悪い。


「魔力を使えば、身体的に強化できる? 人間を超える動きは出来なかったけど、魔力次第では、可能かもしれない?」


 僕が、モンスターになった可能性……。

 背中が冷える。


「それと、腕に巻いていたのだけど、ベルトが切れかかっているよ」


 生体モニタリング装置が、壊れかけている。

 筋肉も大分育っているらしい。丸太とは言わないけど、腕が大分太くなった気がする。

 細マッチョって言うのかな?


「……。もう必要ないよな。いや、邪魔だな」


 そう言えば、腕立て伏せなんかのトレーニングをしても通知は来なかった。

 試してみるか。


 僕は着替えてから、腕立て伏せを始めた。

 ちょっと、余計に力を入れてみる。そうすると、ベルトが切れた。

 廊下が騒がしくなる。

 ドアを開けて、怜奈さんが入って来た。


「相馬さん!? ぎゃあ~!?」


「あ、すいません」


 汗をかく予定だったので、上半身裸で運動し始めたのが、良くなかったな。一人暮らしじゃないんだ。

 Tシャツを着る。

 それと、生体モニタリング装置を怜奈さんに渡す。


「ベルトが切れてしまいました。予備ってないですよね?」


 真っ赤な顔した、怜奈さんが無言で受け取ってくれた。そのまま、部屋を出て行く。少しすると、針と糸で応急処置を施されたベルトが、戻って来た。


「今日はそれで我慢してください。明日、病院に行きましょう」


「お願いします」


 こうなると、生体モニタリング装置の異常ではなかったか。

 僕の体の方が、異常なのかもしれない……。





 夕食を済ませて、自室に戻る。僕の入学式は、明後日だ。

 準備は整っている。


 することがないので、メタルスライムを見た。

 使い終わったプラスチックをあげてみる。水槽の底まで届けてあげると食べ出した。


「お前は、本当に動かないよな……。喰う時だけだ」


「きゅぅ~」


 返事をしてくれるようになったか。

 餌を与え続けたかいがあったかもしれない。


 金魚にも餌をあげる。パクパクと嬉しそうに食べているな。


「金魚がモンスター化しないのは、不思議なんだよな~」


 まだ、詳細は分からない。

 メタルスライムは……、本当にスライムなんだろうか。





 次の日に、病院に行き医者と面談を行う。


「生体モニタリングを外したい?」


「はい、僕も高校に通うことになりますので。家政婦さんの許可がないと外出できなくなる状態ですし、これからは何時も傍にいてくれる訳じゃなくなりました。まだ必要なら、GPS機能だけでもOFFにして貰えないでしょうか」


 医者は考えてくれる。

 その後に、診察を受けたけど、ずっと考えているな。

 怜奈さんは、後ろを向いて、僕の肌を見ないようにしている。


「ふむ……。いいだろう。病気が完治したとは思っていないが、ここまで健康的な肉体を見るとね。私も不要だと思うよ」


 医者が僕の筋肉をポンポンする。

 看護師は、顔を真っ赤にして凝視してるんだけど。中学生の上半身裸を見て、面白いのかな?


「ちょっと待ってください」


 怜奈さんが、反論する。やっとこっちを向いてくれたか。


「万が一を検出するんですよ? 何度も危険を知らせてくれたのに」


「高校に通うほど健康になった人に、つける装置ではないんですよ。でもどうしてですかね、全ての数値が正常値だ。成長期とはいえ、短期間でこんなに変われるなんてね」


 少し言い合いになったけど、怜奈さんが折れた。

 過保護過ぎるよね。


 さて、これで夜中に出かけてもバレないぞ。





 夕飯を頂き、深夜まで待った。


「明日は、僕の入学式だ。短時間だけ試してみよう」


 僕は、一人で家を後にした。

 近くの広場に向かう。公園だな。シェルターの入り口もある。

 感覚を研ぎ澄ませる。


「きゅぅ~」


 いた、スライムだ。

 色は……、普通だ。


「どうして、ここにいるんだ? もしかして、僕が引き寄せているのか?」


「きゅぅ~」


 意思疎通は……、できないか。

 スライムをそっと抱きかかえる。

 ここで、音を拾った。鳴き声?


「がるぅ~」


 そちらを見る。


「小型のモンスターか……。変異途中だけど危ないよな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る