第12話 入学準備をすることになりました

「……受かったんですか?」


 高校に呼び出されたと思ったら、結果通知だった。

 怜奈さんは、嬉しそうだ。


「それで、通うんだよな?」


 教師が、不安気に聞いて来た。

 まあ、怜奈さんの件もある。途中で不登校になる可能性もあるけど、通う以外の選択肢はなかった。


「もちろんです。親とも話しています」


 入学案内の書類を受け取って、中学校を後にする。

 怜奈さんは、とても嬉しそうだ。


「後は、明日の怜奈さんの合否ですね」


「うふふ。自信はあるんですよ~」


 怜奈さんは、元々頭がいい。それに、一年の浪人という形だけど、勉強を続けていた。

 合格は疑いようがない。


「これで、二人して新しい道に進めますね~」


 ドキっとしてしまった。


「家政婦は、続けて貰いますよ? 辞めませんよね?」


「もちろん、続けますよ~」


 ビビった。一瞬焦ってしまった。

 そして、怜奈さんは、無事看護学校に合格した。お祝いのディナーは、高級な店にしたかったんだけど、僕にお店の知識なんてない。

 スマホで調べても、理解できない。

 結局、怜奈さんの行きつけのイタリア料理でパスタを食べた。

 オシャレなお店だったな。


 ちなみになんだけど、デートでイカ墨パスタは止めよう。珍しかったので注文したのだけど、笑われてしまった。





 怜奈さんも無事に合格して、二人して4月から新生活だ。

 制服を作らないとな。

 怜奈さんは、私服での通学らしい。


 親からは、『良くやった』とだけ、スマホに返って来た。弟と妹からは、何もなし。

 まあ、仮に私立の中学受験に成功したとしても、僕から兄弟に祝いの言葉をかけるつもりもない。

 冷めきった血の関係よりも、僕には怜奈さんが家族に思える。



「少し大き目のサイズを選びますね」


 採寸して貰い、制服のサイズが決まった。

 だけど、僕は今だ成長途中なんだよな。制服は、3年間持つんだろうか?

 ちょっと前に買った革靴は、ギリギリ履ける状態だったし。大き目のスニーカーが欲しい。

 それと、ちょっと提案してみるか。


「……怜奈さんも洋服を買いませんか?」


「……えっ?」


 店員に相談して、二十歳の女性の着る服装を選んで貰う。今後のために、スーツを選んで貰った。


「あの、相馬さん。私の洋服代をご両親に請求するのは……」


「大丈夫ですよ。金額だけ見て、内容を確認してるとは思えないですし。それよりも、イヤリングが欲しいですね」


 『衣』食住の保証のある契約なんだ。問題ないはずだ。


 怜奈さんは、ピアス穴を空けていない。挟むタイプだな。

 それと、ネックレスも購入して貰った。小さなダイヤが光っている。


 お金に余裕があっても、健康ではなかった生活。

 ショッピングって楽しいんだな。初めて知った。特に好きな人に贈るのであれば尚更だ。

 やっと、人並みの生活が送れるようになって、楽しい毎日になりつつある。ちょっと買い過ぎかもしれないけど。

 親へ依存しているけど、まだ学生なんだ。大学も行けと言うだろうし、後7年は頼ってもいい筈だ。


 怜奈さんは、青い顔をして、支払いを済ませてくれた。スマホ決済で支払い完了。

 良かった。僕のプレゼントは受け取って貰えたみたいだ。





「相馬さん。今日の晩御飯は、牛丼にします。その……、私も時間がなくて」


 そうか、入学式は怜奈さんの方が早い。明日だったな。


「簡単なモノでいいですよ。時短できるモノで」


「ありがとうございます」


 素早く夕食を済ませると、怜奈さんは、自室に行ってしまった。

 僕も自室に戻る。


「メタルに餌をあげないとな~」


 僕は、使い切ったボールペンをメタルに与えた。

 そして、金魚にも餌をあげる。

 水が減っていたので、水を足さないとね。水道水をカルキ抜き剤を使って、金魚に負担をかけないようにしないといけない。

 ここでふと疑問に思う……。スライムの体積は増えていなけど、何処に水分が消えているんだろう?

 それと金魚は、モンスター化することはなかったな。


「まあ、モンスター化する時の質量は、何処から来ているか分からないんだし、今更だよな」





 今日は、怜奈さんの入学式だ。


「それでは行って来ます。食器は、シンクに入れておいてください」


 朝食を済ませた後に、突然言われた。


「僕も行きますよ? 入学式を見てみたいです」


「えっ!?」


 そんなに予想外だったのかな?

 でも、何時も世話をしてくれている恩人の晴れ姿なんだ。スマホで写真くらい撮りたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る