第12話 入学準備をすることになりました
「……受かったんですか?」
高校に呼び出されたと思ったら、結果通知だった。
怜奈さんは、嬉しそうだ。
「それで、通うんだよな?」
教師が、不安気に聞いて来た。
まあ、怜奈さんの件もある。途中で不登校になる可能性もあるけど、通う以外の選択肢はなかった。
「もちろんです。親とも話しています」
入学案内の書類を受け取って、中学校を後にする。
怜奈さんは、とても嬉しそうだ。
「後は、明日の怜奈さんの合否ですね」
「うふふ。自信はあるんですよ~」
怜奈さんは、元々頭がいい。それに、一年の浪人という形だけど、勉強を続けていた。
合格は疑いようがない。
「これで、二人して新しい道に進めますね~」
ドキっとしてしまった。
「家政婦は、続けて貰いますよ? 辞めませんよね?」
「もちろん、続けますよ~」
ビビった。一瞬焦ってしまった。
そして、怜奈さんは、無事看護学校に合格した。お祝いのディナーは、高級な店にしたかったんだけど、僕にお店の知識なんてない。
スマホで調べても、理解できない。
結局、怜奈さんの行きつけのイタリア料理でパスタを食べた。
オシャレなお店だったな。
ちなみになんだけど、デートでイカ墨パスタは止めよう。珍しかったので注文したのだけど、笑われてしまった。
◇
怜奈さんも無事に合格して、二人して4月から新生活だ。
制服を作らないとな。
怜奈さんは、私服での通学らしい。
親からは、『良くやった』とだけ、スマホに返って来た。弟と妹からは、何もなし。
まあ、仮に私立の中学受験に成功したとしても、僕から兄弟に祝いの言葉をかけるつもりもない。
冷めきった血の関係よりも、僕には怜奈さんが家族に思える。
「少し大き目のサイズを選びますね」
採寸して貰い、制服のサイズが決まった。
だけど、僕は今だ成長途中なんだよな。制服は、3年間持つんだろうか?
ちょっと前に買った革靴は、ギリギリ履ける状態だったし。大き目のスニーカーが欲しい。
それと、ちょっと提案してみるか。
「……怜奈さんも洋服を買いませんか?」
「……えっ?」
店員に相談して、二十歳の女性の着る服装を選んで貰う。今後のために、スーツを選んで貰った。
「あの、相馬さん。私の洋服代をご両親に請求するのは……」
「大丈夫ですよ。金額だけ見て、内容を確認してるとは思えないですし。それよりも、イヤリングが欲しいですね」
『衣』食住の保証のある契約なんだ。問題ないはずだ。
怜奈さんは、ピアス穴を空けていない。挟むタイプだな。
それと、ネックレスも購入して貰った。小さなダイヤが光っている。
お金に余裕があっても、健康ではなかった生活。
ショッピングって楽しいんだな。初めて知った。特に好きな人に贈るのであれば尚更だ。
やっと、人並みの生活が送れるようになって、楽しい毎日になりつつある。ちょっと買い過ぎかもしれないけど。
親へ依存しているけど、まだ学生なんだ。大学も行けと言うだろうし、後7年は頼ってもいい筈だ。
怜奈さんは、青い顔をして、支払いを済ませてくれた。スマホ決済で支払い完了。
良かった。僕のプレゼントは受け取って貰えたみたいだ。
◇
「相馬さん。今日の晩御飯は、牛丼にします。その……、私も時間がなくて」
そうか、入学式は怜奈さんの方が早い。明日だったな。
「簡単なモノでいいですよ。時短できるモノで」
「ありがとうございます」
素早く夕食を済ませると、怜奈さんは、自室に行ってしまった。
僕も自室に戻る。
「メタルに餌をあげないとな~」
僕は、使い切ったボールペンをメタルに与えた。
そして、金魚にも餌をあげる。
水が減っていたので、水を足さないとね。水道水をカルキ抜き剤を使って、金魚に負担をかけないようにしないといけない。
ここでふと疑問に思う……。スライムの体積は増えていなけど、何処に水分が消えているんだろう?
それと金魚は、モンスター化することはなかったな。
「まあ、モンスター化する時の質量は、何処から来ているか分からないんだし、今更だよな」
◇
今日は、怜奈さんの入学式だ。
「それでは行って来ます。食器は、シンクに入れておいてください」
朝食を済ませた後に、突然言われた。
「僕も行きますよ? 入学式を見てみたいです」
「えっ!?」
そんなに予想外だったのかな?
でも、何時も世話をしてくれている恩人の晴れ姿なんだ。スマホで写真くらい撮りたい。
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