第11話 高校受験をすることになりました
両親が、帰って行った。
「相馬さん……。何故あんなことを」
「少し頭に血が上っていましたね。でも、了承するなんて思いませんでした」
看護学校もそれなりに学費がかかる。
だけど、お金で解決する問題なら、僕の両親は二つ返事で受けてくれた。
取引にもならなかったな。
「それでは、怜奈さんも受験勉強をしないとですね。お互い頑張りましょう」
「はい!」
怜奈さんが、嬉しそうに微笑んでくれた。
◇
クリスマスが過ぎて、正月も終わった。怜奈さんは、実家にも帰らない。
そんな契約だったからだ。最低でも2年間は、僕と一緒にいてくれる。
どうしようもない時は、僕が病院のお世話になればいい。これは、病院側も了承してくれている。
「ふう~。過去問は全部解き終わった。それと、高校の予習も必要なんだな……」
改めて、自分の受けようとする学校のレベルの高さが分かった。公立の試験とは、問題のレベルが違う。
だけど、今の僕なら合格できそうだ。ケアレスミスしなければ、満点もあるかな?
「私も一息入れます。お茶にしますか?」
「お願いします」
リビングで勉強をする。互いに無言だった。怜奈さんにしてみれば、最初で最後のチャンスかもしれない。次は、二年後になるんだし。だけど、怜奈さんの成績ならば、看護学校の合格は疑いようがなかった。
僕の方が、危ないだろうな。
地域で最高の偏差値を誇る学校を、受験しようというんだから。
「ふう~。いい香りですね」
「うふふ。以前の相馬さんは、真水かスポーツドリンク、もしくは経口補水液しか飲まなかったのですけどね~。本当に変わりましたね」
そう言えばそうだ。もう、食事に気を配る必要もなかった。
僕がステーキを食べた時、怜奈さんはとても素敵な笑顔を見せてくれた。
「そう言えば、体がガッシリして来ましたね~」
筋トレの成果かな?
以前は、ウォーキングだけだったけど、日に10キロメートルを超えると、怜奈さんの方が疲れてしまった。
医者に相談して、腕立て伏せ、腹筋、背筋などのトレーニングメニューを作って貰った。毎日、必要以上の回数を熟している。その成果が出ている?
服をまくり上げて、自分の腹を見る。
「見事なシックスパックだよな」
怜奈さんを見る。顔を真っ赤にしていた。
「あ……。ごめんなさい」
「いえ――眼福でした……」
それって、男性が使う言葉じゃない?
◇
受験日は、すぐにやって来た。充実した日々だったみたいだ。
怜奈さんと共に受験会場に行く。
「それでは行って来ますね。終わったら連絡します」
「あっ……。これを」
御守りを買ってくれていたのか。僕は用意していないな。
「ありがとうございます」
お礼を言って受け取る。
怜奈さんは、敷地に入れないので、近くの喫茶店で待っていて貰う。
受験する教室を探して、自分の席を探した。気分は、落ち着いている。
こうして、試験が始まった。
『順調、順調』
解答用紙を埋めて行く。
そして、あっという間に最終試験だ。問題の小論文だった。
開始の合図と共に、お題を読む……。
『スライムの多様性についての見解?』
スライムって分裂するだけの、単一種じゃなかったのか?
周囲の空気が変わったのが、分かった。過去問題を解いたけど、これは予想外だ。
だけど……、僕はポイズンとメタルを見ている。
『ありえる』を結論として、小論文を組み立てた。
◇
最後に、簡単な面接を受けて受験は終わりになった。
結果は、寝て待とう。それと、落ちた場合は、公立高校の受験もある。
僕は、怜奈さんが待っている喫茶店に向かった。
「あっ、お疲れさまでした」
怜奈さんを見ると、複数の男性に囲まれていた?
その人たちが、僕を見ると離れて行く……。
「誰ですか? 知り合いには見えませんでしたけど……」
「ナンパでした。たまにあるんですよ」
たまに――なのかな……。
僕の綺麗な家政婦さん。独占している気はないけど、恋人がいても不思議だとは思わない。時間を作ってコッソリ会っているかもしれないと思っていた。
嫌な考えは、置いておこう。それよりも、今日は寄らなければならない場所がある。
「少し寄りたいところがあるので、頼めますか?」
「いいですけど、疲れていませんか?」
一緒に喫茶店を出る。
そして、神社に向かった。
僕も、御守りを買う。
「今度は、怜奈さんが頑張る番ですね」
怜奈さんは、嬉しそうにお守りを受け取ってくれた。
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