第10話 両親が来ました
数日後、学校に呼び出された。
なんだろう? いや、中学生だから毎週通うのが普通だと言われると、返す言葉もないんだけど……。
生徒指導室で、怜奈さんとの二人で、話を聞く。秘密の話なのかな?
そう思ったんだけど……。
「高校進学ですか? 受験しろと?」
教師から、突然言われた。
「うむ……。こないだの全国模試一位だっただろう? それで、私立から推薦が来た。公立でもいいと思う。高校は、選び放題だろうし。親元に帰るのもいいんじゃないか? 見た所、健康になったんじゃないか? 通えると思うんだが」
あのテスト……。全国模試だったんだ。
だけど、考えてしまう。
「万が一……、倒れたりしたら……、ご迷惑でしょうし……」
「最近の相馬さんは、元気じゃないですか。毎日の散歩も十キロメートルになっているんですよ?」
隣の、怜奈さんを見る。保護者の代わりで学校に来てくれている。
だけど、やっぱり考えてしまう。
「中途退学の未来しか見えないですね……」
「相馬さん! 進学したくてもできない人だっているんですからね」
そうだった。目の前に、その人がいる。
とりあえず、高校受験は保留にして、帰ることにした。こっから先は、親に相談しないとけない。学費だって発生するんだし。
まあ、中学校から連絡が行くんだろうな。
◇
帰り道、今日は歩きだ。怜奈さんとデートになるのかな?
市街地を雑談しながら歩いて行く。
でも、途中で怜奈さんが止まった。
その視線の先を見る。
服屋……、ブティックでいいのかな?
「ちょっと寄りませんか? 成長期なんですし。洋服を新調しましょう」
ウィンドウに飾られている値段を見る。
「高いですね。量販店でいいですよ? ショッピングモールに行きましょう」
「ご両親に請求すれば、お金は支払って貰えるんですよ? 数着ぐらいいいモノを買いましょうよ。下着は、安物でもいいので」
僕がごねても、時間の無駄だ。
その後、店に入り着せ替え人形にされる。
とりあえず、三着分の上下の洋服と、コート一着を買うことになった。靴まで売っていたので、革靴を買う。一ヵ月後に履けなくなっていなければいいんだけど。
スニーカーが欲しかったけど、ホームセンターでもいいかな。後で買いに行こう。
それと、値段は――大丈夫なのかな。
僕にブランド物なんて必要ないんだけど。怜奈さんが、支払いを済ませる。
「うふふ。そのまま着て帰りましょうね」
「……はい」
なんだろう。街中に出ると、ジロジロと見られている気がする。
「美男美女カップル。随分と若いし……、スライムで若返った親子かもね」
「富豪でも、行き過ぎた行動だよね。寄付でもしろって言いたいね」
すれ違った人の声が聞こえた。
怜奈さんを見る。
「うふふ。イケメンですね~。相馬さん」
僕がイケメン?
ガラスに映った自分の顔を見る。
「……健康そうな顔してるな。僕ってこんな顔していたんだ」
「相馬さんは、素材は良かったんですよ。それに背も伸びましたものね。今は立派なイケメンです」
もう一度、ガラスに映る自分の顔を見た。
「僕が――イケメン?」
◇
次の日に、親が来た。両親共にだ。
三人でテーブルに着く。怜奈さんは、僕の後ろに立っている。座ってもいいと思うんだけど。
「随分と健康そうな顔になったな。それと、その服装も様になっている。みすぼらしい服装でなくて良かったぞ。安心した」
普段は、寝巻きか病院の患者服で会ってたし。だけど、両親としてもブランド物を着ている息子がいいのか……。
病院の患者服で会うのが、普通だったしね。
「この一ヵ月は、症状が落ち着いています」
「……時間がない。早速本題だが、高校に進学しろ。
入学には、学力以外も必要だと聞いたことがあるな。特に小論文だ。中学生に作文ではなく、論文を求めるらしい。
僕は、ため息を吐いた。
「倒れたらご迷惑ですし……、この家で静養しています」
「試験だけでも受けろ。受験してみろ」
まあ、それくらいならいいか。
「あの~、よろしいでしょうか?」
怜奈さんが、口を開いた。
「何かな?」
怜奈さんが、前回の模試結果と医師の診断書をテーブルに置いて、僕の近況を説明してくれた。
両親は、関心がないらしい。興味があるのは、僕の学力だけみたいだ。
世間体を……、気にしているんだな。
「報告ご苦労。受験には付き合ってあげてくれ。それと、今後も頼む」
「もういいかしら? 結論は、始めから出ていたのだし。それと、最終電車の時間ですよ? 顔も見たんだし、乗り遅れないように移動しましょうよ」
少しイラっとした。例え実の親だとしてもだ。
ちょっと、嫌がらせを含めた要求をしてみるか。
「怜奈さんに看護学校受験を許可してくれるなら、僕も高校受験を受けてもいいです。もちろん、合格したら怜奈さんの学費も出してくださいね。その費用を賄えるくらいは、働いて貰っているので。いえ……、それではダメですね。奨学金の保証人くらいなら頼めますか? 社会人になってから返して貰うのであれば、問題ないでしょう?」
僕の言葉に、全員が絶句した。
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