第8話 庭にまたスライムが……。色違いですか?

 数日が過ぎた。

 今日は、怜奈さんは出かけていない。日課のウォーキングは、朝に終わらせてしまったので、怜奈さんに自由時間を楽しんで貰う。24時間僕と一緒では、疲れてしまうだろうし、出かけて貰った。

 僕は、テラスで日光浴だ。


 生体モニタリング装置があるので、怜奈さんには僕の状況が筒抜けだ。それと、GPS機能もあるらしい。

 敷地外に出ると、すぐにバレる。出る理由もないし、出る気もない。

 僕に怜奈さんを困らせる気はない。

 まあ、心配や迷惑はかけたくない。

 全部、自分の為なんだ。


 スポーツドリンクを飲む。


「たまには、炭酸飲料水でも飲んでみたいな……。昔ゲップして、胃の内容物を全部出したことがあったけど」


 この数日で、体が急激に育った気がする。

 食事量なんて、三倍くらいになっているし。

 そんなことを考えている時だった。

 音を拾った。


「きゅぅ~」


 慌てて立ち上がる。

 声に魅かれて、庭の植木の根元に移動する。


「また来たのか? しかも、銀色? 今度はメタルスライム?」


 また、勝手に命名する。

 研究所は、なにしているんだろう? いや、もしかすると海から来たのか?

 本当に、気体に変化して逃げ出している?


 スライムの敷地外発生は、各研究所で問題になっているけど、原因究明ができていなかった。だから、こんな市街地を作って、モンスターが出ても、モンスターが移動できない土地に研究所を作った経緯がある。

 だけど、色違いのスライムは聞いたことがない。伏せられている可能性もあるし。

 僕は、そっとスライムを抱き上げた。


「今回は死なせないようにしないとね」





 前回、ポイズンスライムの時に、ネットで水槽セットを購入していたけど、放置していた。

 それが届いていたんだけど、組み立てていなかった。

 怜奈さんは、僕がネットで何を買っても、何も言わない。アダルトグッツは……、購入したことないけど。年齢的に買えないしね。


「これでいいかな?」


 ガラスの水槽なので少し重い。まあ、小型の水槽なんだけどね。

 部屋に飾って、エアーポンプを稼働させた。


「カルキ抜きって必要なのかな?」


 まあ、元々深海で生きていたんだし、大丈夫かな? カルキは微生物対策の筈だ。

 コップに水道水を入れて、スライムにかけてあげる。


 ――シュワ~


「喜んでいる。大丈夫そうだ」


 僕は、銀色のスライムを水槽に入れてあげた。





 怜奈さんが帰って来たので、相談だ。


「えっ? メダカか金魚が欲しいのですか?」


「はい、インテリアに向くかなと思って」


 怜奈さんが、考え出す。


「ホームセンターに行ってみますか。売っているかもしれません」


「では、僕が調べます。時間のある時にお願いします」


「折角ですし、これから行きましょうよ」



 タブレットを取り出して、即座に検索を行う。

 ネット検索で、近くのホームセンターで販売されていることが確認できた。

 その後、ホームセンターへ行き、金魚を三匹購入する。話を聞くと、追加で、餌とろ過装置、カルキ抜き剤が必要なんだと教えて貰った。

 それもそうだな、餌すら考えていなかったよ。

 飼育方法を一通り教わって、必要なモノを購入する。


『カムフラージュになってくれるよな』


 ここで、意外な事を言われた。


「相馬さん……。背が伸びていませんか? ズボンが……」


 言われて気がつく。

 怜奈さんと同じくらいの視線になっている?

 体中をペタペタと触ってみる。

 確かにそうかもしれない。上着も小さくて肩幅がキツイ。靴も指先を曲げている状態だ。

 ポイズンスライムに会ってから……、十日くらいかな。

 体の変調が大きいことが分かった。





 家に帰って来た。

 水槽に、カルキ抜き剤を入れて数分待つ。その後、金魚を放った。

 ろ過装置の取り付けも終わった。


「思いの外、大きい水槽になっちゃったな」


 水槽そのものは小さいけど、装置が大きい。

 水槽セットだと、アクリルが多いので、スライムの飼育には向いていない。

 なので、個別に購入する必要があった。


 金魚が、水底の銀色のスライムにツンツンしている。

 ここで思った。


「金魚が、モンスター化したらどうしよう?」





 世界設定です。ネッシーみたいな、『海の恐竜』が生息する世界になるんじゃないかと言われそうだったので。海に恐竜はいない世界です。

 人族……若返る(寿命は延びない)。

 陸上動物……モンスター化。

 水生生物……変化なし。

 植物……?

 昆虫……?

 後は、なんだろう?

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