第6話 中二病全開の結論
中二病全開の結論。
俺は、魔法使いになれた? 超能力者?
とりあえず、この光を止めないと異変に気がつく人がいるかもしれない。
僕は、漏れ出ている紫の光を体内に押し戻す感覚を模索した。
感覚を研ぎ澄ます。
体内から出ている力を、止める……、もしくは循環させる。
人差し指から出ている光を体内に循環させるイメージ。
血流がいいかもしれない。
血の流れに力を乗せる感覚。
「右手から、心臓へ。そして、動脈に乗って全身へ……」
右手人差し指の光が消えた。
多分だけど、
「更に全身の力が漲る感覚だな……」
ここで、スマホが鳴った。
親からだった。
チャットを返す。
→『目が覚めたら、連絡するように』
←『食べ過ぎでした。お騒がせしました。もう大丈夫です』
→『では、見舞は必要ないな?』
←『明日には、退院できそうです。見舞は必要ありません』
そこで、チャットが途切れた。
多分だけど、父親と母親のどちらが来るのかで揉めたんだな。
仕事を頑張って貰おう。
それと、『怜奈さんには、家政婦を続けて貰いたいです』と、追加で送信した。
怜奈さんは、スースーと寝息を立てている。
そっと髪を撫でる。これくらいなら許して貰えるだろう。
怜奈さんは、高校卒業後に看護師専門学校に行きたかったらしい。だけど、家の資金難で断念したのだとか。
それで、住み込みの介護のバイトに応募して、僕のお世話をしてくれることになった。
2~3年で、専門学校を卒業できる資金が貯まるので、それまでの付き合いだ。
まあ、親の考えなのかもしれない。こんなに若く綺麗な人を家政婦に選ぶんだからね。
家事全般のスキルとかを確認せずに採用したらしい。僕へのせめてもの配慮だったのかもしれないな。
「空いた時間に勉強をしているのも知っている。努力家なんだよな」
怜奈さんは、「住み込みで、衣食住の保証付き。賃金もいいんです」と言って、何時も笑顔で僕に接してくれる。
ありがたい以外の言葉がなかった。
それに、病弱な僕では、同居しても襲われることもないしね。
◇
次の日に、医者と面談して退院となった。倒れたけど、異常はないんだし、入院する意味もない。現在のバイタルは、安定している。昨晩は、なんだったのかな……。人騒がせだったんだけど。自分の体なんだけど、良く分からない。
「胃腸が弱っているかもしれないね。食事の量は少しずつ増やしてね。一度に大量に食べないように。血糖値の問題があるからね」
「はい」
ここで、お腹が鳴る。医者が、不思議そうな顔をした。
「なんか、お腹が空き過ぎて……。何か食べたいです」
「健康なのか、病弱なのか分からない。君みたいな患者は、初めてだよ」
帰りのタクシーは、途中で怜奈さんを降ろした。
スーパーで食材を買うらしい。
僕は、一人で家までタクシーで送って貰った。
急いで、自分の部屋に行く。
寸胴鍋の蓋を開けた。
「あちゃ~」
そこには、干からびたスライムが、鍋の底で固まっていた。
急いで水をかけてあげたけど、戻る気配はない。水を弾いている。
「一日でこれか……。蓋をしたのがいけなかったな。死なせてしまうのであれば、逃がすべきだった。でも動物に食べられる危険もあったし……。どうしようか……、これ」
コップにスライムと水を移し替える。
「……ごく」
衝動に駆られる。こんなことは今までなかった。
僕は、水を飲み干し、硬くなったスライムを鍋底から引き剥がして食べてしまった。
◇
夕食は、和風ハンバーグだった。
ご飯は、お粥だ。
モリモリと食べて行く。
「相馬さん……。どうされました? 随分と食が進みますね?」
「なんか、食べられます。胃腸が、強くなった気分です。美味しいんですよ」
味覚が戻って来ている。それだけは、分かった。
怜奈さんは、いい笑顔だ。
食事を終えて、自室に戻り、一息吐いた。
「ふぅ~。明らかに異常だよな」
怜奈さんは、疑って来ない。だけど、異変には気付かれていると思おう。
僕は、コップを持ち上げた。
そして、紫色の光を放ち、コップを覆う。
コップから手を離す。
「〈反重力〉か〈空間固定〉かな? 今だに科学では実現できない現象だな」
僕が魔力と名付けた紫色の光……。
昨日よりも制御できるようになっていた。
◇
ポイズンは、証拠隠滅です。これで、未来永劫、原因究明が不可能になりました。
魔力設定は、要らなかったですかね……。
覚醒してキラ・ヤ〇ト並みの活躍をするスライム防衛隊の設定とかが、ローファンタジーなのかな?
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