屋敷で食事や入浴を済ませると、私は客室に彼女を案内した。

彼女は、やっぱり楽しそうに声を弾ませて話す。

「まあ、貴方のお家もご立派ですのね」

そう言い、くるくると部屋を見渡している。

少し幼なげな顔立ちだが、その横顔はとても美しい。

上質なソファに座る彼女は、やはりとても絵になる。

いっそ、絵画の世界に閉じ込めてしまいたい程に美しかった。

 私は彼女の前に、温かい紅茶を差し出す。

「これを飲むといい。風呂に入った後だ、体が冷えてしまうよ」

そう言うと、今度は嬉しそうに微笑みを浮かべる。

「まあ、嬉しいわ!どうもありがとう」

 彼女はティーカップに小さな手を添えて、

上品な所作で紅茶を小さな口に運んでいる。

「その紅茶には安眠効果があるんだ、私もよく飲んでいてね」

 そう言い、私も彼女の向かいのソファに座り、

温かい紅茶を口に運んだ。

 湯上がりの、蒸気して桃色に色づく肌、

長く、綺麗に手入れされた黒髪は、

少し濡れて更に艶めかしく見える。

嗚呼、このまま、眠りについて、そのまま...

閉じ込めてしまえたなら、

いっそころしてしまえたなら。

そんな欲望を振り切って、

私は楽しそうに話す彼女を見つめていた。

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