第5話 再会0
休み時間になり、再びクラスのみんなと顔を合わせた後のこと。
「また会うとは思いませんでした」
「ああ。まさか同じクラスだとはな。よろしく、えっと――」
「
お隣さんの女子とは、最後に話をした。
何というか、話を聞くところによると――彼女は高嶺の花、みたいな立ち位置らしい。
みんな、彼女には一歩引いている感じがする。
避けているというより、
「以前は、お姉ちゃんの共々助かりましたわ。改めて、お礼――」
「いいって。それより、姉妹だったのか」
「似ていないでしょう?」
「いや、どうかな……似ているような気もするし、似ていない気もしたぞ」
曖昧な回答に、ふふっと
すると、後ろからオレの肩を叩く奴がいた。
「初対面の反応からまさかとは思ったが、知り合いだったのか」
――南雲だ。
まあホームルームの時の初対面は若干、月宮妹が不機嫌な顔を見せていたような気がしたのだが。
結局、オレの気のせいだったのだろうか。
「ちょっとした縁でな」
「スズメバチから守ってくださったんですの」
もう終わった話を、詳しく話そうとする月宮妹。
正直、格好良く助けられたとは言えなかったので、オレの中では黒歴史判定である。
「へぇ、やるじゃないか。あまりアウトドア好きって感じはしないのに――」
「別に度胸があるって訳じゃねぇから。ただ見逃すほど弱くもない」
南雲の言葉に、一瞬震えそうになった。
上手く対処する心得があった訳じゃない。
アウトドアよりじゃないのは間違いないのだが、会ったばかりでそこまで見抜かれるとは思わなかった。
ちょっと――怖い。
思った以上に、南雲は
「……まぁ、我らが学園のアイドルである月宮姉妹から初見で避けられない男子なんて初めてだから、きっとこれから大変だと思うよ、鉄矢」
「えっ?」
教室内を見渡すと、さっきまで笑顔を向けてくれた男子の何人かが、面白くなさそうな顔をしだす。
なるほど……彼女が学園のアイドルというのは、あながち誇張という訳でもなさそうだ。
そうは言っても、オレだって最初はこの姉妹にストーカー呼ばわりされていた。
ちょっとした
「なんだよ。月宮さんとお姉さんって、男性が苦手だったりするのか?」
「心外ですわね。そんな風に見えますの?」
「箱入りお嬢様ってイメージはある」
「…………はぁ」
なぜか溜息と
おかしな感想だっただろうか。
「そ、そうだ……オレ、実はこの学園に幼馴染が一人いるんだ。ツキナミって名前に憶えはないか?」
「ん……? なんだそれ、変わった名前だな」
「名前というか、渾名なんだけど」
「すまん。俺の知る限りは知らないな」
「わたしも知りませんわね」
自然な形で聞き出せるタイミングだと思って訊いてみたのだが、感触は悪そうだ。
結局、ツキナミから会うと言っておいて、今のところ来る気配がない。
――不気味だ。
流石にツキナミに騙されたとは思わないけど、座して待つことしか出来ないのは困る。
まさか高嶺の花とチャラ男に挟まれるとは思わないじゃないか。
どうせツキナミも、昔と変わらず大人しい男子に成長しているだろうし、早くその辺と近しい交友関係をオレも築きたいのだが。
「わああぁぁぁっ!!」
そんな時――勢いよく教室へと入って来る人影が背後にあった。
すぐにオレの背中へと迫ってきた為、一体何なのかと思えば、そこには以前にも見た顔。
「ほんとにいたぁ!」
人差し指をオレに向け、大袈裟な声を出す美女は――お隣さんの姉で間違いない。
「ああ、あの時の――」
「久しぶりだよぅ。元気だった?」
「う、うん。久しぶりっていうか、一昨日ぶりな? というか、距離近いな」
言われた本人は「はて?」と言うように首を傾げるが、もしや自覚がないのだろうか。
彼女の距離の詰め方はマジで近い。
イマドキのギャルもびっくりのパーソナルスペース数ミリセンチを記録していると言っても過言ではないだろう。
「お姉ちゃん、落ち着いてくださいな。初めましてで、戸叶くんも混乱してしまいますわ」
「そ、そっかぁ。驚かせちゃったらごめんだよぅ」
妹には弱いのか、急速によそよそしくなる美女。
「ところで、名前――月宮姉は、
「うん! 七海でいいよぅ」
「いや、流石に……周りの男子からもそう呼ばれているのか?」
「ううん! なんと……初めから呼び捨ては鉄矢が初めてなんだぞ!」
堂々と、誇るようにそう言った月宮姉。
だが、周囲からの視線が刺さるように痛い。
流石の南雲まで、苦笑いを浮かべている。
初対面で明らかにコミュ強だった南雲が引くレベルだ。
なぜ、だ。
どうして新生活早々にピンチに……。
ツキナミ……あいつマジで、何処にいるんだよ。
「……あら、恩人ですもの。名前で呼ばれたところで、ウザったく思ったりしませんわよ」
「滅茶苦茶イヤそうな顔してるじゃん」
表面上は笑顔を浮かべている月宮妹も、目が笑っていなかった。
彼女に関しては、オレの何がそう気に障らせてしまったのかわからない。
何かした記憶もないし……オレの自意識過剰なのだろうか。
「決まりだぞ。鉄矢」
「いや、別に気にしないならいいけどな。よろしく、七海」
「やったぁ! よろしくね~」
とても嬉しそうな顔の月宮姉。
スキンシップのつもりか肩を揺すられる。
同時に男子達から、信じられない視線を送られてくる。
あれまぁ
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