第7話 本人
「ただいまぁ〜」
「おかえり、光。最近帰り遅いね、」
「うん、ちょっとね。」
ちょっとめんどくさいことになってましてね。
「何〜、彼女?光もそんな年頃なのね。」
「違うよ。部活部活。」
「え、部活?あんた最近行ってないっていってたから、てっきりやめたのかと思ってたわよ。」
「いや、別にやめてはないよ。ただ行ってなかったてだけ。」
「そう。まぁどっちでもいいけど、ちゃんと勉強もしなさいよ〜。」
母親だ。あまりにも、絵に描いたような母親。
まあ、その絵に描かれた母親は、実際の母親がモチーフになっているから、当たり前のことなのだが。
ガチャ
自分の部屋に入る。
俺の家庭は、いわゆる核家族で、一人っ子だ。
特段甘やかされて育ったと言うわけではないが、厳しくもない。
パソコンを起動し、Googleを開く。
「新作は……出てないか。」
俺はいつも、家に帰ると『古谷 誠』という小説家の新作が出ていないかを確かめる。
俺が作者で本を選ぶ、数少ないひとりだ。
「まあいっか、どのみち今出てもすぐには買えないしな。」
この間、新しい小説を3冊買ったので、貯金中。
普通の小説であればどれだけ遅く読んでも、基本的に2日間あれば読み切ってしまうので、一冊を長持ちさせるために、部活以外の時間では読書しないようにしていた。
していたが、あいつが来てから部活に行きずらくなったので、家でも読書をする習慣がついてしまった。
(……明日も、部活に行ってみようかな。)
今日は、自分から話しかけたが故に、高橋の邪魔をしてしまったが、静かにしていれば不機嫌な態度を取られることもないだろう。
というか、元々あの部屋は俺が先生に頼んで開けてもらった場所なのに、なぜあいつに占領されなければならないんだろう。
高橋の図太すぎる精神と、女子という部分に臆病になりすぎていたが、よくよく考えれば、俺があいつに気を使う要素はないのではないのだろうか。
(明日も、行くか……)
部室を取り返すべく。
「そういえば、あいつ、小説書いてるって言ってたな。」
俺はよく小説を読むが、書いたことは、生まれてこのかた一度もない。
(や、一度だけあったか?)
書いたといっても、小学校の国語の授業での原稿用紙4枚の作品だけ。
あの時は確か、俺はラノベを読むのにハマっていて、その作風を真似て書いたのだが、
『えぇ!!みんな見て、光、めっちゃ真剣に書いてる!転生したらゴブリンだった件?何これ?こんな必死に書いて、キモォ!』
……それっきりだ。
まあ、その程度で書かなくなったのだから、その程度の心持ちだったってことだ。
(あいつは、なんで書いてるんだろうな……)
趣味か、夢追い人か。
(明日、聞いてみるか?いや、でもまた不機嫌になられたらいやだし、うーん。)
まあ、明日のことは、明日決めよう。
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