第6話 伏線

部室にて。


カリカリカリ……


書いてるなぁ……、今日もよく書いてる。


「あのぉー、」


カリカリ……ピタ。


「何?」


今、忙しいのがわからないのか。といいたげな返事だ。


「それ、いつも何書いてるんですか?」


俺は、高橋の持っている原稿を指差す。


「ああ、これね。これは……原稿よ。」


いや、なんのだよ。


「なんのですか?」

「……小説。」


小説、まあ、だろうなとは思っていたが。


「何、話終わり?」

「え、あ、はい。」


カリカリカリ……


話しかけるタイミングを間違えたかもしれない。

いや、俺の会話スキルが低すぎるのか。「なんで?」とか、「すごいね!」とか言っといた方がよかっただろうか。

昨日今日と、高橋がやたらと会話を仕掛けてくるので、コミュニケーションをとれた気でいたが、どうやら、俺の勘違いだったみたいだ。


(まあ、思い返せば、高橋の一方的なコミュニケーションだったかもしれない。)


カリカリカリ……


書いてるなぁ……、でも、書いてるだけだとしたら、なんで俺に部活来るかどうか聞いたんだよ。

いや、もしかしたらあれは、


「今日(お前いると集中できないから、できれば来ないで欲しいんだけど)部活、くる?(きたら殺すぞ)」


みたいな感じだったのかもしれない。色々言葉たらずな高橋なら、あり得る話だ。


カリカリカリ………


「光くん。」

「はい?」

「その……、いつまで敬語なの?」


昼休みに言ってたやつか。


「いつまでって……、ため口の方がいいですか?」

「同級生に敬語で話されるっていうのも変だし。」


まぁ、それはそうか。


「わかりまし……わかった。じゃあ、ため口で会話するよ。」

「うん。」


不思議だ。高橋はとことん不思議なやつだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る