第4話 珍妙

「嘘って、どういうことですか?」

「光くん、他の人と話す時は『俺』っていうのに、私と話すときは、『僕』っていってる。」

「まぁ、そうですね。」


……ん?だからなんだって言うんだ?ていうか、なんで俺が他の生徒と話してるところ聞いてるんだよ。


「で、嘘って言うのは?」


翼が、真っ直ぐこちらを見る。


「光くん。私ね、人って、他人とコミュニケーションを取るとき、絶対に小さな嘘をつくって考えてるの。嘘と言っても、君が想像するものと違って、嘘をついてる側も、騙す気がないの。いや、もしかたら騙そうとしてるのかもしれないけど、それも無意識的って言うか。」


俺は、急に饒舌になった高橋に動揺しつつ、話の内容がわからなすぎて、動揺した。


(急に、何を言ってるんだコイツは、)


「つまりね、光くんは、男友達と話す時は『俺』を使うけど、女友達と話す時は『僕』っていう。どちらがほんとの光くんなのからないけど、どちらかは偽物の光くんが話してるってこと。これって、嘘をついてることになると思わない?」


思わねーよ。なんかすごい頭良さげに話してるけど、言ってることわけわかんないから。っていうか、なんでお前女友達としてカウントされてんだよ。


「へ〜、そうなんですね。それはすごいですね〜。」


俺がそう言うと、高橋が明らかにムッとした様子で、


「光くん、ちゃんと私の話聞いてた?」

「はい、聞いてましたよ?」


聞いた上でわかんねぇんだよ!


「……そう。じゃあいいわ。」


そう言って、高橋はまた原稿に何か書き始める。


(はぁ〜、)


どうせこいつも、俺が話を聞いてなかったと思ってるんだろう。と、思った。


(まぁ、別にいいけど。)


キーンコーン、カーンコーン


6時のチャイム。下校の合図だ。


「さようなら、」

「……うん、さよなら。」


また、いつもの調子だ。一体なんだったのだろう。まさか高橋に、あんな一面があるとは。


(嘘、ねぇ〜。)


なぜかはわからないが、その言葉に、少し、すこしだけ納得してしまった。気がした。

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