第3話 関係性

ガラガラガラ……


居る。


「どうも……、」

「あぁ、うん……。」


カラカラカラ………トン。


少々、いや、とても気まずい。翼に言われて、久しぶりに顔でも出してみるかと思ったけど、やはり来るべきじゃなかったのかもしれない。


「……来たんだ。」

「あ、はい……。」


南校舎3階。廊下をまっすぐ歩いたところに、文学部の部室はある。

文芸部といっても、部員は俺と高橋の2人なので、学校の正式な部活としては認定されていない。

本来この場所は、図書室に置いてない本を保管してある場所なのだが、俺が放課後に毎回本を読みにくるので、文学部の部室という風になったのだが、


『あぁ、光。そういえば新しく入ってきた転校生な、文学部に入りたいらしいんだよ。』

『え?』

『確か、高橋、だったか?よかったじゃないかぁ、部活仲間が増えて。』


今も鮮明に思い出せる、忌々しき竹森の顔。俺が、人間関係を作るのを苦手としていることを知っていたあいつは、「いい機会ができた。」とでも思っていたのだろう。


(で、入ってきたのがコイツ……。)


高橋は、俺に負けず劣らずの、もしかすると俺よりも、コミュニケーション能力がない。

一番初めに部室に入ってきた時も、


『あぁ、君が高橋さん?文芸部の榊原光です。』

『あぁ、うん。そう。』

『……え?』


3ヶ月たった今もこんな調子なので、人見知りとか、緊張しいとかではなくて、これが素なのだろう。

そしてコイツが入部してから、この部室にいるのが気まずくて、あまり部活には来なくなった。


部室内の椅子の一つに座り、本を読む。


チッ、チッ、チッ……


高橋は、いつもこの場所で、原稿用紙に何か書いている。

小説を書いているのだろうか。直接聞いたことはないのでわからないが、ともかく、ずっと書いている。


チッ、チッ、コッ、チッ、チッ…………




「光くん。」

「!?はいぃ。」


いきなり話しかけられたので、びっくりした。


「な、何ですか?」

「ずっと思ってたんだけど、その……、なんで敬語なの?」

「敬語?あぁ、僕、女の人と喋る時は、いつも敬語になっちゃうんですよ。」

「はぁ。ま、いいけど。」


……なんだこいつ。珍しく話変えてきたと思ったら、そんなことかい。しかも、ぶっきらぼうな返事。やっぱりこいつ俺よりコミュ力が……


「嘘。」


え?


「嘘、ついてるよね。光くん。」


う、うそぉ?突拍子がなさすぎるぅ……、ほんとなんなんだコイツは?

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