第2話 人間関係

「ふぁ〜ぁぅ。」

「眠そうやな、光。寝不足かぁ?」

「いんや、話があまりにも退屈だったもんで。」


すごくなれなれしく話しかけてきたのは、翼というクラスメイトだ。この学校に入学した時、一番初めの席で隣だったので、気まぐれで話しかけたのだが、一年たった今でもこの調子だ。


「光は人の話聞いてなさそうで、よく聞いちょるからなぁ、えらいわ。俺なんて開始1分で寝てたから。」


そして、こいつは何かと人に好かれる。高身長、イケメン、頭脳明晰。3拍子揃った完璧人間なのだが、


「光くんもさぁ、退屈言うんやったら寝てたらよかったじゃん。」


こいつは、自分のできることは、他人にもできると考えている節がある。


「馬鹿こけ。俺が寝たら怒られるだけだわ。」

「ヘェ〜。じゃあ俺、怒られてないの、めっちゃラッキーだったってこと?」

「……そうだね。ラッキーだよ、お前は。」

(お前だから怒られてないだけだよ!)


こいつと話していると、調子が狂う。とは言っても、こいつくらいしか話し相手はいないが。


(なんでこいつは、いつも俺ばっか話しかけてくるんだ。)


当然、女子人気の高い翼だが、誰かと付き合っているとか、わかれたとか、そんな話は一切聞かない。それどころか、どのグループにも属していない、いつも1人ぼっちの俺に話しかけてくる、謎多き男なのだ。


「光くん、今日、部活行く?」

「え、あぁ、うーん。どうしよっか。」

「……光ぅ、」


翼が両腕を上げ、「はぁ〜、やれやれ。」と呟く。


「なんだよ。」

「なんだよ、じゃないでしょうよ。そろそろ言ってあげないと、高橋さん、悲しむよ〜?」

「悲しむぅ?そう言うやつじゃないだろ、あいつは。」


高橋は、同級生で、部活仲間の女子だ。まぁ、部活仲間といっても、俺があんまり部活に顔を出さないため、俺と高橋だけの文学部は、もはや高橋だけの部活になってる。


「う〜ん、決めつけは良くないよ?もしかしたら、寂しがり屋かも知れんしね。」

「ニヤニヤしながら言うな。それだけは絶対ないってわかるだろ。」


高橋のことを気にしているわけではないが、たまには顔を出さないとなぁ。と思っているのも事実だ。

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