あるまじき嘘

@Gpokiu

第1話 コミュニケーション

「えー、近年、若者のコミュニケーション能力が低下しているというデータがありましてね、」


へー、そうなんだ。まあ、そんな気がしなくもないけど。でも、コミュニケーション能力って、どうやって計測するのかなぁ?


「これはですね、えー、インターネットの発達によってですね、実際の会話に会って会話する機会がですね、少なくなっていることが原因の一つとして考えられています。はい、」


インターネットが原因て。この人は一体何年前の時代に生きてるんだ。


「ですからね、インターネットはですね、くれぐれも、節度を保って使用しましょうということですね、」


こういう人って、まだ現代に存在したんだな。インターネット下げってやつ?いつになったら現代に適応してくれるの


ベシッ!


頭にそこそこ強い衝撃が走る。


「おい、前で人が話してる時に寝るんじゃない。」


頭を叩かれ、一体誰だと思いながら顔を上げる。不似合いな派手ネクタイに、でかっ腹のパツパツのスーツ。竹本だ。


「……はい、サーセン。」

「はぁ〜、これで何回目だと思ってるんだ。いいかげん、人の話を聞く癖をつけろ。」

「はぁい。」


そう言うと竹本は、どっこいしょ、と呟きながら立ち上がり、体育館の壁際に戻っていく。


(別に、寝てたわけじゃねーよ。)


俯きながら、話を聞いていただけだ。集会の時は、よくこうして話を聞いている。何かを見ながら話を聞くより、こっちの方が、ちゃんと自分で考えながら聞けるからだ。何も知らないで、自分のしたい注意だけする。コミュニケーション能力足りてないのはどっちだよ、と思う。


(まぁ、でも別に理解してもらいたいってわけじゃないけど。)


全てを理解してもらうのは、難しい。だから全ては伝えない。多分みんなもそうしてる。コミュニケーションを取ることだけが、人間関係を築くために必要なことではない。


(何も言わず、全てを分かり合える人がいれば、幸せなんだろうけどねぇ。)


そんなことを考えながら、退屈な集会の時間が過ぎるのをまった。

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