第二十八話「親友の謎」


「じゃあ、皆さんは私の秘書の那結果なゆかがお部屋にご案内します。優姫さんと紅林さんは悠斗から色々と聞いているので三人は俺が案内する」


 それで他のメンバーは那結果と呼ばれたメガネ美女と後ろに従う男性三人らに案内されて行ってしまった。


「か、快利!? その、余計なことは……」


「大丈夫、分かってるさ」


 そう言ってウインクしてるが不安だ。快利とは電話で何度も話しているしリアルで会うのは三回目だ。その過去の二回でも無茶な事ばっか言ってた。それに何より快利は美形で世間で言うイケメンだ。二人が惹かれる可能性も有る。優姫はともかく紅林は……って俺は親友になんて事を考えてるんだ。


「あ、あの、秋山さんでしたか? 私や優姫のことは――――」


(君の狙いは分かってる……大丈夫、悪いようにしない親友ダチのためにな)


 紅林は優姫を守るように前に出て引き離すと快利に抗議していたが対する快利の方は小声で聞き取れなかった。


「え? なっ、何を言って!?」


「――――くは、――だな、よく――――ってるよ君は、本当の――――」


「何を、言って……」


 二人に近付いたが聞こえた言葉も断片的で『本当の』の後は完全に聞き取れなかった。だが、その言葉を聞いた紅林の顔色が悪くなったように見えた。


「快利!! 紅林に何を!?」


「何でもないさ、では行こう三人共」


「紅林、大丈夫……か?」


 何でもないという感じの快利だが明らかに紅林が変だ。俺はボーっとしている彼女に声をかけるとハッとした顔で俺に気付いた。


「う、うん……それより悠斗先輩は優姫のエスコートを」


「ああ……だが」


「そうだよ、くれっち……」


 さすがに今の紅林を見て俺も優姫も二の足を踏んでいた。幸い優姫は今は動けるし後ろから俺が着けば問題無い。だが紅林は断固として譲らなかった。


「いいから……悠斗先輩も、誰が大事か分かるでしょ?」


「ああ、分かったよ……」


 そして俺達は荷物整理のために快利の案内で用意された部屋に入室した。




「快利!!」


「何ですか、お客様?」


 快利が恭しく一礼するが俺まで部屋に入らされてから気付いた。そこはファミリー用の部屋で3~4人用の部屋でベッドが並び広めの部屋だったからだ。


「明らかに二人用じゃないよな!!」


「確かに、家族用だからな、この部屋」


「なんで俺達三人を案内した!?」


 快利には二人との関係修復についてのアドバイスを貰っていた。だが同時に警戒していた快利の出して来る案は割と大胆な案……いや正直に言おうエロい案ばかりだったからだ。


「深い意味は無い、ちなみに悠斗の部屋は隣だぞ?」


「え?」


 そう言われて俺は固まった。隣の部屋? だって今の流れだと三人でここに泊まれって言われると思うじゃないか。


「ナニを想像した悠斗? 二人の責任者って言ってたじゃないか、だから、お前に同行してもらったんだ、お? どうした?」


「お、お前さぁ!!」


「では女性陣はここで、ほら悠斗行くぞ隣だ」


 そういうと快利は二人に「どうぞ、ごゆっくり」と恭しく言った後に俺の腕を掴むと強引に退室させられた。


「快利!! ちょっと待ってくれ!!」


「へいへい文句は後でな一名様ご案内しま~す」


 案内された部屋は簡素で狭かった。一応はビジネスホテルくらいは有るが今見せられた部屋より明らかに狭い。だが助かった。これなら一人の時間ができる。


「まあ、少し狭いが大丈夫だ」


「ああ、そんで、そこ開けると隣の部屋と繋がるように改造したから、開けてみ」


 快利に言われ俺は何の疑問も持たずドアを開けてしまった。その先で優姫と紅林の二人は荷物整理中で、なぜか二人は下着を見せ合っていた。それぞれ黒と白の際どいのだった。


「へ?」


「あっ、ああ……」


 まず優姫と目が合う。そうか相変わらず白なのか……なんて思いながら紅林の方に視線をズラすと彼女は冷静に下着をしまった。そこで俺は正気に戻った。


「わっ、悪い二人とも!!」


 強引にドアを閉めるとギリギリセーフいやアウトだと思っていたらドアの向こうから紅林の声がした。


『悠斗先輩……そういうのは優姫だけの時にね?』


「いや、そういうんじゃなくて……二人とも本当、ゴメン!!」


『ゆ、悠斗なら、いいから……私』


 優姫そういう話じゃないと思ったが先ほどの下着は目にしっかり焼き付いて強くは言えなかった。


「と、とにかく快利!! ここは封印してくれ!!」


「分かった、じゃあ向こうからだけ開けられるようにする」


 そう言うと快利はドアノブをぶん殴って吹き飛ばしていた。目にも止まらぬ早業というより完全に見えなかった。


「なっ……何だ?」


「これで何か詰めておけば向こうは見えないな」


 テキパキとドアを修理すると最初からドアノブが無かったようになっていた。これなら俺からは開けられない。だが今の早業はなんだ一瞬でドアノブが消えた?


「か、快利? 今のは?」


「え? ああ実は俺、大工みたいな早業できるんだ」


「いやいや今のは早業とかじゃないだろ!?」


「細かいことは良いじゃないか、それより隣に戻ろうぜ」


 そんな快利の言葉で明らかに異常ながら俺は二人と合流し下の階で他のメンバーと合流した。だが快利の仕掛けはまだ始まったばかりだった。

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