第三部 旅先でもトラウマ?
第二十一話「相談した結果がこれだよ」
◇
澄み渡る空に湖の水面に反射する光……そんな風光明媚な景色をファインダーに収めるのを楽しもうと思っていた俺は絶賛大ピンチだった。
「優姫……ここに来れたの誰のお陰だっけ?」
「でも、くれっちだって本当の事を言った方が良いよ!!」
「二人とも落ち着け、周りの目も有るから、な?」
今現在の状況を説明すると右腕に体を密着させてくる優姫に掴まれ動けず、左手は紅林が強く握って離してくれない。そんな俺たち三人は注目の的だった。
「御曹司まさか両方狙いで……二股で修羅場とか……尊敬するわ逆に」
「てか北城パイセン、女嫌いじゃなかったのか!?」
「美女二人を侍らすか……それもまたよし!!」
そして朝霞よ俺はお前のキャラが分からない……どうしてこんな事になってしまったんだと俺は犯人を捜した。
「クッソ、あいつどこ行ったんだ……」
「あいつ? まさか……女の子?」
どうしてそうなるんだ優姫。性格は戻って来たけど何か違う。昔はもっと……それに紅林まで俺を睨んで来る始末で、こんなの絶対違う。先週まで二人共もっと殊勝だったのに何でこんな事に……とにかくアイツを探さないとマズい。
「違う!! 男だ!! もう、何がコンサルタントだ快利ぃ~!!」
俺は親友の名を叫んだ。こうなった原因は全部あいつの
◇
――――十日前
「まだ三週間なのに良い感じだ」
「うん、北城さんが教えてくれたから」
今日も優姫と二人で店内を色々と動いていた。最近はサポートしなくても背後を男に取られない立ち回りを覚え動きも機敏で、まるで忍みたいな動きをするようになった優姫だった。
「ゆっ、末野さんも次の段階かな……」
「え? まだ独り立ちは早いと思っ……ます!?」
「一人の仕事も今以上に増やさないとな……ただ、まだ先かな」
「良かった……」
こんな感じで若干、依存気味になっているがギスギスする雰囲気は減った。ただ俺は優姫にあの話を切り出せないでいた。休憩中も帰りの車の中でも話す機会は何度も有ったのに俺は言い出せなかった。
『それで俺に電話か?』
「そうだよ……前回は中途半端に切ったし先週話したきりだろ?」
その夜、俺は快利に電話していた。相談できるのは彼しか居ない。転校してからはボッチだったしサークルの人間には話せない内容だ。だから週三で連絡はして仲良くなった彼に全て相談していた。
『それは悪かったな、てか俺のこと好き過ぎだろ他に友人作れよ?』
「むしろ作りたくないから君に電話してるんだ」
『それは……ま、いいか俺も友達少ないから人の事は言えねえしな。高校時代の連絡取ってるの二人だけだし……』
なんか快利もダメージ受をけていた。しかも人数も二人とかリアルだ。快利も陰キャ人生だったんだと謎の親近感と安心感が湧いた。
「それで、この間の相談なんだけど……」
『高校時代の元カノと気になってた女子が同時に現れたって話だろ?』
「うん……」
俺は前に酔った勢いで二人の事を快利に相談してしまった。今思えば大胆だったと思う。知り合ったばかりの人に相談するなんて俺もどうかしてた。それから気付けば快利には二人の話を聞いてもらっていた。
『そんなん両方行け、目指せ二股!!』
「はっ?」
そして、あの日の相談の返事が凄まじい変化球で俺の元に戻って来た。
『だって友達同士なんだろ相手の二人は……なら隠していた所でいずれバレる。ど~せなら両方狙って、片方落とせればよくね?』
「快利そうじゃない!! 俺は彼女たちと適切な距離を取って和解を、これはそう……失恋後の適切な女友達との付き合い方だ!!」
快利は『確率論だ~』とか頭悪いこと言ってるけど論外だ。そもそも二人とは今の関係じゃなくて昔のような……普通の関係に戻りたいだけ……多分そうなんだ。
『でも未練あんだろ? しかも二人に、違うか?』
「……それは、す、少しだけ」
『ふぅ、未練ってのは多かろうが少なかろうが有る時点で未練なんだよ。そこに大きい小さいは無い』
快利は溜息を付きながら言った。確かに残ってる事が未練なんだから当然か。
「なら俺は、僕は……どうすれば……」
『経験談だが俺の場合、未練を残してばっかで次があれば必ず未練は残さない生き方に変えようと努力した……肝心な時に何も伝えられない事が多かったからな』
その言葉は俺に重く響いた。まるで大事な別れを何度も経験したように聞こえ俺と同い年とは思えない言葉だったからだ。
「そんな辛い経験や別れを何度も?」
『えっと……まあ全部が仕事関係でな、仕事終われば、はい、さよならだし大事なアドバイスし忘れた~とかあったからさ』
そんな風に笑う快利だけど俺は違うと思った。今の言葉は本当に快利が経験した何かなんだと不思議と確信が有った。
◇
「じゃあ改めて依頼ってのも変だけど……俺のコンサルタント頼める?」
『ああ、とは言っても金は取らないしガチらないぞ?』
「えっ? 何で?」
その返答に俺は肩透かしをくらった。仮にもプロにお願いするんだからギャラは払う気で相場も調べた……だが返事を聞いて俺は納得させられた。
『そりゃダチから金は取れねえよ。それに俺は恋愛方面は門外漢だ。どっちかと言えば経済とか国政とかそっち方面…………に、繋がってる企業とか専門だ!!』
明らかに電話口で慌ててるけど何らかの国家事業に会社全体で関わってるのかも知れない。きっと社内秘だ。俺も祖父の手伝いでたまに言われるから分かる。
「分かった。その辺はノーコメントで」
『助かる……ま、実際に電話が繋がんない時はマジで忙しくてさ……だいたい家族や世界を守ってる時だからな』
「へ~、快利ってヒーローか何かだったの?」
『まあな。じゃあ俺はこれから少し世界を救って来る、また明日連絡くれ!!」
きっと厄介な案件に違いない。だけど冗談にしても世界は言い過ぎだよ快利。
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