第二部 二年後の再会と出会い
第十一話「二度目の再会」
◇
「飲み会、やっぱウコン無きゃダメだよな」
去年、初めて飲んで俺は盛大に酒でやらかしたと聞いた。どうやら酒癖が悪かったらしく卒業した先輩達に凄い迷惑をかけて、それ以来コンビニでウコンを飲んでいた。これから行く飲み屋はウコンが高めに値段設定されているから節約だ。
「だから、しっかりしなきゃ……」
その時のことを反省し俺は悪酔いしないように更に二日酔い対策もバッチリして店に入った。
「おっ、来た来た我がサークルのエースが!!」
「待ってたよ~!! 北城!!」
幸手、横瀬の両先輩を始め、いつものメンバーが飲んでいた。サークルは現在、二十人弱で新入生は例年だと十人居るかいないかだ。しかも掛け持ちしている人間も居るから実際はもっと少ない。
「遅れました……それで新入生は?」
「あっちで二年や三年と戯れてるよ~」
「そうですか、では俺は先輩達の相手をしますよ」
向こうは向こうで盛り上がってるし行くのもメンドイ。それに新入生は女子が二人も居るみたいで混ざりたくない。
「おっ、まず生で行く?」
「いいえ、最初からアレで……ウコン飲んで来たんで」
「おうおう、飲む気満々だねえ、じゃあ店員さ~ん、すいませ~ん。北城、飲みほ入ってないから自腹だよ~」
俺が気に入っているのは泡盛つまり沖縄の酒だ。のどごしが爽快で俺は今年に入ってから密かにハマっている。
「ボトル有るんで大丈夫です、すいません俺のキープボトルお願いします」
俺は来た店員さんに名前と銘柄を言うと「あ、例のお客さんだ」とか言われた。なんか店で不名誉なあだ名が付けられてそうだ。
「うっわぁ……これだから金持ちはさ~」
「バイト代から出してます。家には出してもらってません」
そう言って先に水を一杯飲むと手が付けられていない料理を探す。だが先輩らの付近には食い散らかされた物しか残っていない。横瀬先輩ならまだしも幸手さんの方にも残って無かった。
「ああ、料理は第一弾は終わったからな、今から残りが来る」
「ま、そうなりますか……」
俺の二万円は腹に半分も戻って来ないようだ。仕方ないと思って俺は出されたお通しを食べていたら後ろから声をかけられた。
「良ければ向こうのテーブルの料理は余ってるんで、どうですか先輩?」
「え? そうなのか……ありがっ――――えっ? なん……で?」
声は女子、それは分かっていた。どこか聞き覚えが有る声も俺を油断させた。でも振り返った先は完全に想定外で俺はトラウマと再会した。
「……どう、しました先輩?」
「あっ……いや……きみ、は……」
少し明るい茶髪、それが肩口までで切り揃えられたロングボブの美女がいた。大学デビューで染めたと言われても違和感の無い髪色だが違う。彼女は……紅林さんは三年前から、この色なのを僕は……俺は知っている。
「お、これは意外、あの御曹司が新入生にイチコロか~」
「ふっ、紅林さん悪いけどコイツ、北城を連れて行ってやってくれないか」
俺のリアクションは完全にトラウマに遭遇し固まっているのだが先輩たちは俺が目の前の女に見惚れていると勘違いしたようだ。実際、少し大人になった彼女はきれいになったと思った。
「お、俺は――――「分かりました、ゆっ……先輩行きましょ?」
「いや、今日は用事を思い出しっ――――「照れるな照れるな、こんな美人なら一目惚れでも恥ずかしくないから~」
横瀬先輩が変に気を回して俺たちの背中を押して送り出すが最悪な展開だ。俺は仕方なく二年と三年が一緒に飲んでるテーブルへ連行された。
「お、北城が来るなんて珍しいな……飯まだだろ?」
「ああ、彼女に言われて、貰いに、来た。すぐ向こうに戻るか……え?」
だが紅林さんは戻ろうとした俺を逃がさないように隣に座ると「どうぞ」などと言って一緒に持たされた泡盛をグラス注いでいた。
「お、それって泡盛!? 飲みほに無いよな?」
「北城のボトルだろ~? いいよな~」
三年の同級生の二人、小川と三芳が近付いて来て露骨に欲しがっている。だから来たくなかった……でも仕方ない隣の紅林さんの手前、俺は溜息をつくと二人の前に置いた。
「ったく……いいよ、お前らも飲め……新歓だし特別だ」
「さっすが~!! ゴチになります先輩!!」
「お前もかよ宮代……仕方ない」
ちなみに後輩の中には未成年も居たが俺は関知しない。そもそも大学の飲みでキチンと確認する店なんて少ない。成人も混じっているサークル飲みだと一人一人確認されないものだ。
「ごめんなさい、私……その……」
「はぁ、あいつらの目の前に置かれた時点でこうなる運命だ」
俺は残っていたのをチビチビ飲んで目の前の一升瓶の中身がドンドン減っていくのを見ているしか無かった……泣きたい。こいつらに良さが分かるとは思えない。
「あはは、そうなんだ……」
「そうだ、ったく……」
本当にいきなり現れて早速、俺の大事な物を奪って行くなんて最悪だ。やれやれと彼女を見ると笑みを浮かべながらカクテルをゆっくり飲んでいて目が離せなかった。
「なんか二人ともいい感じだよね~?」
だから油断していて不意にかけられ声に俺は固まった。
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