空閑の天国



首をくくれば天国行きだ

 盲目に、そう言った


この世は地獄

 あの世は天国

  だから、切り離してしまおう



まさか。

──その先も地獄が続くとわかっているはず



この世は地獄

あの世も地獄

その次も地獄、その次も


地獄続きの堂々めぐり

 生ある限り、限りなく




だから、




ここに、天国をつくろう

 わたしのための あなたのための


奪い合い、競い合い、

 苦しみを押し付けるだけの、

  苦界ではなく



何もせず、何も思わず、耳を塞いで

全ての独立した人間に、賛歌を捧げよう



やわらかく空虚な間合いに泡を想起しながら

やさしい孤独にひたすら耳を傾けて


それは楽園ではないけれど

花園ほど悍ましい幸福でもないから



散りばめた虚空に、赤いワインを流し

酔っ払った星空に、ともに乾杯しよう



全ての地獄を天国で満たし

 全ての天国を空閑に溢るる


悟りを得るには快楽が巷に多いから

 虚無が一滴、隠し味


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る