水に溶ける


淡く水に溶けていく



錨をなくし 帆をなくし

ついには船体をうしなった船のように


 境界線は水平のはざま

 水煙と波間をただよう



輪郭は線 輪郭は区切り

 あちらとこちらを別け隔つもの


  どこからがあなたで

   どこからがわたしなのか


 色も形も──溶けてしまえば水の一滴 


(わたしが水なのか 

 水こそがわたしなのか)

   


解けた糸の隙間から 

そっと染み出る滴のように

 ひとり 満たされた水に溶けこんだ


ひとしずく交じるわたしは

 わたしだった「もの」の 漣に揺れる

 

色彩こそがわたしだったのか

 構造こそがわたしだったのか


  あるいはわたしを満たす水槽を指して

   わたしの名札を張り付けたのか



薄く、淡く


 水に溶け 波間にて惟みる


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