賢者~ガス抜き振り子は哲学者~
僕は別に貞操観念がバグっている訳じゃない。たぶん彼女も。理性的な行動が求められる世の中のちょっとした息抜き、ガス抜き。振り子が揺れるように、極端な理性の先には極端な感性が待ち受けている。人間はその激しい感性を心の中に収めておく術を知らず、行動として現実に吐しゃする。踊り子は自ら踊っているのか、それとも曲に踊らされているか。極端な話、僕は犯罪者にならないために女を抱く。僕は至って紳士的だ。ナンパをして断られたら、潔くその場を去る。“無理やり”なんて僕の辞書には載っていない。ただ、あの日から、同族を探す嗅覚だけ冴えたらしくナンパを断られることはなかった。僕は特別、性欲が強い訳ではない。けれど、三大欲求の中で唯一、対人が想定されているこの欲求には人間の神秘みたいなものを感じずにはいられなかった。人が二人いるだけで戦争を起こせてしまう訳で、男女がいれば性交だって生じるのではないだろうか。死と性の象徴たちが対極に位置しているのはなんの因果か。そんな哲学的な思考に至っているのは賢者タイムの余波とでも言うのだろう。
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