事後~神話と下着~

私は、事後の布団にくるまるのが好きだった。相手の柔軟剤と自分の分泌液の香りが充満しているからだ。悪趣味なことに私は、このベッドでよがった女の匂いを自分で上書きする感覚がたまらなく快感だった。聞いた訳ではないけれど、彼が多くはないが複数の女性を抱いている確信があった。理屈ではなく、もっと感覚的、本能的ななにか。私は上辺だけの言葉を信用しない。だから、声をかけられた時の記憶はもうない。重ね合った身体反応だけウソをつかないと神話のように信じている。「世界は愛想笑いで成り立っている」なんて言う人がいるけれど、あまりに達観しすぎている気がする。そんな世界に殺された人だっているというのに。人間は所詮、自分の目で見たことしか信じられない主観的で独善的な生物。その証拠に昨日から着けている私の下着は色気も糞もないベージュ色だった。女がいつも可愛いフリルの下着を身に付けているなんて、それこそ神話的な話だ。

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